劇場公開日 2025年2月21日

「自分とは、思えない程の怒り」ノー・アザー・ランド 故郷は他にない 機動戦士・チャングムさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5自分とは、思えない程の怒り

2025年3月6日
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 ガザの停戦交渉、ハマスが人質数人、解放すると、イスラエルはパレスチナ系の逮捕者、数十人釈放します。あれ、適当な理由で、ヨルダン川西岸で逮捕された人が、大勢いるからだそうです。きっと、今日も…。

 アラファト議長と、ラビン首相が合意してから、何年経ちましたかね。ガザ、及びヨルダン西岸の武力を用いた入植問題は、国際社会では知られていました。その問題を止めなかった結果は、誰が、どのように受け止めたらいい?。

 この映画、イスラエル高官が正式に非難しました。内容が一方的だそうです。確かに、ドキュメント映画は、編集者の意図の下、創られます。ドキュメンタリーは嘘をつく、の所以です。でも、その意図を考慮しても、この映像を観る限り、今のイスラエルは、非人道的と言わざるを得ません。
 殊に問題なのは、イスラエル兵が、パレスチナの子供達に、恐怖心を植えつけていること。あの子達の恐怖心は、やがて復讐心となり、取り返しのつかない敵対心に凝り固まってゆく…。

 一方的だと主張する方々がいるので、ちょっと違った見方を。

 こんな意見があります。パレスチナに同情するヒトはいるけど、イスラエルが、何故、武器を手放さないのか、何故、入植地を拡げたがるのか、その根底にある、彼らの恐怖心を和らげる為の国際協力は、あるのか?。と。
 ここまでくると、専門家でない私から言及不能。ただ、虐待された子供が、虐待する親になりやすいのと同じ。キリスト教圏で、ヒトラー以前から、迫害だの民族浄化の歴史を背負わされたヒト達に、今日からみんな、友だちだよって言ったところで、受け入れるのか。傷つけられた歴史しかない民族に、他者との共存を求めるプロセスは、通用するのか?。(この問題は、ユダヤだけの話ではありません。このクニで暮らすクルドの皆さんにも、共通の問題です。)

 暴力を用いる者に、制裁を与えるだけでなく、共生の道を示す神様って、いるんですかね。よその神様を攻撃するよう、けしかける神様なら、いくらでもいるけど。

 入植者が武装しているのは、知りませんでした。軍隊より統制がなく、暴挙、暴発しやすいようです。その事実だけでも絶望的ですが、もし、この映画に希望があるとすれば、ユダヤ系の会員が多い、アカデミーで受賞したこと。ユダヤの皆さんにも、今のイスラエルに疑問を持つ方がいるみたい。つまり、この映画の、ユダヤのカメラマンさんは、彼1人ではない。その志は、きっとつながっている。

 ペンは剣より強しと言いますが、カメラが銃より強いことを証明する時が、来たのかも知れません。
 支援物資として、武器より、スマホを渡したいものです。

 ガザの住民は、全員引っ越す。後に、ガザを新しい街にする。誰もが暮らせる魅力的な街だ…。そう、のたまう大統領様がいます。この映画、観てくれないかしら。

 ノー・アザ-・ランド(掛け替えの無い大地)は、誰にでも、あるのだから。

機動戦士・チャングム