劇場公開日 2024年12月7日

どうすればよかったか?のレビュー・感想・評価

全100件中、21~40件目を表示

3.0無意味な人生をみた

2025年1月25日
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ひどい言い方だが、圧倒的に無意味な人生をみた。しかも、一人の人生が親という他者に無意味にされるということ。

戦争や無差別殺人など、他者によって無意味化された人生は現実の世の中にはたくさん存在すると思うが、それを統合失調症を治療できないという特殊な状況によって無意味化された一人の人生を映像として残すことで、人生がドラマ性を帯び意味をもったかのように感じる。

人間は意味あるものに安心するし、映画なり音楽なり表現物というものは、物語や音があり、主役や旋律があり、強い意味のあるものが通常だと思いがちだ。しかし、意味不明な表現物もたくさん存在する。実はそっちの方が普通ではないか?この映画がそれだ。現実は無意味なものにあふれているということ自体を再認識させられる。当たり前のことである。ただ、無意味さは怖いし、悲しい。

両親は、娘を家で守ることが、自分たちにとって意味あることと考えていたが、自分の子供は自立した他者であるという感覚が著しく欠如していた。自分では気づいていなかったようだが、彼らからは無意味さや悲壮感のオーラがすさまじく漂っていた。

医者であれば、当然精神疾患や統合失調症というものが世の中に存在することは知っていたはずだが、見て見ぬふりをした。意味不明であるが、この意味不明さが、娘の無意味な人生となって現れた。意味不明な行動は、無意味さとつながっている。

その無意味な現状をカメラにおさめるという行為もよくよく考えて意味不明である。カメラにおさめるのでなく、無理やり病院につれていくというのが常人が考える意味ある行動であり、理解可能な行為だからだ。それをせず、意味不明にカメラで無意味な姉の人生を撮り続けた。弟の監督には、なぜ姉を病院に連れて行かず、カメラで撮り続けたのか?ぜひ教えてほしい。病院に無理やりつれていくという簡単に答えが出せそうなことに、答えを出さないという意味不明さが、映画という表現物になると売りになってしまう。なぜどうすればよかったかをとったか?と題して第二弾を公開することも可能だ。そっちには、意味がありそうだし、ぜひその意味を知りたい。

無意味な人生を意味不明にカメラにおさめたら意味不明な表現物として無意味という意味を獲得した。でもそんな意味不明なことをするとその先には無意味という呪いが待っていそうで怖い。監督はこの映画を意味あるものにしないと正気ではいられなくなるのではないか?心配である。

と、まあいろいろ思ったのですが、純粋に映画作品として観るならこういうきついこともいえてしまうのだが、他人様の家族の話であり実話という認識をもつなら、やはり単純に病院につれてけばよかったという話しではなく、他人が計り知れない事情があったと推察しなければならず、人様の家庭や人生に対しずけずけとしたことは言わないほうがいいという節度が必要な部分もあり、この映画について書くにはどうすればよかったか?となってしまう難しさがある作品である。

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屠殺100%

3.0「どうしてほしかった?」が気になった。

2025年1月25日
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この作品をみて、「考えさせられる」とはあまり思いませんでした。撮影者であり家族の長男である監督は姉を「医者に診てもらって入院させるべき」という意見を持ち続けていたが、両親は姉を家に居させる方針で納得しており、意見の異なる両者の間で監督は両親が「もっと早く病院に連れて行くべきだった」と言うのを期待して「どうすればよかった?」と問うているように見えました。

統合失調症の方の家での様子や薬を処方した後の変化、そして家族の容姿の変容から30年という時の経過をまざまざと見ることが出来たのはまさしくドキュメンタリーで、印象的でした。私にとってはこの一人一人の「老い」を観ることができたのが一番の価値でした。他の方々の感想の中には「彼女の20年を無駄にした」などあるが、そんな簡単に人の人生のある期間が無駄だったかどうかを他人が判断できるものではないと思いました。現代で精神疾患と定義されるもののうちで治療(周りと同じ状態にする)が出来うるものは治療しないとその人の人生は無駄だ、とは思いません。統合失調症の薬が開発される以前、あるいは統合失調症という症状が定義される以前に同様の様態を示していた人々あるいはその周囲の人々は不幸だったのか疑問に感じます。

