「絵描きへの救い。静止的な絵画、動的なアニメーション」映画ドラえもん のび太の絵世界物語 みみみさんの映画レビュー(感想・評価)
絵描きへの救い。静止的な絵画、動的なアニメーション
近年、絵が上手くないといけなかったり、上手いと思えばAIと疑われ気分が落ち込んだり、と。
10年前だったら争いの火の元にはあまりなかったであろう絵というものが、そうなってきてしまっている。
それによって生まれるいろんな派閥があるけれど、誰が描いたか、何を思って描いたか、に焦点をあてていたので、それによる各々の苦労(絵を描くということの苦労、労働力なので、これにAI生成は含まれない)も映し出された。
結局「うまいのが重要ではない。気持ちだよね。」というあるあるの教示ではあるが、でもだからこそ漫画やアニメーションでここまで長寿となった"ドラえもん"という作品に示されたからこそ、絵を描く人間にとって救いのある映画でもあったのではないだろうか。
この映画は史実、現存されている絵画を知るためのものではない。
絵画、絵を描くということをモチーフにしていたからこそ、絵画モチーフを取り入れたOPはアニメーションならではのもの。静止の絵画をうまく映像にして、ドラえもんたちのタッチも合わせているからこそ、見る人たちにとっても楽しく、知識欲がある人は「この絵は誰が描いたんだろう」と考えることへ繋げることもできる。
絵に興味がない人でも「あ!見たことある!」という有名絵画を取り入れてるOPのため、一定の客層も取り残されることはないと考える。
OP締めの芸術モチーフが漫画だったのも漫画原作のドラえもんらしく、またそれをアニメーションで表現するという、絵画から派生した芸術をわかりやすくうまく表現したのではないだろうか。(個人的に好きだったのはモネとゴッホ、歌川広重のシーン)
アニメーションやSEが豪華だったり、例年よりもひみつ道具をたくさん使っていることから動きを多く取り入れた映像になってた。
中でも、回転するタライ、流しそーめん、水、釣り、風鈴と言った、流動を表現するアニメーションがとても多くいのが個人的には良かった。
というのも、これによって静止と動的の差や違いが表現されるため、アニメーションの中の絵画が同化せず、それぞれ分断され別の芸術分野であることを認知することもできたと。
また、女の子の動きに力を入れてたとも思う。映画オリジナルキャラクターのコロコロ変わる表情にも愛らしさがあり、しかしながら例年のドラえもん映画に出てくる知識欲のある子供たち(映画キャラクター)ではなく、そこまでの知識欲がないキャラクターだったため、見たものを何故?ではなくすごい!と感動するだけの6歳らしい子供にもなっていた。
加えてアクティブなクレア、インドア(??.パッシブ?)なマイロの対比も、アニメーションと絵画同様、動的と静止的が表現されていた。
ただ、絵画考察等は特になく、希少価値を大にしていたため、絵画に対して違う思い入れがある人は見ててストレス溜まる可能性もあるのではないだろうか。
途中で出てくる敵(蚊みたいなやつ)は13世紀で流行した壊血病がモチーフか。ペストも考えたが、吸われる感じは違う気もする。
悪魔が道具を取り込んだとして、ドラえもんたちしかわからないはずの使用方法や効果を自分の力にして発動する能力を持っているのが謎だったが、記憶を辿ったら理解もできた気がする。
ただ、色を取り込む能力自体に関しては謎。何かモチーフになった悪魔がいるのか、調べ中。
時空を飛び交いすぎて本来なら回収されてたフラグも回収されてる感じはなかった(チャイとか), 。もう一回見たら理解できるかもだし、フラグ回収の取捨選択は考察を一任するからいいのかもしれない。
最後に回収された謎も一応あった。
ドラえもんという地盤があったからこそ、描けて楽しめた映画だったと思います。
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