「ちゃんと絵もひみつ道具も活かせている」映画ドラえもん のび太の絵世界物語 弁明発射記録さんの映画レビュー(感想・評価)
ちゃんと絵もひみつ道具も活かせている
いやこれはよく頑張ったわ。
ウィキッドの初登場一位を阻止しただけある。
結構面白かったひみつ道具博物館の寺本監督だったので期待していたが期待どおりだった。やはりすごい人なんだな。
予告映像でタイムパトロールの存在を隠したのはよくやった。これがあるからドラえもんらしいと感じる。
泥棒のほうも未来から来たやつでひみつ道具を結構使いこなせるというのが新鮮で良かった。まあ絵から出てきたラスボスに石像にされるが。
絵の中に入る、絵の中から出てくる、を両方やり両方のキャラが混在するからややこしいところもあるがまあ些細。
何よりのび太が描いたドラえもんの絵が終盤で役立つという展開がいい。
こういう絵を使ったストーリーパターンは大抵「美しい過去を思い出す」みたいな精神的なものに使われがちだが、今作はきちんと道具として役立っている。
下手なドラえもんは下手なりにポケットから道具を出せてこの下手なタケコプター、下手なラストアイテムで決着をつけるという展開はよく考えたと思う。
ドラえもんとずっと一緒にいるのび太だから「ドラえもんの人となりやひみつ道具に解像度が高い」という理屈もとおる。こういうのはすごく大事。長年続いているシリーズだからできる展開でもある。
ラストアイテム、水もどしふりかけで自分達が作った城を打って大量の水でラスボスにトドメをさす、伏線の回収が見事。こういう「ひみつ道具で楽しい現象を起こしつつそれを後半の展開に伏線として使う」ってかなり難しいと思う。ひみつ道具に関して熟知してるのはもちろん、展開に無理があってもダメだから。
また一つ、ドラえもん映画で名作が誕生してしまいハードルが上がってしまったわけだが製作陣は挑戦し続けて欲しい。
冒頭のミュシャやムンクなど絵画名作の世界にドラえもん達が入りその絵柄になるオープニングが今作ならでは。
ここで広重などの浮世絵に入っているのを観て「そう言えば大長編で日本の時代劇っぽい世界ってまだあんまり行ってないな」と思ったので、今後は平安や江戸みたいな世界にも行ってほしい。意外とまだ行ける場所あるな。