劇場公開日 2025年2月21日

「まずは怒ろう。そして知ることを始めよう。」ノー・アザー・ランド 故郷は他にない あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5まずは怒ろう。そして知ることを始めよう。

2025年4月24日
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鑑賞方法:映画館

この映画の日本公開の直前となる2月にホワイトハウスの狂人がガザ地区について驚天動地の発言をしたことは記憶に新しい。あそこまで歴史的背景や人道的立場や社会正義に依拠しない、というのはある意味凄いね。
さてこの映画、2023年の10月に撮影が終わっています。ちょうどその10月7日にハマスの大規模襲撃が発生し報復としてガザ地区に対するイスラエルの攻撃と虐殺が始まる。でもこの映画は2019年から撮影されている。つまりパレスチナ自治区の一つであるヨルダン川西岸地区におけるイスラエルの不法行為はガザ紛争以前に既に始まっていたことになる。
パレスチナ自治区(ガザと西岸地区)は1967年の第三次中東戦争(いわゆる六日戦争)でのイスラエルの占領地。もともとはオスマントルコの版図に属していたが、第二次世界大戦を経てイギリスの委任自治領となり、中東戦争直前はそれぞれエジプトとヨルダンの委任自治領だった。つまりパレスチナという主権国家が存在したことはない。
イスラエルが戦争後、50年近くに渡って、占領地としての占有を続けていること自体、どうかなとは思うけど、それは戦争の結果だからある程度仕方がない。でも、パレスチナ系住民に対するイスラエルの行為は、明らかに国家をもたない人々の弱みにつけ込み実効支配を拡大しようとする不当行為である。そもそも、この映画で触れられているように、パレスチナ人たちは1900年代から、古い人は1830年頃に入植した正当な住民であり、軍用地にするからといって一方的に排除する法的妥当性はない。(先行レビューに、「ユダヤ人の故地」と言った言説があるが、それは古代イスラエル王国とかの話であり3000年も前のいわば伝承である)さらに、住民の排除に際しては、軍隊はもちろん、イスラエル人入植者が暴力でもって介入しており、無法状態にあるといって良い。今回、映画の最後で、入植者がパレスチナ人に対して発砲する場面が撮影されているが、白昼堂々と銃器を持った一般人が犯罪行為を行うなどイスラエルは最早国家としての体をなしていないと非難されてしかるべきだと考える。
映画の宣伝ではパレスチナ人監督とイスラエル人監督の友情に焦点を当てているが、そういった心情的な部分はどうでも良い。どうでもいいというのは語弊があるかもしれないけどこの酷い状況をまずは怒ろう。彼らは勇気を持ってこの映画を製作しており、その目的はまず世界にその現実を知ってもらうことにあるとしている。だから我々はしっかりこの思いを受け止め、知識として足りない部分があるのならば、調べるものは調べて、何が起こっているのかを自分なりにきちんとおさえて、可能な限り、SNS等で自分の考えを拡散していくべきだろう。

あんちゃん