雪子 a.k.a.のレビュー・感想・評価
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素晴らしい!キャストがみないい
凄くよかった。そんな予算がありそうにもないのにビックリするくらい豊かに作られているのはキャスティングが素晴らしいからなのか。しかし撮影もとてもいい。
ラップのことはよく知らないけど、とにかく丁寧に切り取られたカットの中で、山下リオならではの優しさや弱さやそれをなんとかしたいというキャラクターの説得力がラップバトルで喰らってる顔から滲み出て、完全に石橋凌演ずるお父さんと同化し、引きこもりの男の子のお父さんのひとことにそうだ!と涙を流し、あとはもう持っていかれた。
山下リオがなぜラップなのか、とか前半部でもっとテーマというか的の絞り方がうまかったらもっともっていかれたかもですが、アート映画ではなく、一般のお父さんお母さんとか観たらもっと広がりそうないい映画だった。
名前の由来は知ってる?
30才目前の小学校教師、雪子。日々生徒の様子に目配り気配り、遅くまで雑務に追われ、週一で不登校生徒の自宅訪問。同じく教師の彼氏との関係。自分をさらけだし本音を言えるのは最近始めたラップだけだと思っているが、周りからは何も響いてこないと言われる始末。
いや、小学校の先生やること多過ぎ!雪子生徒からも慕われてめちゃくちゃいい先生やん。そしてめっちゃかわいい自慢の彼女やん。溜め込んでいっぱいいっぱいになっちゃってる葛藤がうまく描かれていたし、最後のラップで語りかけるシーンはめっちゃジーンとした。
私はラップの世界はよく分からないし、初心者相手にそんな気持ちでやるなら消えろみたいなのもどうかと思ったけど、それぞれのスタイルがあるようでなかなか興味深かったです。山下リオほんまにかわいいし、やっぱ池田良がいい。そして渡辺大知の歌声まで聴けたので満足です。
さぁでは、せっかくなのでそろそろはじめYOか!誰一人取り残さない社会っていう嘔吐が出そうなスローガンの答え合わせを。
万全が安全
お父さんはロッカー
仕事に趣味に恋愛に人生に悩む不器用な小学校教師の話。
週末の公園で仲間とフリースタイルラップに興じる様になって1年弱、宿題でインチキをする子や不登校の子に向き合ったり、他の教師に合わせたり、彼氏から結婚のプレッシャーが掛かったりという中で、自分と向き合うストーリー。
サッカーは4年負け組だけど、一緒に働く先生たちと連携し、気付き助け助けられ、と先生たちはもちろん、親も彼氏も悪い人が出てこない。
…嫌がってる初心者を引っ張り出して、コテンパンにしてマウント取るスタイルには感心出来なかったけどね。
お堅くみえた先輩先生は神だったし、チャラくみえた後輩先生も実はちゃんとみえているし、そしてそれを受け取る回り道でマイペースな主人公は、実はド直球を投げてるし。
ちょっと彼氏はかわいそうだったけれど、優しく温かく前向きでとても面白かった。
40年前のパンク蛹化の女を凌いだ
吉祥寺辺りで小学校4年2組の担任を務めMCサマーというラッパーの顔も持つ雪子という長崎出身アラサーの悶々とした日々をリアルにあまりにも真っすぐに丁寧に優しく細やかに描き切った今年イチの傑作である。今のところ東京では渋谷のユーロスペース1館での上映が始まったばかりなのだけれどラップ映画としても「SRサイタマノラッパー」を小指で弾き飛ばすくらいのパワーを持っていてそれがリアル小学校教育現場と不登校の天才ピアニストが奏でる♪カノンに乗せて雪子がラップするクライマックスはそれが私自身の青春80年代戸川純「パンク蛹化の女」とA.R.B.石橋凌に呼応して泣けてしょうがない。誰がどう仕組んでくれたのかこの映画に偶然に必然的に出会ってしまったことよ、アーメン。
HIP HOPが心地いい
HIPHOP そしてラップバトルにも特別触れることなく生きてきましたが、この映画の鑑賞中に雪子と同じように音楽に救われる瞬間が何度もあってお金を払って映画館で観て本当に良かったと思いました。
雪子が同僚の女性たちと3人肩を並べてベランダで揺れているシーン、無いろうそくの火を吹き消すシーンがとても素敵でした。
レベルが高い
タイトルにa.k.a.が付くぐらいだからラップの映画だろうと思って観るんだよね。
でも、なかなかラップしないの。
小学校教員として悩む雪子先生の日常を描いてくんだよね。
ここがしっかりと、うまく描かれてて、つい観ちゃうの。
題材にラップを使ってるからね、劇中でもラップやってワーッて盛り上げれば、それで観られるんだけど、それをしないのね。それで観せるのすごいよ草場監督。
雪子先生はMCサマーとしてラップも始めてたんだけど「バトルはまだ早いかな」って思ってんだよね。
でもある日、練習してる公園に行ったらアザミさんが来てて『じゃあ次あんた』って指名されちゃう。初級者だろうがなんだろうがお構いなしっていうのがいいね。そしてMCサマーはボコボコにされる。容赦なし。
アザミさんのキャップは47だったね。New Eraだけじゃないんだな。
雪子先生は付き合ってる彼との結婚も考える時期なんだけど、この彼がなかなかだね。
いきなり両親に合わせてみようとしたり、婚約指輪を買おうとしたり。
まず、はっきりとプロポーズしろよ。そこからだろ。照れくさいみたいな感じで逃げちゃ駄目なんだろうな。
それでその彼は『ラップやってる雪子は、なんか違う』って言っちゃうんだよね。
雪子先生は「ラップやってるときだけが本当の自分だ」と思い始めたときだから、彼は「俺は本当のお前は好きじゃない」宣言出しちゃってんの。雪子先生も「何年間も付き合ってきて分かり合えないってどういうことなんだ」って思うよねそら。
彼は電話で『歌って』って言われても『練習する。また今度』ってエエカッコしいなんだよね。かっこ悪くていいから、いま歌ってくれよって言ってんだよ。
この辺の描き方がうまかったな。
そしてMCサマーは故郷の長崎でラップバトルへ。
ここのラップも良かったね。MCサマーは「ディスるのも、なんか」と思ってたから、ディスらないんだよね。自分のことだけ言う。対戦相手もディスらない。「あんたカッコいいよ、でも負けない」って感じで。
ラップの内容も、郷里を離れた人と残った人のやり合いで良かった。
そして最後は不登校児が弾くピアノでラップして大団円へ。
父親役の池田良が、スカしたことずっと言ってんだけど、息子が校舎に入ってくと涙を落とすのいいね。
草場監督は人間を描くのがうまいんだろうね。
雪子先生をしっかり描いてきた。
恐らく、ラップを使わなくても、描けたんだと思う。
でも、そこにラップを乗せて、すごい作品に仕上げた。
設定が上滑りするんじゃなくて、しっかりしたベースの上に乗ってる感じで、レベル高い作品だなと思いました。
草場作品また観たい。
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