「絵を描くこと。人間が生きるということ。」映画ドラえもん のび太の絵世界物語 ひろしさんの映画レビュー(感想・評価)
絵を描くこと。人間が生きるということ。
子供を連れて映画ドラえもんを観に行くようになり6作目。その中で一番の出来。
正直異世界ものはあんまり個人的な好みではないが、歴史上記録に残らずに火山の噴火によって消えた国という設定で、それならポンペイのような事例もあるし、さもありなんと思わせてくれて、13世紀の暮らしをトリビアを織り交ぜて楽しく伝えてくれて良かった。
ドラえもんとのび太の関係を中心にした大切な人とのつながり、でてくるキャラクターの感情を丁寧に描く。その辺はさすが寺本監督って感じでした。
また歴史上絵を描くということはどういうことか、AIが登場した現代でそれはさらにどういうことになるのか、つまり絵が上手けりゃ良いのか、上手いだけならAIが絵師の仕事は取って代わるはずで、本作の作り手のメッセージはそうじゃないだろ。絵は人間の営みの中で生まれる表現であり、そこに乗せた思い、伝えたいことが大事なんじゃないの、といったことを絵師として、いや人間のプライドを賭けて、ごく自然に伝えてくれる。
(自然にってすごく大事なことで、ここが御涙頂戴な所ですよというシーンや伝えたいメッセージをキャラクターにそのまま語らせたりすると、こっちは興醒めしちゃう。それが今回はスッと入って来た。)
そして、この作品の中でも、大事な思いを乗せた絵が悲しむ誰かを救う。マイロの父が描いたクレアの肖像画が、クレアを失い悲しみに暮れる家族を。のび太が描いたへたっぴドラえもんの絵がこの世界を、救う。そのことに、現代を生きる我々も少し救われる気がした。
へたっぴドラえもんといえば、寺本監督のインタビューにあった「起き上がりポロンちゃん」の逸話は、ドラファン必見なので是非観てない方は記事を見てみてください。
最後に一つだけ苦言を呈するのであれば、パルの声はやはり改善の余地ありだと感じた。この人だけ声を録った環境が違うと思うくらいずっと違和感があった。T.P.ぼんと近い立場で、イケメンでやる時はやるけど、おっちょこちょいな所もあり…でパルのサイドストーリーまだ出来そうな、すごく魅力的なキャラクターなのに、そこは少し残念。(サンドウィッチマンの方が上手いってどうよ。いや、まあ声質とかキャラクターとかその他事情があるのは分かってるけど…)
でも、とにかく全体を通じて良いものを創ってもらって、スタッフの方々全員に感謝したい内容でした。うちの子供(9歳、7歳)も楽んだようで、終わった後ずーっと、興奮して感想を言ってたくらいです。
また明日から、私も人間として、そして自分だからこそ出来る仕事を頑張ろうと思います。
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