「カメラは身を守る手段だと知った。」ノー・アザー・ランド 故郷は他にない 消々さんの映画レビュー(感想・評価)
カメラは身を守る手段だと知った。
カメラの前でも暴力ははたらかれる。でも撃たれたり危害(殴打など)が加えられるのは、「撮られてない」時なのではないか。
カメラの前の兵士や入植者といった、このドキュメンタリーの加害者側は、言葉や仕草で威嚇する場面が多い。威嚇にしても銃口や実際に殴り倒されたような場面もあるし、確かに映画化段階で凄惨な所は除かれたに違いないとも思う。でも、人が撃たれた瞬間はカメラが壊れてスマホで代替していた時だし、遠くから撮っていた時だった。つまり兵士はカメラの存在に気づいてなかった可能性がある。撮られてない。つまり自分たちの暴力が「バレない」時、酷いことができてしまうんじゃないか。
だから人々は「撮ってるぞ」と連呼していたのかもしれない。「お前たちのやってることは、知れ渡るぞ。」暴力がここだけの、限定されたものではなく、他人が知ることになる可能性があることは、それだけで抑止になるんだと思った。
であれば、映像に残らない、この画面の外ではもっと、考えうる以上に酷い状況なのではないか。
胃のものがせり上がるような鑑賞だった。
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