エレクトリック・ステイトのレビュー・感想・評価
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映像はすばらしいが脚本が単純すぎる
1990年代という近過去のアメリカを舞台に、ロボットが大反乱を起こして人間が鎮圧した後の時代を描く。ガジェット感満載の小道具・大道具や、テンポ良く事件が起きてあちこちへと動く前半は、楽しい。『不思議の国のアリス』や『オズの魔法使い』が下敷きになっているようでもあり、ところどころ『スター・ウォーズ』シリーズを連想させる場面もあったり。舞台設定や構図的に、パロディというかパスティーシュ作品なのかなと思う。そう思って見れば、それなりに楽しめる。しかし後半、敵との直接対決あたりから、あまりに単純な勧善懲悪図式が際立ちすぎて、作品世界に入り込めなかった。仮想空間より現実世界が大事という最後の教訓的メッセージも、底が浅い。
面白かった!そして楽しかった! キャラクターデザインがとにかく良い...
お金かかりすぎ
ロボット工学三原則が使われているのと根底にロボットは意識をもつのか?というテーゼがある。さいきんみたザクリエイターにも同類の主題があったしA.I.やI, Robotやアリータやエクスマキナやウォーリー等々多くのロボット映画に偏在するモチーフであろうかと思う。
このことは本作にも出てくるセリフ「ロボットには感情がない」によって骨抜きになるにもかかわらず、ロボットエンタメは常に「ロボットには感情がない」を忘れさせる仕組みを併走させる。結果「「ロボットには感情がない」と言ってしまったら始まらない」が「ばかばかしいと思ったら楽しめない」と同じ意味になってくる。
ミシェルはロボットのメモリーに残った弟を捜してディストピアへ危険な冒険をする途上でキーツに会い、ともにロボットの本拠地へ乗り込む。──のだが、エンタメやサービス業に従事していたロボットばかりが徘徊している荒野を行くかれらの冒険はテーマパークのアトラクションに興じているようにしか見えない。
弟の記憶を携えているコスモは子供向け映像芝居ロボットゆえコスモ内のセリフしか話せないし、ロボット側の首領は遊興施設でピーナッツ販売をしていたと思しきミスターピーナッツである。総じてこの世界にはテーマパークのスタッフロボットみたいなのしかいない。が、ばかばかしいと思ったら楽しめないし、お金をかけたVFXに抜かりはなく映画は痛快でもありサウンドトラックもごきげんだし姉弟愛にはグッとくるものがあった。
エンドゲームのルッソ兄弟が演出し、ミリーボビーブラウンは勝ち気で、クリスプラットは軽いけど頼りがいのある、いずれもこれまでにやってきたようなキャラクターをやっていて、ジュブナイルの世界観にするすると入り込むことができた。
SFだが時代は1994年と設定されているのでノスタルジックな未来像になっている。未来でもレトロを加味することで大人と子供が同時にターゲットできる。
スウェーデンのグラフィックアーチスト兼作家のSimon Stålenhagが2018年につくったグラフィックノベルThe Electric Stateの映画化だそうだ。
imdb6.0、RottenTomatoes15%と73%。
大衆からはOKの評価を得たが、批評家からは否定された。理由として多かったのは原作と違うこと。元ネタになったグラフィックノベルはもっと陰鬱で象徴的で詩的だが、映画は派手なバンブルビースタイルのプロットと極彩色のキャラクターに作り変えられている、とのことだった。人間とロボットのありきたりな概念と対立、からの説教じみた筋書きも酷評された。確かに独創性はなかったと思う。
しかし大衆としてはミリーボビーブラウンもいてクリスプラットもいて、ふつうに楽しんだという感じになった。ニューロキャスターの仮想世界に入り込んでばかりいないで生身の人間と向き合うべきだ──という提案は現代のスマホ・ネット依存にも置き換えることができる健全なメッセージ性もあった。
ただし製作費を知ったら誰しも目を丸くするだろう。The Electric Stateは3億2千万ドル(2025年時の換算で475億円)かかったそうだ。これは歴代高額製作費映画トップ10に入ってしまう。
