お坊さまと鉄砲のレビュー・感想・評価
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「世界一幸せな国ブータン」
今年290本目。
新宿武蔵野館で。お坊さんが2丁の鉄砲を若い僧に頼む。どうなるのそこが面白い。後半お客さんから笑いが起こるシーンも何か所か。「本日公休」は台湾の映画、今作はブータン、台湾など4か国の合作、良作が端々にあって嬉しい。
火種
2006年第4代国王の退位により、民主化されることになったブータンの田舎の村で、模擬選挙を前に混迷する村人たちと銃を巡るドタバタをみせる話。
選挙管理委員が来村することを聞いたラマ僧の言いつけで銃を探す僧侶と、貴重な骨董品の銃を探してアメリカからやって来た男とガイド、そして模擬選挙にのめり込む主人を持つ家族と選挙管理委員御一行等をみせていく。
必要以上のものを望まない人達と、欲に目が眩む人達と、そんな人達の鬼ごっこだったり尊厳だったり…。
コメディだけど結構サスペンス風味も!?
選挙ももちろん面白かったけれど、銃を巡ってはコミカルさがかなり全面に出ている感じだし、どちらもコミカルさの中にしっかりと本質があってとても面白かった。
宗教は欲や武器に勝る?
予告編にあったような選挙の話と高僧が銃を必要とする展開に思わせぶりがあった。アメリカ人が高値で欲しがった銃さえその高僧に譲るほど僧侶は尊敬されていて、銃取引の仲介者が警官から捕まりそうになり、処罰を逃れるために銃を供出することになり、警官の拳銃や子どもの玩具の水鉄砲さえ供出することになってしまった。高僧の願いを聴き入れたアメリカ人は、代わりに聖なる秘具を与えられることになる。執着から逃れることの大切さが説かれていた。聖書の「駱駝が針の穴を通るより難しい」という例えにも通じるが、欲張り爺さんの成れの果ての説話にもありがちな感じがする。
アメリカ人は、ブータン人から、J.F.K.やリンカーンを生んだ国と羨ましがられるが、それらのリーダーは、銃の力で倒された人々でもあったので、銃を無力化したブータン社会の力には敵わないところがある。けれども、インカ帝国を少数の軍人で征服したピサロ氏に対抗できるほどには有効ではないだろう。
『ゲンボとタシの夢みるブータン』に描かれていたような、僧侶養成教育よりも実用教育に転換しつつある傾向は、ここではまだ描かれていないようである。
クライマックスのあの二人の表情が絶品な一作
法衣をまとった僧侶が鉄砲を肩に担いでいるという、ほんわかした雰囲気だけどどこか不思議な組み合わせが目を引く本作のポスター。このアートワークから連想できるように、物語は山に籠って修行中の老僧が弟子に二丁の銃を持ってくるように命じるところから始まります。
舞台は「民主制」への移行を控えたブータン。敬虔な信仰心と国王への敬慕に基づいて伝統的な国家体制を維持してきたブータンが平穏に民主制に移行できるか、という国家的挑戦の真っただ中にあります。この大きな変化に誰もが戸惑い、高揚してる状況で、なぜ銃という物騒なものが必要なのか。骨董品として高価な銃の入手をもくろむ外国人も加わって、ちょっとした騒動が巻き起こります。
老僧が銃を必要とした理由が明らかになった時の、腑に落ちた感もなかなか良かったのですが、「民主化」、「普通選挙」というものがどういうものなのかを、ブータンの人々のふるまいから描いている点も興味深い作品でした。
政府職員として選挙というものを知らない住民に啓蒙活動をしていく者が実は、選挙の意味を十分に理解できておらず、単純な勝ち負けにこだわっていたり、政治といった世俗的な動向から距離を置いているように見える修行僧が実は……といったちょっとしたひっくり返しを物語に実に巧みに織り込んでいます。
この、我こそ民主化の担い手、という登場人物に対するちょっと皮肉な見方は、そのまま「民主化の先輩」である国々の人々に対する、「ほんとに選挙の意味わかってる?」という問いかけにもなっていて、穏やかなブータンの風景を眺めつつお気楽に物語を楽しめる作りのようで、実は割と大事な問題に目を開かせてくれる作品でもあります。
いろいろ見どころの多い作品ですが、クライマックスのあの二人の表情、そしてそのあとのふるまいにはなかなか笑わせてくれます。案外いい奴らじゃん。
きな臭い話かと思いきや笑えるお話でした
ブータン初の選挙ということで…
選挙とは何かを何故か憎しみを煽るように教えて回る役人
二人の有力候補を巡って次第に不穏になる家族や村人
位の高いお坊様は国の為にと銃を若いお坊様に用意させようとする
何やらきな臭いストーリーが展開する中、南北戦争時代の銃を求めにブータンに来たアメリカ人も村にやってきてさてどうなるのか?
