「良作ではあるが、そこまでか?」映画ドラえもん のび太の絵世界物語 まっちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)
良作ではあるが、そこまでか?
あくまで個人的な感想です(長文です)。
前評判がかなり良かったため、数年ぶりに劇場へ足を運んでの視聴。
全体的な感想として、「良作ではあるが、絶賛されるほどではない」という結果。
とはいえ、わさドラ映画の中では上位に入るかなと思う。
〇良い点
多くの方がレビューしている通りなのであまり多くは書かないが、まず作画のレベルが高い。
アクション・バトルシーンは非常に迫力があり、冒頭のミノタウロスに襲われているシーンはカメラワークも素晴らしく緊張感がある。そして神すぎるOPに繋がり、これは期待できる!と思っていた。
最近のドラえもんアニメ・映画の色彩は彩度と明度が高く少し眩しい印象を受けるが、本作は落ち着いた色で色彩設計されており本編の内容とも相まって非常に良い。
他にも過去作のオマージュやよく練られた脚本、既存ひみつ道具の頻出等、良い点は多い。
〇気になる点
・クレア(絵)の扱い
個人的に、本作で最も残念に感じたのはクレア(絵)の扱い方。物語終盤にて判明するが、これまで一緒にいたクレアは絵の中の存在であり、はいりこみライトが壊れたことでクレア(絵)は消えてしまう。
作中の大部分を一緒に過ごしてきたクレア(絵)が大した別れのシーンもなくあっけなく消え、代わりに時空間をさまよっていたクレア(本物)が突然登場し、予知夢ができる設定を使ってこれまでの冒険を朧げにも覚えているからめでたしめでたし・・・??
さすがにご都合主義を感じざるを得ないし、無理があるように感じた。そもそもクレア(本物)は肉体的に成長した姿で戻ってきたが、その間はどうやって生きていたのか?
TPによると、時空間をさまよっていたところを保護したような事を言っていたが、幼い状態で保護して辻褄合わせのためにタイムふろしきでも被せたのか?もし何かヒントを見逃していたら申し訳ない。
最後、マイロがクレアの絵にのび太達を書き加えてくれていたのが唯一の救いだったが、もっとクレアの扱いを大切にしてほしかった。
・伏線の使い方
本作は序盤から伏線が散りばめられているが、メインターゲット層である子ども達はこれを理解できるのだろうか?特にクレアの正体については伏線の張り方が綺麗とは言えない。
映画冒頭、クレアが時空乱流に飲み込まれるシーンから始まる。しかし、のび太たちがクレアに最初に出会ったのは絵の中であり、のび太自身もクレアは絵の中の存在であると最初は思っていた。しかし、クレアが実は神隠しにあっていたことを知ると、後付け感満載のドラえもんの解説によりクレアは絵の中の存在ではなく実在している人間だというミスリードを起こす。そして最後はやっぱり絵の中の存在でした、と。
序盤でクレアが絵の中の存在である可能性が出た時点で、ラストシーンの実は絵でした、というのは驚きが少ない。中盤でクレアが水を避けていた伏線も、よく練られた脚本であると感じたが、だからといって感動するほどの驚きはない。
・のび太達の目的が成り行きで決まっていく
今回の映画は、のび太たちの行動理由が成り行きであり、結末に達成感がない。過去作を例にすると、魔界大冒険では中盤以降の時点で「悪魔から地球を守る」という行動理由があるし、ひみつ道具博物館では序盤から、「なくした鈴を取り戻す」という目的を一貫させている。
しかし、本作はのび太達の行動目的が次々と変わっていく。クレアと出会って以降ののび太達の目的は、クレアをアートリア公国に連れていく→クレアを両親に会わせる→処刑されかけるジャイアンとスネ夫を助ける&絵画泥棒を捕まえる→イゼールを倒す
というように、RPGのごとく次々と目的が変化する。
特にイゼールを倒す、というのは終盤で突如発生したミッションであり、結果倒すことができたが、魔界大冒険のデマオンを倒した時のような達成感はない。
・イゼールの倒し方
イゼールの弱点が水であるとわかり、戦いの舞台が水ビル建築機で作った家の近くになった時点で水加工用ふりかけを使って倒すのはある程度予想できた。しかし、その倒すためのキーアイテムをわざわざ光を入れて隠して焦らした先に、予想通りふりかけを使って倒すというのはかなりあっけない。しかも一度モーゼステッキを使った攻撃をかわしているのに、同じような攻撃方法でやられてしまうのもなんだか。。まあイゼールも家が水になるとは思わなかったのだろうが、いまいち盛り上がりに欠ける。
・アートリアブルーとクレアの瞳
かなり序盤から出てきている、見る角度によって違う色に見えるアートリアブルー。そしてクレアの瞳もそのアートリアブルーのような美しい瞳。さすがにこの青色とクレアの瞳が物語の重要ポイントになるんだろうな、と思っていたのに何もなくて、作中で最も驚いた。
この設定をなぜ上手く使わなかったのか・・・。
また、のび太とマイロが夜中に1:1で会話するというお約束シーンでは、どうしてもクレアの瞳に色をつけられないことをマイロが悔しがっていた。このシーンも結局それっきりで、完成したクレアの絵を見ることはなかった。
他にも書きたいことはあるが、とりあえずここまでにしておく。
気になる点をメインに書いたが、本作は良い点もたくさんあるため非常に惜しい作品ではある。
今作は序盤~中盤は退屈することなく見ることができた一方で終盤がイマイチであり、
前作の地球交響楽はその逆で中盤は少し退屈でクライマックスの盛り上がりが過去最高クラスであった。映画を見終わった後の満足感としては後者の方が高いので、終盤は大切だと思いしらされた。
あまりにも本作を絶賛するレビューが多く、自分がおかしいのか?と思ったので、映画のレビューを初めてやってみました。
なんだかんだ言いつつ、毎年ドラえもんの映画を見続けて20年、すっかり大人になってしまいましたが、毎年映画を作り続けてくれる制作陣には感謝です。
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