強いて言えば、薬を処方され会話できるようになった姉に「どうしてほしかった?」と問うた時にどのような返答があったのか気になりました。この姉は両親を恨んでいたのでしょうか。

もし自分の姉が統合失調症を発症したらどうするか。多分病院に連れていくような気がしますが、それは「姉の幸せのため」ではなく「自分のストレスを減らすため」だと思います。

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にち

4.0答えはでているのだ

2025年1月24日
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統合失調症を発症した姉と取り巻く家族を20年間近く追ったドキュメンタリー、というだけでなかなか類を見ない作品なので一見の価値はありだとは思います。
これを「考えさせられた」と安易に言うのは違うかな。特異な環境に置かれた家族のケーススタディとして同じ轍を踏まないことへ、考える余地を探すことの大切さなのかなと感じました。理解のない時代は、惨い仕打ちを受けていただろうに。
治療を受けることよってにお姉さんの具合が本当に良くなっているのがわかる。医療は先に進んでいるのですね

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うっか

4.5どうすれば良かったのか?

2025年1月24日
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悲しい

難しい

もっと早く治療が出来たのではないか?
幸せとはどうゆう事なのか?

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こえん

5.0まさにどうすればいいか

2025年1月24日
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悲しい

知的

統合失調症の姉の半生を中心に家族を撮ったドキュメンタリー
精神疾患は他の病気と違い、患者本人だけを診るのではなく親子関係や環境が深く関わってくるため、患者だけを診ても治療にならないどかろか、適切な病名も判断できない。
家族それぞれが異なる考え方をする中で、一歩を踏み出せないまま時間だけが過ぎていく
しかし、それが正しかったかどうかは、本人も家族もそれぞれに違う捉え方をしていたに違いない。
視聴者を含めて、誰もどうすれば良かったか?答えを出せない作品

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卵かけご飯

3.5わかって言ってる。

2025年1月23日
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上映100館超え、興行収入1億超えだそうだ。
レビューがむずい。
昔のビデオ機なんで絵、特に音が悪い。それでも強烈な20年間の変化の記録。撮った本人と親の揉めてるシーンはないがインタビューを見るとかなり親と戦ったようだ。で映像の勉強と言う名目で始めた闘病と介護の記録。
そしてどうすればよかったのか?と言う問いが母と父、そしてこの作品を通しておそらく自分自身にも。

きっと親を恨んだ時もあっただろう。
研究職に就く両親に従った自分の責任も感じてるだろう。あの時病院に連れて行っても姉に合う薬は当時あったのだろうか?

母は父がと言い、父は母がと言う。
彼も結果それに従ってしまった。
3人とも何かミスったんだな。
唯一記録映像を撮るという行為で争い、僕らに問う。
どうすればよかったか?

そういう家族の失敗の記録です。

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masayasama

4.0失敗じゃなかったと思う

2025年1月23日
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それにしても最後の問いかけは重たい…
正解はきっとない…
逆に頼り切って、薬漬けにして、大人しくさせておくことも幸せとは言えない。それぞれの家族の環境、状況、時代、社会情勢、価値観、世間体、財力、支援体制、社会資源の理解力、保証制度活用、タイミングなどでも変わってくる。障がいのある方も社会の中で社会の一員として自立して生活していく、言葉で言うほど簡単なことではない。そして日本はまだまだそこまで成熟した社会にはなっていない。しかし家族内で完結するのでなく、本人だけでなく、家族も含め包括的に支援できる社会になってほしい。などなど新年早々、立ち見満席の劇場で悶々と思った次第です(^^;;

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shige12

4.0家族という小宇宙

2025年1月23日
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東京で凄く観客が入っているという事を耳にして、映画系のYou tubeのサムネも沢山挙がっていたので気になっていたのですが、大阪で公開されているのを見つけ早速見に行ってきました。
で、この作品の作り手は、この作品を多くの人に見て貰いたいとは思っているとは思いますが、多くの人達の意見を求めている様な気はしませんので、出来るだけ手短に感想を書きたいと思います。