非常に面白かったです。
民主主義は幸せを求めるための一手段であって、それで啀み合う様な最近の日本の政治はなんなのだろうと思ってしまいました。
まさか銃があんな事になるとは。
銃マニアのアメリカ人、最後はまさかのものを手に入れてしまいますw
ブータンの山村の長閑な風景、草っ原にポツンと立つ仏塔も見どころ。
民主主義、民主主義
アジア的な
「ブータン 山の教室」の監督による、今度はコメディ。
初めての民主選挙のための模擬選挙と、何故かそのために銃を求めるラマ僧の弟子と、その銃を求める銃コレクターと通訳。誰もが初めての体験に手探りで、それ故の絶妙な噛み合わなさ…いわゆる西欧的なコメディでもなく、微妙なユーモアが心地良い…
終盤にラマ僧の目的が明らかになると、なるほどという思いとともに、西欧的な価値観に基づく「民主化」「近代化」が本当に正しいのか、という思いを抱かざるを得なくなる…
模擬選挙の説明係が「対立する政党ですから、もっとこう憎み合うくらいに…!」って言ってたのは、昨今の情勢を見るだにその通りで笑った…ww
前作とともに、アジア的な価値感についての再評価のために観られるべき作品だと思う…
最大幸福国家神話をなぞる「無邪気」な映画
ワンチェク国王が王妃と一緒に来日したのは2011年。美男美女の王夫妻に日本中が沸いた。あれからもう10年以上経ったのか。
国王が即位したのは2006年。先立つ2005年に初めての選挙が実施された。憲法公布は2008年。推移は我が国の明治憲政史と非常によく似ている。権力と国民が協調して立憲君主制に段階的に移行したということである。
この映画は初めての普通選挙の前に模擬選挙を実施する話だから時代背景は2005年手前ということになる。その割には現国王の写真が役場に掲げられていたり2006年から公開されたダニエル・クレイグの007シリーズ映画がTV放映されていたりする。(しかも「カジノロワイヤル」でなく「慰めの報酬」にみえる。ならば2009年の公開)割と時代考証がいい加減なのだがそれはまあ良い。
模擬選挙では架空の候補者3名から1人を選ぶ。赤色の候補者は民主主義の拡大を訴え、青色の候補者は経済発展を訴える。対して黄色の候補者は伝統主義の固持を訴える。結論、模擬選挙でこの村の選挙民が圧倒的な率で選んだのは黄色だった。もう一つ、この映画がテーマとしているのは武器の不所持、廃棄であり、それも映画の結末として表される。
幸福度を高めることを国家目標としているブータンのありのままを捉えているようにみえる。
でも本当にそれで良いのだろうか?自分の親やそのまた親と同じく第一次産業に従事し、仏僧や王室を尊び、つつましやかな生活をする。それで心の平安が確実に得られるのだろうか。ブータンに生まれた以上、それ以外の選択はないのか?
