劇場公開日 2025年3月14日

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「世界中のクリエイターに、楽しさと共に夢と希望を与えてくれる一作」Flow yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 世界中のクリエイターに、楽しさと共に夢と希望を与えてくれる一作

2025年7月27日
PCから投稿

前作『Away』(2019)と同様、絵本のように美しい映像で、不思議な世界を旅する過程を綴っていく作品です。

主人公の黒猫の挙動がとにかくかわいく、ギンツ・ジルバロディス監督の故郷、ラトビアにこの黒猫の像が作られた、というほど愛されるのも納得。

動物たちの描写はどちらかというとリアル寄りで、アニメーションとはいえ動物感はかなりのもの(とはいえ適度な擬人化も施していますが)です。人間が一切登場しないため、もちろん人語の台詞もないのですが、それだけに微細な所作まで見入ってしまいます。「Blender」というソフトウェア(使うだけなら無料という…)で緻密に作られた映像は、動物たちが歩き回る姿、水の流れなど、細かなところまで観察し甲斐があります。

ある種崇高さを感じるような展開になっていくところも『Away』と似ている、というかゲーム『風ノ旅人』や『Sky』をも連想させます。

こんな独特のアニメーションを、ジルバロディス監督と20名足らずの制作スタッフと『野生の島のロズ』(2024)の数百分の一程度であろう予算で完成させ、なおかつ第97回アカデミー賞において長編アニメーション賞を獲得したのは紛れもない快挙。

世界中のクリエイターが一度は描くであろう夢を実現させた制作背景自体が、作品と同様、あるいはそれ以上に夢と希望に満ちています。

『Away』では少年の一人旅を監督がほぼ単独で作り上げ、そして本作においてスタッフとの協働で黒猫と仲間たちの冒険を編むという、物語と監督の状況が見事に重なり合っているところも胸熱!

yui