かたつむりのメモワールのレビュー・感想・評価
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生きた跡を残しながら前へ進もう‼️
今作は「ウォレスとグルミット」などのアードマン・アニメーションの作品に勝るとも劣らないクレイアニメーションの名作ですね‼️幼い頃から周囲に馴染めず、孤独を抱えて生きてきた女性グレースが、周囲の人々に支えられながら、少しずつ生きる希望を見出していく・・・‼️内容としては人間ドラマなんですけど、粘土で作られたその世界観‼️建物や街並み、船やトロッコといった乗り物、モルモットやカタツムリといった生き物まで、画面からあふれ出るクレイアニメーションに胸がワクワクさせられます‼️キャラクターたちもグレースの双子の弟ギルバートをはじめ、世界中を旅し、得意料理はジンジャー大麻クッキーというピンキー婆さん、脂肪フェチなケン、凶暴なギルバートの里親ルースなど、キャラ描写もホントに素晴らしい‼️カタツムリのように自分の殻に閉じこもってはダメですよ‼️そんな人生肯定のメッセージを美しいブラックユーモアで包んで届けてくれるビターなお伽話です‼️
伏線の回収が鮮やかで見事なクレイアニメ
独特の世界観が見事なクレイアニメ。想像以上に双子の姉弟のグレースとギルバートの人生が過酷なのでファンタジックな表現方法でなければ生々しくなりすぎたかもしれない。敷かれた伏線は見事に回収されてゆくさまは、少し甘すぎるきらいもあるけれど鮮やかだったと思う。監督の人生観の投影なのだろうけど生きづらさをこれでもかと描くあたりと、フェアでリーテイルゲイ・マジカルニグロならぬ「教訓老人」に救われる展開はやや食傷気味でもあったけど、素直に感動したのも確か。
出てくる夫婦はどれもいびつだし、ケンの愛とグレースの愛は同じレベルに見えた。描きたいのは、恋でも愛でもないのだろうからそれはとやかく言うポイントではないのだろう。
ケンの趣味嗜好は確かに一般的ではないしコレクションは下劣だけど、その嗜好自体は自由だと思う。ただグレースにとってはコンプレックスである部分を愛でられるのが複雑なのはわかる。ただ、グレース自身がケンのどこを愛したのかと言えば、一般的にイケてる男性に近づかれてすぐに浮かれて恋に落ちるわけで、ケン自身を好きだったとは言えない関係だったと思う。ケンの性癖を嫌悪する自由はあるけれど、怒りは違うんじゃないかと思う。監督の前作を見てないのでテーマが何だったのか把握してないのだけど、この監督がどんな愛を描くのかちょっと気になる。
双子の弟と離ればなれの生活になってしまい、心が殻に閉じ籠もってしまった少女。知り合った老婦人との交流を経て自分の生き方を見つめ直す過程を描いた物語です。
コマ撮りアニメーション作品で8年がかりで完成した作品
との事でした。そう聞くと、何はともあれ観てみたいなと
いう気持ちになりまして、鑑賞してきました。・_・
で、鑑賞終了。
鑑賞直後の感想はといいますと…
#画面内の密度が濃く、重苦しさを感じる作品。
#コマ撮りアニメーションとしての技術と努力には敬意を
表するが、見ていて楽しい作品とは言い難い。
#誰に見せることを想定して作った作品なのだろうか。
きゃー 余り褒めてない。
アタマをもう一捻りして、さらに感想など…
#最終回にしか 救いがない連続ドラマを延々見続けた気分。
#ひたすらナレーションによって進行するストーリーも、
アタマの中をトランス状態に誘導するのに効果的。
#ラスト3分までひたすら重苦しい雰囲気が漂っている。
きゃー やはり褒める内容が出てこない… うーん *_*
手間ひまかけて作られた作品なのは理解出来ました。 ・△・;
アニメーションの完成度も素晴らしいと思いました。はい
けど もう一度観たいかといえば… " いいえ " ですねぇ…
たとえば「世界名作劇場」のような作品の場合。
