「「ぱぱ、〝どなるな〟っていって」」ノー・アザー・ランド 故郷は他にない humさんの映画レビュー(感想・評価)
「ぱぱ、〝どなるな〟っていって」
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張りつめる空気に怯えるこどもが必死に言った。
握りつぶされるように砕かれる家や学校。
立ち向かい容赦なき弾に射抜かれる家族。
目の前で大切なものがいとも簡単に破壊され続けていく。
これはゲームの世界じゃない。
マサーフェル・ヤッタのこどもたちの目に映る現実世界の不条理。
彼らのなかに憎しみのエネルギーとなりいつかそれは負の連鎖となりうる。
その過ちの痛ましさが満ちていく瞬間を目撃しているのかも知れない苦しさと恐ろしさは、ただ立ち尽くす力無い自分を責めもする。
微力な力も積み上がればどこかにいつか届くと信じたいが、そんなきれいごとなど彼らはその経験からすでに欲していない。
被害者側と加害者側の立場の青年たちが自分の命を差し出しながら、今、具体的な一手をと叫んでいるのだ。
あの場所で彼らの絶望が生きる気持ちを消滅させてしまう前に、世界はどうやってこの記録に意味を持たせられるのだろうか。
避難した暗い地下から見上げる小さな長四角の空が、無惨に切り取られた彼らの人生の断片にみえた。
あそこからみえる月や太陽に一寸先の命があることを祈る人々がいる。
平等の命なんかじゃない。
知らないではすまされない。
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