パオ・チョニン・ダルジ監督の前作「ブータン 山の教室」はその問いかけを静かな語り口で提起した作品だった。でも、本作は時代をさかのぼって民主主義がスタートするある意味無邪気な時代を描いているとはいえブータンが幸福な国家であると、あまりにも画一的、無批判に描いてしまっている気がする。ブータンは最大幸福を目指している国ではあるが、最大幸福を実現している国ではない。選挙管理委員の若い女性役人や彼女と交流を持つ村の少女ユペルの姿に新しい世代の誕生を予感させている部分はあるものの世界中に流布されているブータンのイメージを無自覚、かつ問題意識もなく再生産しているような気がするのだが。
ミステリアスで面白かったです!
(オンライン試写会は全てネタバレ扱い)発展途上国における議員選挙等の実態を見るに良い映画
今年425本目(合計1,516本目/今月(2024年12月度)4本目)。
※ (前期)今年237本目(合計1,329本目/今月(2024年6月度)37本目)。
オンライン試写会に招いてくださったfansvoiceさま、ありがとうございました。
ここでは「一部コメディを含む」というような書き方になっていて、確かに笑いを誘うシーンはあるものの、一方でドキュメンタリー映画でもないものの、実際に「つい最近」(といっても30年くらい前)に初めておきたブータン国内での選挙をどうするか、という趣旨を描く映画です。法律系資格持ち(行政書士)としてはこのあたり憲法論(投票権)の問題になるので国内はもちろんかかる趣旨は国外にもあてはまるので、意識的に応募したら当選しました。
ブータン自体は日本とは(台湾等と比較したときの)「極端に」いわゆる親日国ではないし在日ブータン出身の方がいないわけでもない(2021年データで410名とのこと)ですが、それでも仏教の考え方が似る等比較的親和性が強い国で、どちらかかというと日本との交流は盛んでもあります(なお、国名でブータンを漢字名で書く場合「不」が普通。「仏」だとフランスとかぶるため)。このため、国自体は少ないし交流も少ないのは確かですが、少なくてもブータン出身の外国人も日本に滞在されておられますし、文化が似るので(韓国、台湾ほかの近隣諸国では「ない」にも関わらず似て日本文化の吸収も早いとされるのは仏教の関係もあると思います)、あまりトラブルはきかないほうですね。
ただ、30年ほど前にはじまった「選挙」も何も不正をする目的もあったものではなくて、それまで「どうしたらいいかわからない」状態だったのがそのときのブータンで、そのために「選挙はこういうようにします」といういわゆる「選挙監理団体」(選挙や民主主義における選挙の不慣れに対して国連などが手助けするところ)が実際にブータンにいっており、そのときには日本も協力しています。ブータンのはじめての選挙の不正防止より、実際に「どうしていいかまるでわからないし投票用紙やら箱やら言われても何がなんだか」だったので、選挙のイロハから教えた、ということになりますね。もちろんそうして選ばれた選挙で現在は何度か選挙も行われていますが、そのたびに国連などのそうした組織の関与は少なくなり、今ではほとんど存在しない(ブータンがやや国として高地にあるため、入手しにくいものを貸与する程度にとどまっている)ようになっています。
映画で描いているのはこうした事情で、どうしても「退屈な映画」になりがちなのでギャグシーンなども若干入ってはいますがギャグシーンも単発的なもので「はじめての選挙をいかにして成功させるか」という部分に焦点があたる「準ドキュメンタリー映画」の要素が強い映画です。
映画に「娯楽性」を求めていく立場ならおすすめはできないでしょうが、教養が高まる映画ではあることは間違いない事実なので、是非といったところです。
採点上特に気になる点までないのでフルスコアにしています。
(この映画、台湾等いくつかの国の合作です。日本・ブータンもある程度の交流はあるのに、なぜ日本はかかわらなかったのだろう…。当時のコロナ事情?)
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