主人公やヒロインが無体な仕打ちや苛めを受けたとしても
最後には試練に打ち勝ったりとか、苦労が報われたりする とか
そんな場面が数話ごとには入る事で、マイナスに累積した
感情のリセットがされていくかと思うのですが、
このお話では、
" ひたすらマイナスが積み重なっていくだけ "
そんな感じを受けて、観るのが辛くなってしまいました。@▲@
そして思い返すたびに浮かんでくる疑問。
” なんであんなのが 里親になれるの? "
鑑賞中から感じたこの理不尽さに、鑑賞4日後の今も
どうにも納得できずにいます。悶々。
そして7日後(わー まだ続いてるのか…)
この作品って
実話なのか (可能性はありそう)
創作なのか (元ネタがありそうといえばありそう)
寓話なのか (どんな想いを込めたやら)
哲学なのか (人生観が感じられる気はしますが)
文学なのか (子ども向けではなさそう)
芸術なのか (終始変わらない品質には拍手)
どう見るかで違った感想になりそうなのですが、
どう受け止めたら良いものか 未だに判断が出来かねています。
一筋縄では括れそうにない作品ということに
するしかなさそうです …@-@
そいうことで これにて考察終了。 ふぅ
◇あれこれ
■ピンキー
ヒロインにとって唯一の救い。
老婦人ピンキーとの出会いは、大いなる救いでした。
この老婦人、ダンサーとして踊っている際に天井で回転する
扇風機(?)の羽で指先を切断する過去を初めとして、
色々な人生経験を積んできた女性でした。
そんな中でも、他人に手を当てることで安らぎを与えることに
生きがいを見いだしていたのが印象的。
■手つなぎ
そんなピンキーが仕事としていたのが、介護(といっていいのか?)
要介護者と手をつなぐ。ただそれだけのことを、
多くの人を訪問しながら実施していました。
人との接触の機会が少ない人間にとって、手を触れあうことが
どれだけ大事なスキンシップになることか。
手つなぎの場面は、作品を通してとても印象に残りました。
■カタツムリは
雌雄同体みたいです。へー
交配には相手が必要です。へー
パートナーとは互いに「雄にもなり雌にもなる」ようで
互いが相手との卵を産むのだそうです。 へー
LGBTの概念の、遥か上空をいく交配システムです。・_・:
人間もこうだと面白い…かはともかく、平等な結婚になるかも。
◇最後に
エンディングの最後のほうに出たテロップ。
” 片づけがヘタな ”おば” に捧げる "
確かこのような内容だったかと思うのですが
もしかして、この作品の作者って
双子の弟(ギルバート)の息子さんなのでしょうか?
そうすると、父の姉(=グレース=伯母)となって
片づけがヘタ に繋がるのですが…
実話に基づく話 もしくは
実話に基づいて創作した作品なのでしょうか。
うーん
この辺りは、余り詮索しないのが良いのかもしれません。
☆映画の感想は人さまざまかとは思いますが、このように感じた映画ファンもいるということで。
かたつむり🐌の話かと思ってたら違った
独自固有なデザインのストップモーションアニメ。
予告を見て、てっきりかたつむり🐌を擬人化して
ストーリーを組み立てているのかと思いきや、
人間のお話だった。
主人公のグレースと双子の弟ギルバートの
生誕時に母を亡くしているとの境遇がせつない。
でも父親が素晴らしいのだけれど、突然亡くなってしまう
ことにせつなさが積み重なる。
そしてグレースはいつも自分を守ってくれていた
ギルバートとも離ればなれに。
とまあ、いいことなんて全然ない感じなのだ。
里親の元で暮らす二人にもいいことはあまり起こらず
むしろそれが悲劇になっていく。
グレースの夫の性癖、ギルバートの里親の偏見、
そしてギルバートの死の報。
どれだけこの二人を落とせば気が済むのだ、
この監督は!‥と絶望的な気持ちで鑑賞していた。
…ところが、
ラストは超ハッピーなサプライズが!!
