劇場公開日 2025年3月14日

「不思議な世界だけど、なんか良いですね。」Flow 琥珀糖さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0不思議な世界だけど、なんか良いですね。

2025年7月18日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

ドキドキ

ゆったりと身を委ねていると、
黒猫の不安、怯え、が伝わってきて、ハラハラドキドキしました。
数々の苦難。
人類がいなくなって水没してしまった世界に、
生き残ったのは、さまざまな動物たち。
1匹の孤独な子猫が次第に仲間を、友達を作っていく過程・・・
ゴールデン・レトリバーのワンコ、
見守ってくれるヘビクイワシ、
鏡の大好きなワオキツネザル、
5頭が仲良く寄り添っているラストは、
「仲間ができたんだね」と、
黒猫ちゃん、“良かったね」と安堵しました。
もちろんその後を考えると、手放しで喜べる話ではないけれど、

大変な冒険でしたねー。
飼い主の森の中の家はもぬけのから、
ご主人夫妻の姿は影も形もありません。
スケッチブックと、庭や森に残された、
彼らの制作したらしい
かなりの数の彫刻像・・・巨大な猫の銅像だったり、右手だったり、

いったいここはどこで、いつの時代で、
何が起こったのだろう?
台詞も全くありません。
ナレーションもない、
わずかに時々入る状況を表す音楽、
あとは自然の音、
(風だの、雨だの、梢の音だの、
そして動物たちの声、
(鳥の鳴き声、羽音、犬の吠え声、
そして黒猫ちゃんのさまざまな、
怯えたような、助けを呼ぶ真に迫ったなき声、
動物は話さないのだから、擬人化して話す方が
本来、間違っていますが、
想像力を目一杯試される感じです。

黄色い帆のヨットは、大事なアイテムでした。
5頭が集う場所、
黒猫を助けて羽を折られたヘビクイワシ、
ラストでも黒猫を助けて、天に召されてしまいますが、
このシーンは壮大で神秘的でした。
大嵐で投げ出されてシーラカンスの巨大化したようなクジラの背で
助かった黒猫。
ヨットは崖から程近くに打ち上げられて、ボロボロ。
空中にぶら下がっています。
ヘビクイワシ、レトリバー、ワオキツネザルは飛び移れたけれど、
体重の重いカピバラは、飛び移れません。
4頭がロープを口に咥えたり、引っ張って、
必死でヨットを崖に近づけて、
カピバラはようやっと陸地におります。

それにしても、なんと言う冒険‼️
水没した古い高層建築、
ベネツィアのように運河を渡るヨットの真横に
コンクリートのビルやホテルらしき建物、
シンガポール、ベトナム、中国も?もしかして?

かなりの月日の冒険で、細っこかった子猫の筋肉はアスリートのように
盛り上がっています。

ご存じの通り、ディズニーやピクサー、ドリームワークスのアニメ映画を
尻目に、たった50人のスタッフで作った「Flow」が、アカデミー賞
長編アニメーション賞を受賞しました。
ラトビアの監督さんは、16歳からたった1人で制作していたそうです。
この「F low」は、3Dアプリケーションの「ブレンダー」を
使っているそうです。
「ライオンキング」などに比べれば、動物の毛並みや、
顔の細かい動きや表情は細かく描かれていません。
予算と人数・・・でしょうね。でも心の中は、
伝わります。
自然の光景、描写は本当素晴らしい。

地球温暖化で水没した地球、
人類は絶滅しても、動物たち、鳥、そして魚、
花々は栄えていくのでしょうか?
奢れるものはものは久しからず・・・かな?
人類への警鐘かもしれません。

琥珀糖