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映画レビュー
緩慢な地獄の行き着く先は?
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東京国際映画祭の「メキシコの巨匠 アルトゥーロ・リプステイン特集」で鑑賞。
田舎の小さな町で、小さな愛憎が大きな波紋になっていく様を描いた群像劇。
「境界なき土地」という題名だが「境界なき地獄」でもあることが冒頭で示唆されていて、登場人物たちは皆、町=緩慢な地獄に閉じ込められたひとたちでもあるのだろう。しみったれた人間たちの出口のない愛憎劇を見つめ続けるという点ではカサヴェテス的なものを感じ、また市井の人間たちが自分たちの限界ゆえに悲劇に堕ちていく様はフォークナーの小説のようでもある。
その中心にいるのが、マチズモに囚われた男と娼館を営む中年のオカマで、男は自分をゲイだと認めたくないばかりにことらさらに女を誘惑したり暴力に走ったりする。とにかく卑小で有害な人間だが、そのねじくれた葛藤はわかる。
彼らの苦しみは、現代であればそれなりに理解や相談窓口のような受け皿があるのかもしれない(もちろん十全な状況などないだろうが)。どん詰まりで行き場のないこの環境こそが地獄ということか。
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