これには思わず「えっ!?」とおもった。
グレースがやりたいこと、それは映画を撮ることで
上映会をしていたところ、そこにはギルバートがきていた
のである。
もうこれで全部救われた気持ちになったし、涙が溢れた。
グレースの友達だったお婆さんのピンキーからの
死の間際のメッセージも良かった。
グレースは救われた。
全然こんな話だと思っておらず油断して鑑賞したが、
実に滋味深い人間ドラマであった。
アダム・エリオット監督、8年かけて完成してくれて
ありがとう。次回作にも期待しています。
ピンキーおばあちゃん
ほっこりしたストップモーションの話
かと思っていたが、違っていた。
双子の姉妹が幼少期に離れ離れになり
そこからが全体的に重い人生。
出てくるキャラクターが個性的。
ピンキーおばあちゃんが良かった。
カタツムリのような内向的な二人。
幸せも辛さもたっぷり。
『人生は後ろ向きにしか理解出来ないけど
前にしか進まない』
良い言葉だ。
カタツムリのように少しずつ前に向いて
欲しい。二人の揺るぎ無い愛のお話でした。
主人公の一人語りでお話しの9割は進行
ストップモーション・アニメーションの映画。
かなり面白かったです。
オーストラリアのアニメーションって、初めて観たと思います。
主人公の一人語りで、お話しの9割は進行していきます。
まるで主人公の自叙伝的な内容だけれど、完全なフィクションなのでしょう。
物語として、とても力があると思いました。
題名が伏線そのものになっています。
お話しの展開に悲しくなっていましたが、ハッピーエンドで、とても救われました。
キモキモな映画でしたが 笑えたわ。
恋人がデブ専には 驚いた。(☆o☆)
ウインナーをバクバク食べるところから 何かあるかもとは
思ったけど (^_^;
スウィンガーも 笑ったわ キモかったけど
丁寧に作られていて 素晴らしい
心に残ったのは「老人には 接触」が必要ってとこ
以前より 実践しています。秘密ですが...(^_^;
ハグもいいよねー。
二人の出会いも 織姫彦星的で 七夕にぴったりの映画でした。
タイトルなし(ネタバレ)
かたつむりが主人公の粘土アニメで、仲間の動物たちと協力して困難を克服するような動物映画だと思って、振替休日で休みだった小5の長男を誘って見に行く。すると、吹き替えじゃなくて字幕だし、全然子ども向けではなく完全にチョイスをミスった。
かたつむりが主人公ではなく、主人公はかたつむりしか友達がいない気の毒な女性で、その半生がひたすら暗い調子で描かれる。画面がとにかく暗いし、ともすればグロい。長男は怖がりでもあるため焦る。アダルトな場面やセリフもあって気まずい。
人間など所詮こんなものだと登場人物がひたすら醜く描かれる。人間を一切美化するつもりがないという美意識が徹底している。特にひどいのは里親で、醜いし、善良そうな人たちだがそれも否定的に描かれる。しかしその暗い目線と人生の中でも時折光が差すことがことがあり、見ているうちに同情も共感もする。
見ているうちに、この後どうなるの?みたいに引き込まれてハッピーエンドに感動して、見てよかったという気持ちになる。娯楽映画では全然なくてアート映画だ。終わってから子どもに感想を聞くと、字幕は全部読めたそうで、怖くも退屈もなかったようでほっとした。マクドでお茶して帰った。
タイトルなし(ネタバレ)
1970年代のオーストラリア。
グレースとギルバートは双子の姉弟。
母親は双子出産時に他界してしまった。
口唇裂のグレースは幼い頃から苛められ、ギルバートが助けるという図式が続く。
するうち父親も他界し、ふたりはそれぞれ別の家族のもとに引き取られることになった・・・
という人生を、十分に成長したグレースが振り返るという物語。
70年代というところがミソで、ひと癖もふた癖もある人物たちがわんさか登場する。
そんな彼らの、可笑しくも愚かしい行動の数々。
