「想像力の無限の拡張!観る瞑想!」Flow Duchampさんの映画レビュー(感想・評価)
想像力の無限の拡張!観る瞑想!
普段、映画を一元的に何も想像せずに観てるな〜、と実感。
この映画は、セリフもなく、答えを説明してくれないので、『この場面にはどんな意味があるんだ??』とか、終始自分で想像するしか無い。
しかし自分が普段観るようなハリウッドの娯楽映画では、台詞や画で見方を示してくれるが、想像力が入る余地など更々無くなってしまう。
本作の”想像”体験は、稀有なものとして心に深く刻まれる。
この映画には人間が出ず、動物しか出てこない。
個性的な主要キャラ、
レトリーバーもワオキツネザルもカピバラも鳥も、主役の黒猫も、人間のような仕草をするが、ディズニー映画のように喋ったりはしない。
モデリングのクオリティは、近年のハリウッド映画(それこそアバター2)と比べたら雲泥の差。
しかし、説明しない・描き切ら(れ)ないことでこんなに想像力を掻き立てられる映画が出来上がる!
特に動物達の動きとカメラワークは丁寧で、全くノイズにならなかったし、セリフのないこの映画では効果的に演出だと思う。
冒頭、黒猫が犬に追われるシーンからの洪水シーン
は圧巻。
動物より雄弁なのは情景。特に水の表現。
水面の下に見える白い花の美しいこと。
カメラが殆ど固定されず、画面の奥へ行くシーンが多いから、映画というよりオープンワールドのゲームのようにも見える。
劇中何度も水面と鏡を見るシーンがある。
世界は広がってるが、自分の中も同じように広がってる。自分を見つめろ(瞑想)、ということなのか?
しかし最後で鏡が壊れる。
自分でなく外を見ろ、とも受け取れるが、鯨クリーチャーが死んだら、皆で水面をじっと見つめてエンドになってしまう。
世界と自分も両方見つめろ、と捉えてしまったが、正直それも野暮な解釈な気もする(テーマ主義的、一元的な解釈をさせないよ、という作り手からのメッセージ?)。
正直アバター2の何倍も想像力を掻き立てられる稀有な映画。
答えがないことを楽しむ、稀有な映画体験。