劇場公開日 2025年1月31日

「  これはいわゆる「不良バトル映画」と決め付けられないほど、多層的で幾つものサイドストーリーが伏線として用意されていて、さすが三池監督と唸らせる内容でした。」BLUE FIGHT 蒼き若者たちのブレイキングダウン 流山の小地蔵さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0  これはいわゆる「不良バトル映画」と決め付けられないほど、多層的で幾つものサイドストーリーが伏線として用意されていて、さすが三池監督と唸らせる内容でした。

2025年1月25日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

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 「1分間で最強を決める」という斬新なコンセプトで熱烈な支持を集める格闘技イベント「ブレイキングダウン」を題材に、少年院で出会った2人の男がブレイキングダウン出場を目指す姿を描いたバトルアクション映画。ブレイキングダウンの顔ともいえる格闘家・朝倉未来と起業家・溝口勇児がエグゼクティブプロデューサーを務め、「クローズZERO」の三池崇史監督がメガホンをとった。

●ストーリー
 濡れ衣を着せられて少年院に送られたイクト(木下暖日)は、そこで出会ったリョーマ(吉澤要人)と親友になる。少年院で聞いた朝倉未来(本人出演)のスピーチに感銘を受けた2人は、格闘技イベントのブレイキングダウンに出場するという夢を追うようになります。出所後、ふたりは早速キックボクシングジムに登録。トレーナーの紺野(寺島進)の指導の下、ブレイキングダウン優勝を目指すのです。
 それに邪魔が入ります。少年院時代のいざこざからイクトに対抗心を燃やす盾(久遠親)が仲間を引き連れて、キックボクシングジムへ乗り込んできます。そしてイクトにいきなりスパーリングを申し込むのです。ボクシングにいた吉祥丸は、かなりの腕前。イクトは苦戦を強いられます。
 対戦後吉祥丸が元カノの玉木由希奈(加藤小夏)と共に帰宅していたところに、最凶の半グレチーム・クリシュナのメンバーたちが絡んできます。玉木を庇おうと応酬した吉祥丸は、多勢に無勢でメンバーたちに拉致され、クリシュナのアジトに監禁されてしまうのです。
 事態を知った不良軍団を仕切るNo.2の井坂公介(仲野温)は、恥も外聞をかなぐり捨てて、土下座して吉祥丸の救出をイクトに頼むのでした。
 けれども、この日はイクトにとってブレイキングダウン決勝の日。クリシュナを率いる最強の男御堂静(GACKT)が待ち受けるアジトに飛び込むなんて、夢を自ら捨てる自殺行為となります。
 果たしてイクトとリョーマは、新しい人生に踏み出す事ができるのでしょうか?

●解説
 これはいわゆる「不良バトル映画」と決め付けられないほど、多層的で幾つものサイドストーリーが伏線として用意されていて、さすが三池監督と唸らせる内容でした。意味なく不良集団がぶつかり合うだけの映画『HiGH&LOW THE MOVIE』シリーズとはえらい違いです。
 義理と人情で単身敵地に飛び込むイクトは、まるで高倉健が蘇ったかのようでした。ですから、本作の本質は任侠映画がベースにあると思います。
 けれども本作のメインストーリーは、『ブレイキングダウン』に勝利して、夢を実現しようとする主人公の少年ふたりのサクセスストーリーなのです。
 そのための過程として、吉祥丸とのスパーリングシーンも、キックボクシングジムでの練習風景も、さらにブレイキングダウンでの対戦シーンも手抜きは一切なく、ガチンコ対決でした。
 しかし後半クリシュナに関わってしまうことで、単なるサクセスストーリーから任侠映画にシークエンスがガラリと変わってしまうのです。
 それでも夢に向かって最後まで諦めない二人の不撓不屈なところには、感銘しました。
 さて本作にはメインストーリーの裏側に様々な因縁や秘密が隠されています。
 先ずはイクトが少年院に送致されることになった強盗事件には、盟友のリョータが関わっていたことです。本当のことをずっとリョータはイクトにいえません。いつバレて二人の間が悪化してしまうのか、ヒヤヒヤする展開でした。
 またリョーマに追い込みをかけて、強盗に手を染めさせたのが不良軍団の井坂だったのです。リーダーを助けてほしい土下座した井坂を、リョーマはどんな気持ちで見ていたことでしょうか。
 さらにはリョーマの父親矢倉大輔(高橋克典)は殺人の容疑で家拘置所に収監されながらも冤罪を主張して最高裁にまで上告し争っていました。そんな父親とリョーマは微妙な関係でした。それを煽ったのが。ブレイキングダウンのオーディションでイクトとリョーマを挑発する佐渡島条威(大平修蔵)です。彼は東大キックボクシング部の主将で、検事の父親が、イクトの父・大輔の裁判を担当していたという因縁がありました。盛んにリョーマのことを殺人犯の息子とこき下ろす佐渡島。果たしてブレイキングダウン決勝戦と重なった最高裁の上告の結果も気になるところです。

 ところで総勢2000人のオーディションを勝ち抜いた主演の木下暖日と吉澤要人は、今回が初めての映画出演となりました。
 初めてとは言えない堂々とした演技で、ケンカシーンも格闘技シーンも気迫ある演技を見せてくれました。
 そして印象的なのは、ラスボスとして登場したGACKTです。掴みどころのない性格だが、残酷な事も冷静に行う狂気も垣間見せるのです。敢えて殴らせてやって、ノックダウンしたフリをするところは、なかなかお茶目な性格の持ち主のようです。それにしても見事に鍛え抜かれた筋肉を見せつけ、相手を瞬殺してしまうところは、さすがGACKTさま!でしたね。

流山の小地蔵