なかには腹立たしい行動もある。
つまり、憎めない人も憎むべき人も登場する。
好き嫌いが分かれるストップモーションアニメだと思うが、わたしは好き。
レトロな小物が可愛い
可愛さは求めていないが、商品パッケージとかミルクシェークメーカー?など、レトロな小物が可愛かった。
や、でも内容は全く可愛い要素はなくて。
結構リアリティが…あり過ぎ(笑)
子供向けと思ってファミリーで行くと大変かも。
紆余曲折あった2人の人生。
ようやく最後はめでたしめでたし、であった。
涙一粒も相当な労力だろうに
いい映画ではあるが基本、ちょっと悲しいよな。
主人公のグレースがずっと泣いてるのよ。小さな頃から大人になるまでのグレースの人生を描いてるんだけど、とにかく泣く。
あれ多分わざわざ涙用の透明な素材を目の部分に入れてコマ撮りで何度もちょっとずつ動かしながら涙を流してるんだろ。
かなり狂気よ。あの何度も流れる涙の表現だけで相当な労力のはずでマジで泣きたくなったはず。でも監督はあれをやりたかったんだろう。
グレースは双子の弟ギルバートがいました。母は双子を産んで死に小さい双子は大道芸人の父に育てられます。しかし父は車椅子になりやがて死に。双子はそれぞれ別の里親の元で育てられます。
グレースはヌードになりたがりな夫婦に引き取られ。友達も出来ずに引きこもりがち。かたつむりのように殻にこもって。図書館でボランティアをしていたことでお婆さんの友達ができます。やがて恋人ケンもでき、彼と結婚することへ。ようやくいい方向に行きそう。
一方の弟は磁石を体につけ聖書を読ませる胡散臭い家庭で育てられます。末弟とゲイな仲になった弟は義理母から悪魔に取り憑かれたと言われ変な装置につながれます。弟は逃げて教会に火をつけて教会の中で死亡。
弟の訃報を聞いた悲しみのグレースは寝込んで太ります。やがてグレースはケンによるデブ化計画の材料にされていたことを知りケンを追い出します。
やがてピンキー婆も死んでまたしても悲しみにくれるグレース。ピンキーが死ぬ間際にポテト!と叫んだことを思い出し菜園のポテトの箇所の土を探ると秘密の缶が隠されていました。中にはグレースへの手紙とお金が入っており。殻に閉じこまらず前に進んでというピンキーからのメッセージにグレースは心を打たれます。
グレースは夢だった映画学校に入学しコマ撮り映画を作ります。なんとそこに弟のギルバートが!彼は教会の火事から逃げ出していたのです。双子は抱き合い、父の遺灰を遺言どおりローラーコースターからまいて映画は終わります。
と、ストーリーを振り返りたくなるほど人生を描いてはいた。
冒頭、様々な小道具の山を映していく。全て手作りのこだわり。便器の蓋など様々なモノにスタッフ名が記載されており洒落たオープニングロールになっている。
この冒頭のワクワク感に比べると本編は割と辛気臭い。グレース泣いてばっかだな、という印象。
そして意図的であろうがグレースの世界観が狭い。かたつむりだらけの自分の部屋以外ほぼ学校か図書館。おそらく監督自身の人生が反映されているのだろう。あと、色々な場所を作るのが大変だったから舞台を絞っている可能性もある。
もうちょっとファンタジーで楽しいものにもできたんじゃないかとも感じた。でも8年かけてこれを完成させた、という監督の情熱はうらやましくもある。
理不尽の連続に心疲れた
1970年代オーストラリアで、世の中の理不尽に翻弄され、心を閉ざす主人公グレースが、心を取り戻すまでの物語。
描かれるのはブラックジョークで塗りつぶされ、差別と暴力と性的非道に満ちた世界。
まずはグレースが自らの命を棄てようと葛藤する中で、過去を思い出すモノローグの形で生い立ちが語られる。
子ども時代のグレースは唇の上が少し裂けている口唇口蓋裂で、その手術のせいで笑い顔が不気味になり、いじめの対象になる。