製作費ついでの余談だが、さいきん日本アカデミー賞という意図不明アワードで侍タイムスリッパーという映画が作品賞をとったそうだ。製作費は2,600万円。低予算のインディーズ映画が作品賞をとったのは番くるわせなんだとか。無風状態の日本映画界に話題性をつくるためにわざと意外な映画を作品賞に選んでおきながら番くるわせとは?自演とはこのことだ。また「正体」の監督が監督賞だそうです。なんかお金もないし才能もないし何にもない。もうほんとに貧しい国なんだな日本て──と思った。
結末以外は言うことなし
J・P・ホーガンの『ライフメーカーのおきて』のよう
ルッソ兄弟が持つエンタメ作品(あくまでもエンタメ作品)における脚本構成力と、
緻密な伏線展開(伏線というよりも伏網)は、
『ウインター・ソルジャー』や『インフィニティ・ウォー』などで見せたものに匹敵するかと思われたが、
今回はその期待に応えるまでには至らなかった。
シナリオとしてはクレジットされていないが、
PとしてDとして当然シナリオ作成には参加しているだろう。
複雑な物語の展開を避け、
全体の世界観に重きを置いた結果、
物語は少し単調になり、
視覚的な魅力や設定のユニークさを重視したアプローチが目立つ。
特に、美術設定やキャラクターデザイン、
メカ設定は優れており、
ミスター・ナッツではなく、
ピーナッツが言う〈ブルー・スカイ・エーカー〉内の美術は非常に印象的だ。
各ロボットの個性、デザインやそのギミックも、
SF映画としてレトロ感と新鮮さと独自性を持っており、
これらが全体の世界観を支える重要な要素となっている。
もし、ストーリーテリングにもう少し深みが加われば、
さらに楽しめたことだろう。
とはいえ冒頭で弟が、
人間の意識が物理的境界を越える、
つまりテレパシーは現実化され得る、
簡単な量子論を姉に話す、
姉は弟の粒子の所まで遊びに行くよ、と。
そして、
アインシュタインの脳が奪われたような、
高度な技術の進化の狙いも背景に置きつつ、
目の前のアホみたいな現実は、
ぶつかり軍人さん。
科学と感情が交錯する瞬間をセリフに動作に置き換えながら、
物語の核心に迫る伏線として端的に機能させる高い演出技術で、
この世界における科学と倫理の対立をも象徴し、観客の好奇心を刺激する。
J・P・ホーガンの
「ライフメーカーの掟」
のようでもあり、
ハーマンはハカイダーのようでもあった。
ジャン・カルロ・エスポジートも、
珍しく悪役では・・・・た。
I fought the law And the law won
ロボット陣たちが個性豊かで面白い
個性豊かなロボット vs 画一的ドローン人間
NETFLIX オリジナル 日本語吹替有り
ロボットが自身の労働環境に疑問を持ち、立ち上がった。1990年に対人間の戦争が起きた。劣勢だった人間は、ドローン機械を開発して勝利する。
戦後の1994年、主人公ミッシェルは不思議なロボットに遭遇する。それには行方不明の弟クリスの面影を感じ、生きていると確信する。制限地帯に糸口がある。途中元軍人のキーツを巻き込んでいく。
途中でのショッピングセンターには難を逃れたロボット達がいた。彼らの協力を得て弟クリスを探す旅を続ける…。
……
多くの人間は支配されていく。個性は失われていく。人間は大きなヘッドマウントを装着して仮想現実の中で生活をする。ドローンロボットも操作できる。そのドローンにはディスプレイに顔のみが表示されている。
対してロボットは、紳士、配達員、野球打者、バーバー、食べ物の形のロボット、そして…色々。個性豊かなロボット達。
ブリキのオモチャっぽいのも、とても良かった。
………
本作の予算は3億2千万ドル。ルッソ兄弟の会社が主に製作し、ユニバーサルが権利を持っていたが劇場公開の予定がなく、NETFLIXに売却された。しかしこんな高額の作品を定額配信でペイ出来るのか?
しかもRotten Tomatoes の批評家は悲惨、15%。ただ観客は75%。
私は人間側の描写がちょっと弱い気がしたが、ロボットが楽しいから。映画は楽しんだもの勝ち。
………………
日本語版キャスト
主人公孤児 ミッシェル:川勝未来、(黄色頭弟ロボット)コスモ:れいみ、(元軍人)キーツ:星野貴紀、(キーツの相棒ロボット)ハーマン:遠藤大智、
(反ロボット派CEO)イーサン・スケイト:根本泰彦、ブラッドベリ長官:落合弘治、(ミッシェルの弟)クリス:永竹功幸
(紳士ロボット)ミスター・ピーナッツ:安原義人、(配達員ロボット)ペニー・パル: 雨蘭咲木子、(東洋系)アーマスト博士/(博士の記憶を持つ)PC:水島裕
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