「極力台詞を拝した映像が紡ぎ出す群像劇」アンデッド 愛しき者の不在 かもしださんの映画レビュー(感想・評価)
極力台詞を拝した映像が紡ぎ出す群像劇
死者が蘇るというホラーで定番のゾンビを扱いながらも、「死別」という誰もが避けては通れないテーマをしっかりと盛り込んだ秀逸作品。
馬鹿でかい音楽と共に映画は幕開けし、台詞を拝した映像が紡がれていきます。
それでも観客は会話のない老人と娘やパートナーを亡くした老婆の置かれた状況が手に取るように伝わります。
もう一つ、4人家族を描く段階で台詞が増えるものの説明的な会話などは一切なく、状況に応じた会話だけで観る側は家族の置かれている立場を理解できてしまいます。
お膳立ての全てが映像と演技だけで分かるという実に映画的な演出に大変感服させられてしまいました。
物語が進むに連れてそれぞれの家族が抱えている事態が変化していきます。
そして各々の家族が決断を迫られます。
どのように「死」と向かい合うのか。
ゾンビを扱いながらもこれ程までに考えさせられる作品は初めてでした。
ゾンビといえばド派手なドンパチとグロいお食事が必要だと言う方には全く持っておすすめできない作品ですが、「ゾンビ」と「死」を真剣に描いた末路が気になる人は必見の作品になっておりますので劇場入りをおすすめします。
余談ですが、レナーテが息子を見た時の顔が凄いです。
監督曰く「一発撮り」だったそうですが、あれ以上の顔は何度撮っても再現出来ないと思います。
見逃し厳禁ポイントですから要チェックしてみて下さい。
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