双子の弟・ギルバートが身を挺してグレースをかばい、優しい父に慰められ、それなりの幸せの日々だったが……一転。
父が睡眠時無呼吸症候群から心不全で突然死したあと、双子の弟とは別々の里親に引き取られることになってしまう。
グレースの里親となる夫婦はスワッピング趣味でヌーディスト村で乱交するため常に家を離れて子供を放置(ネグレクト)した結果、グレースは引きこもりと強迫的ためこみ症と過食に走る。
不幸は次々にグレースを襲う。
弟のギルバートはキリスト教原理主義者夫妻に引き取られ、強制児童労働と虐待を受ける。
同性愛者だったギルバートは電気ショックなど「転向療法」という拷問を受け、教会の火事によって焼死を装って殺されてしまい、グレースの元に遺骨が送られてくる(実際のギルバートは死を偽装して逃げ出したのだけれども)。
傷ついたグレースは隣人のケンと恋に落ち、やがて結婚するが、実はケンは肥満女性フェチで、グレースを過食に誘導する悪意の持ち主であることが判明し、離婚する……
グレースにとって心のよりどころは、図書館のアルバイトを通じて知り合った、楽しい老人ピンキーだけ。
彼女の優しさに触れ、少しずつ心が癒されていくが、やがて老いたピンキーに死が迫る…
というのを、ポスタービジュアルにある人形を使ったストップモーションアニメで延々と見せられたわけで。
最後はある種の解放と安寧を得られて、感動するものの、そこまでに与えられるストレスの大きいことといったら。
心が疲れた。
かたつむりは、母のコレクションを引き継いだ以上に、グレースの閉じた心を表す暗喩であり、また雌雄同体であることでグレースとギルバートはクィアであることを示し、またゆっくり歩みを進めながら歩いた跡が残る生き方をしていけばいいということを喩えたなど、複数の意味を持つ存在として描かれているのかと想像しました。
ビターな大人向けの寓話。「かたつむりの歩みは遅いが後戻りはしない。歩いた跡を残すだけ。」
ビターな大人向けの寓話。
かたつむりの歩みは遅いが後戻りはしない。歩いた跡を残すだけ。両親を亡くした双子の兄妹はべう別の里子に出され、兄の里親は新興宗教教団で虐待、妹が付き合った男は脂肪フェチで別離、という何とも暗く悲劇的な展開。
クレイアニメで全体の色彩のトーンがブラウンで暗めなためさらに重く感じる。
同じ地味でも、もうちょっと明るく単純ないい話を想像してましたが、今の世の中、甘かった。
主人公が内気で溜め込み症で小太りだから、感情移入しきり。
前時代的な悲劇より、もっと身近な生きづらさにフォーカスしてもらったら良かったのに。
年の離れた親友のおばあさんの言葉で一念発起し、長年の夢だった映画学校に入りストップモーションアニメを作り始める。
ハッピーエンドで本当に良かったとしみじみ思う。
造形が素晴らしい
造形が素晴らしく、冒頭から見入ってしまった。
アードマン作品が大好きなのもあり、クレイのストップモーションアニメは、それだけで大体好物、あとはストーリー次第です。
全体的に暗くて気が滅入るが、ユーモアがあって救われる。
グレースの独白で話が進み、テンポは悪くないので飽きずに最後まで観ていられた。
未熟児で口蓋裂、出産で母を亡くすなどグレースには生まれた時からマイナス要素てんこ盛りで、いじめられ、生活力はないが陽気で優しい父は目の前で亡くなり、自分を守ってくれる弟ギルバートとは引き離される、ようやく出会った男性はデブ専で太っていればだれでもよいっていう。引け目ばかりでネガティブなのは分かるが、グレースの視点なので描かれ方がずっと「被害者」的、ナレーションが自己憐憫ばかりのようで、あまり良い感じがない。
グレースの心の支えが攻撃の術を持たず、もの言わず常に重荷を背負っている「かたつむり」というのもなんとなく被虐的だし。しょっちゅう泣いているし。
助けてもらうがお返しは「できない」だってアタシは弱くて無知で何もできない、自分のことだけで精一杯よ、って。
