「幸福度ランキング一位の憂鬱」お坊さまと鉄砲 himabu117さんの映画レビュー(感想・評価)
幸福度ランキング一位の憂鬱
文明の発達は、必ずしも人間の幸福に結びつくわけではない『お坊様と鉄砲』、いや不幸にすることのほうが多いのでは、そう考えさせられる映画です。でも、もう後戻りはできないですよね、後は破滅に向かって急ぎ足でゆくか、足るを知るがごときノンビリ生きるか。
世界一幸福な国「ブータン」のはずなんですが
物語は、2006年のブータンが舞台。
それまでの国王による王政から、民主主義国家へ向けて初めての選挙が。
それまでの、ブータンはほぼ鎖国状態に近い国。
日本では、「世界一幸福な国」として、有名なんですが。
その根拠は、世界幸福度ランキングなるもの。
2013年に欧米の国に次ぐ、8位にランキング。
あの、後進国がなぜとなったわけで。
まあ、国際舞台にいきなり登場して、アジア最上位ですから。
みなは、驚いたんですが。
しかし、この話は後日談とでもいいますか。
その後のランキングは、2019年に59位にランキングされたのを最後に。
もはや、ランキングインすることは、ありませんでした。
そんな、アジアの仏教国ブータンの初の選挙。
鎖国は、悪いことばかりではない。
日本だって、徳川家が政権を担っていた江戸時代、300年間鎖国をしていたわけで。
その間に、科学技術や産業面、とりわけ庶民が困ったのは、医療の立ち遅れでしょうか。
平均寿命も短かったし。
子供の死亡率も高かった。
だけど、文化面では、庶民の芸能や浮世絵を中心に。
世界で類を見ない、独自な表現と発達。
いまでも、世界に誇れる文化が、開花した時代。
ブータンとて、どうだろう、文化面では、詳しいことはわからないけど。
人々の幸福度は、この映画をみれば、自ずと伝わってくる。
とりわけ日本もそうだけど、仏教国は、穏やかで、質素な国民性。
それは、この映画でも随所に感ぜられる。
産業革命とキリスト教を同列で捉えることはできないけど。
どうしても、文明開化、産業の発達、キリスト教の布教解禁。
そんな、キーワードでみてしまう。
幸福の度合いっていったい。
映画でも、素朴な生活しか知らない、村の民は、幸せそうだ。
そう、幸福と感じる器の大きさが、小さいのだ。
だから、僅かなことでも幸せと感じてしまう。
でも、日本でもそうだけど、産業の発達、恵まれたインフラ。
生活をより便利にする環境と道具。
文明の発達とともに、幸福と感じる器が、だんだん大きくなるのです。
ですから、ブータンも幸福度ランングから外れてゆくのも納得。
映画は、まさにその入口あたりで終わってます。
ただ、あの頃は良かったで終わらせたくないなと。
現代日本だって、そう悪くはないと。
まあ年齢にもよりますが。
若者が、より良く、より多くは当然のこととして。
かたや、生きていく最小限が満たされていれば、あとは儲けもの。
こんな考えになれればいいなと。
蛇足ですが、これをお薬で満たそうとすると。
ヘロインということになります。
代表的な、幸福と感じる器を小さくしてくれるお薬。
ただ、手を出せば、短い人生が。
あと、薬欲しさに犯罪にとか。
まあ、やめといたほうがいいですね。
とにかく、人間は、欲の生き物。
これを上手くコントロールしながら。
あるいは、適当にごまかしながらやっていくしか。
しょうがないですよね、それが、人間ですから。