劇場公開日 2025年3月14日

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「架空の話で終わればよいのだが」Flow 守井 象さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 架空の話で終わればよいのだが

2025年3月20日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

最初に想起したのはPeter Gabrielの“Here Cones the Flood♪”だった あそこまで壊滅的ではないが、共に際限なく寂しい
 むしろ初期のサバイバルゲーム= トゥームレイダーの世界観に近いのかも(基本的にはビデオゲームをしないので詳しくないけど)  その世界でも寂しげな古代遺跡から一人きりでの生還を目指しており、その突き放された寂寥感には病みつきになり得る不思議な魅力もあった
この映画は異世界=人類が滅んだ後の廃墟を辿る、猫になった自分がコントローラを持たないで成り行きに身を任せるゲーム体験なのかも....架空の話で終わればよいのだが

 猫•犬•猿•鳥•齧歯類‥‥動物達は敢えて低ポリゴン風にモデリングされている 背景との対比を強調したいのだろうが、狙いは不明 差別化の方策?
 彫像•家•舟•船•巨大風車‥‥文明の痕跡はあれど人間はいない 『ロズ』と違い言葉もない そりゃそうだろう
 猫巨像、巨大鯰?とか、塔頂から鳥が天上へ招かれるシークエンス等の意図は不明のまま
この終わり方だったらこの長さが限界だったろう

 劇場から帰宅して見た国際ニュースが、見てきたばかりの大洪水という不条理のリアリティーを再現していた....
▶︎イスラエルは停戦合意後、爆撃再開4百人超の一般市民虐殺
▶︎無理筋の旧法を用いて外国人国外追放を挙行するトランプに待ったをかけた連邦地裁←弾劾指示するトランプ←それは非合法と最高裁長官
▶︎戦況優位のプーチンが停戦案に難色
▶︎当映画監督母国=ラトビア含むバルト三国が対人地雷禁止条約•クラスター弾禁止条約から脱退(非人道的だとは百も承知の苦渋の決断) ポーランドもフィンランドもこれに続く見込み
 ....これらはかつてソ連の毒牙にかけられた国々 艱難辛苦の末勝ち獲った自由•主権•領土を実在する悪魔から守らねばならない ロシアに隣接する旧ソ連衛星国は際限なきストレスに晒され続けている
 果たして日本は高見の見物を続けられるのか、という悪夢の寝入り譚

守井 象