こういう人いるんですよね、程度はあるのでしょうがないこともあるが、いつも助けてくれたギルバートだって弱くて何もできないはずだけどあなたを一生懸命守ってくれたじゃないの、って言いたいところはあった。
でも、「自分が浪費していなければ、ギルバートに会いに行く旅費は何回分でもあった、会いに行けた」と気づいて泣きながら反省する部分があって、作者がグレースの思考を全面肯定しているわけじゃないのが分かって物語の見方が変わりました。
ピンキーが最高。
変人だが人生を楽しむことを知っている。実は生まれたころから辛酸をなめてきて到達した「生き方」だったよう。なので人の本質を見抜くし、心の機微を理解して限りなく優しい。
グレースに手を差し伸べてそっと見守る、一緒に人生を楽しむ。他人の目なんかどうでもよろしい、自分の人生だから。これをするには、所有物が多くないほうがいいなと思った。住む家があって庭で作物をつくり、移動には元夫が残したぽんこつバンがある、そしてグレースという相棒がいる、人生最高じゃないの、という生き方。
ピンキーがアルツハイマーになった時、グレースは逃げない。
ベッドに逃避しようとせずに、ピンキーをいたわり面倒をみて、看取る。
いつの間にか、ピンキーに生きていく活力ももらっていたよう。
ピンキーが彼女に遺したものは、クッキー缶のお金だけではなかった。
ギルバートの過酷さに気が滅入る。こんな子供は実際には数えきれないくらいいるんだろう。
そして、ここにもLGBTQ。
時代の要求のせいかと思ったら、監督自身がゲイで、ずっとマイノリティを描いた作品を撮っていたのだった。
ラスト、グレースの作品の上映会の客席で目立っていたイケメンと何かあるのかと思ったら。
ギルバート、生きてるんじゃないかと思ってはいたが、生きていて良かった。あれで終わったら悲惨すぎて嫌になる。しかるべきところに養両親の虐待の数々を訴えたら証拠が続々でてくるだろうし末の弟は証言してくれそう。
また、助けた浮浪者が判事に復帰して今度はグレースを助けてくれたのも、情けは人の為ならず。彼女の自主性を後押ししているよう、人生は捨てたもんじゃない。
人物は「ナイトメア・ビフォークリスマス」に似た感じの画風だが、それ以外の小物や背景が呆れるほど作りこまれていて恐れ入る。細かいところをもっと見たい、それだけでもずっと見ていられます。
【”怒涛の如く不幸が襲って来ても、生きていれば奇蹟は起きる。”今作はクレー人形を使う事で、温かい質感が伝わる人生肯定ストップモーションアニメーションである。】
■学校で苛められているグレースは、母を双子のギルバートと彼女を産んだ時に亡くし、お茶目な父も母を亡くした寂しさからアルコール依存になり無呼吸症候群で亡くなってしまう。ギルバートは学校でグレースを護っていたが、父が死んだ事で二人は別々の里子に預けられる。
ギルバートの里親のルースは、怪しげな宗教団体を営み、彼はそれで大変な目に遭う。一方、グレースの里親イアンとナレルはフリーセックスを愉しむヤンチャな夫婦で、グレースは図書館で出会ったピンキーお婆さんと仲良くなる。
◆感想<Caution!内容に触れている・・かな?>
・ストップモーションアニメが好きである。特に温かいトーンの作品が好みである。「ぼくの名前はズッキーニ」は二回劇場で観たなあ。吹き替えと原語と。
今作も、クレー人形を使う事で、温かい質感が伝わって来る作品である。
が、後半までは結構シビアな展開が続くのだが、随所でブラックユーモアや、エロティックな台詞も入る不思議な大人も楽しめる作品になっているのである。
・グレースの人生は、マアマア大変だ。恋人ケンが出来たと思ったら、デブ専で密かにグレースを太らせて写真を撮って居たり。良いのかなあ、クスクス。
<そして、仲良しのピンキーも老いて認知症になってしまった時に、彼女が叫んだ言葉”ポテト!”
ピンキーは自分がボケた時の事を想い、グレースのためにジャガイモ畑に大切なメッセージを入れた金属箱を埋めていたのである。
その中の温かき手紙を読んだグレースは、溜め込んでいたガラクタを整理するのである。そしてそこにやって来た、死んだ筈のギルバート・・。
そして、二人は再び、同じ家で幸せに暮らし始まるのである。
今作はクレー人形を使う事で、温かい質感が伝わる人生肯定ストップモーションアニメーションなのである。>
金継ぎ
先行上映会にて鑑賞。
アダム・エリオット監督の舞台挨拶もありワクワクしていました。特典はポストカードでした。
全て人の手から作られたストップモーションアニメという事で、その手作り感が最高で、尚且つストーリーはかなり悲劇的なものというギャップもとても良かったし、じっくり考えさせられもしました。
序盤からハードな展開をお出しされ、少し早く生まれてしまったがために口唇裂で生まれたグレース、出産後に母親は亡くなってしまうという出生から残酷、少しだけど確かな希望の後にガッツリ絶望を見せる展開をお出ししてくるので気持ちはズンと沈んでしまいました。
弟のギルバートが心の支えになっていたのが本当に良かったですし、父親と3人での読書の時間やヘアスタイル大会の時間、遊園地に行ったりとする時間が幸福度に満ち満ちていました。
父親の死後、ギルバートと離れ離れになってからは喪失の連続のグレース、ギルバートも里親の元で厳しく躾けられたりと踏んだり蹴ったりの展開には辛く悲しいものが溢れていました。
ただ中盤から登場、序盤にびっくりさせられたお婆ちゃんのピンキーがとてもファンキーなんですが色々な行動パターンを見せてくれて笑いをたくさん誘ってくれました。
過去の結婚だったり、現在の仕事だったりを傷心のグレースと共に色々と行動を起こしてくれますし、常に寄り添ってくれている元気さがグレースにとっても観客にとっても安心感を与えてくれるので本当にほっこりしました。
その後の展開も山あり谷ありといった感じで上手くいくよりも上手くいかないことの方が多く、心も体も弱っていく様子は中々に辛いものがありました。
追い打ちをかけるような展開も多なった中で、序盤のシーンとバチっと繋がってからの急展開でおっ!とさせられました。
終盤の展開はこの手の作品にしては珍しいものになっており、監督もそこを強く意識して作ったとおっしゃられていたのでなるほどな〜となりました。
あらすじをサクッと読んだ程度で本作を見たので、性的描写やグロテスクな描写も多く盛り込まれていたのには驚きました。
グレースが男性を欲する様子だったり、里親がヌーディストビーチに行ったり乱行パーティに行ったり、しっかりと初体験と描写されたりとアニメーションが独特なのも相まってより欲に対する感じがリアルだなーと思いました。
指が切れたり、歯を元に戻す様子だったり、事故の様子だったり、これも生々しさがあったりとで目を覆いたくなるシーンもいくつかありました。
監督がいきなりユーモアたっぷりの登場をしてくれて、日本にも何度も来日してくださってるという事が嬉しかったですし、監督の映画に対する熱い思いに感銘を受けましたし、アカデミー賞の授賞式よりも観客とのQ&Aの方が楽しいっていうのにもフフッとさせられました。
手作りのセットで用いられた小道具たちも捻りがあって面白く、特に涙のところは翻訳される前に正体が分かって笑ってしまいました。
質問コーナーが限られていたので、したかった質問はできなかったんですが、もしできたのならば金継ぎという日本の文化が出ていた事がとても気になり、監督が今作に取り入れたかった、もしくは次回作以降で取り入れたい日本の文化や催し、監督の好きな日本食なんかを聞いてみたかったです。
監督がおっしゃられたように、日本でも春から全編AIを駆使したアニメが放送されるのですが、やはりまだAIでは違和感が満載、作り手の愛が伝わってこないというのも相変わらず致命的ですが、監督の手作りに対する拘りと愛はいつまでも続いていって欲しいなと思いました。
日本での全国公開も楽しみです!
鑑賞日 3/18
鑑賞時間 18:30〜20:37
座席 K-1
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