本作は見る前に簡単な内容の解説は読んでいてドキュメンタリー映画という事も分かっていたので、ある程度の心構えをして見たのですが、やはり見ていて一番感じたのは“切ない”って事ですかね。
タイトルの意味は映画の冒頭で直ぐに理解しましたが、これは問いかけではなく叫びなのだと思います。
あと、このタイトルは作り手の決意でもある訳で、本作を撮る事への自分自身に向けての言葉でもあり、ラストの父親との対峙に対しての気持ちだったように思える。
恐らく多くの鑑賞者はこのタイトルの言葉に引っ張られるとは思いますが、もしも同じような状況の家族が百あれば、百通りの違う答えがあるのだと思いますし、他者(観客)がこの家族へ向けて真剣にこの答えを考えるのは、作品の意図とはズレる様な気がします。
恐らくこのタイトルは、観客自身それぞれの家族を見つめ直すという意味に繋がるのだと思います。
この作品を見て作品内の藤野家に対して観客がとやかく言う事は何もないのですが、ある一家の普通なら絶対に見れない日常を垣間見ることによって、自分と家族を見つめ直す大きなヒントを戴いたような気がしました。
なので、上記を繰り返しますが作り手も観客の作品の感想を求めているというよりは、観客に本作を見て貰い自身の家族を考えるキッカケになって欲しいという事を願って公開した様な気がします。
赤の他人の人生(生活)などあまり見たくはないが、しかし絶対に一度は見ておくべき作品という種類に位置する作品だとも思いました。

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シューテツ

3.5100館超に拡大…だそう

2025年1月22日
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公開時から静かに話題、数少ない上映館では満席が続いていた本作。年明け最初に観るべき作品か?とは思ったが、新年2日からキネカ大森はけっこうな客入り。統合失調を発症した姉に対して、終始たんたんと穏やかに語る父親はそれはそれでサイコっぽさを感じさせるし、認知症を患ってからの母親の言動は姉と大差がなくなっていくし、そもそもこの家族の状況をカメラで追い続け世に晒し出す監督本人もどういった心持ちなのか…。正直、身構えるほどの衝撃はあまりなかったのだが、怖いもの見たさを期待していたオレもオレでどうなんだ?という気になってしまった(爆)。

タイトルが投げかける質問については、精神疾患に対する世の認識が多少なりとも進んだ現代なら適切な対処法をどうとでも言える。が、40年前の発症当時の精神医療にどの程度の実効性があったのかや、疾患・障害に対する(今でもさほど変わらない)周囲からの視線を考えると、両親が(優秀な研究者だったが故に?)姉の疾患・障害を認めず隠蔽し続けたことを責めたてるのはしんどい。結局、そんな居心地の悪さを少しでも解消するために、家のなかだけで抱えきれないことはより大きな社会単位で包摂していくしかないのだ、とあらためて考えた一作だった。

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ジョンスペ

4.5貴重な記録を見れてよかったと思うけど、見る側へのダメージも相当きつ...

2025年1月21日
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貴重な記録を見れてよかったと思うけど、見る側へのダメージも相当きつい。監督の落ち着き、優しさが救いだった。姉弟愛の映画でもあった。

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通行人

4.020年の記録はそれだけですごい。内容とは関係ないが、冒頭、どこか見...

2025年1月20日
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20年の記録はそれだけですごい。内容とは関係ないが、冒頭、どこか見慣れた風景だったのが驚いた。

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ghostdog_tbs

3.5息苦しかった

2025年1月19日
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淀んだ実家の空気感。
話の通じない両親。
既視感しかなくてツラかった。

私は実家と距離を置くことで生き延びてきたけれど、監督のように人生を懸けて向き合うことで生きられる人もいるのだろう。

様々な場所でこの作品を基にしたディスカッションが起こるといいと思う。
監督が両親から聞きたかった言葉は聞けなかったかもしれないけれど、この作品が評判になって意見が交わされることで世界が変わるかもしれない。

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てら

2.0どうすればよかったか?

2025年1月18日
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難しい

私は統合失調症経験者です。私の経験をお話しして統合失調症の理解とどうすればよかったのかの私なりの意見を述べさせて頂きます。
詳しい事情を話すと長くなるので省きますが
2度の発症、入院をいたしました。入院は各1ヶ月づつです。父は治療はさせてくれましたが親戚等には病気の事を隠しました。また薬が効き一見正常に見えるともう治ったものと思い私を家から追い出しました。病院の先生は遺伝による原因が有るとおっしゃいましたが 私は誰しもがストレスを感じると、発症する可能性が有ると考えます。症状は人それぞれです。ごく軽く一見ちょっとおかしな人程度に見える人もいます。今回の映画のお父さん お母さんも少なからずかかっていたのでは?まず すればよかった事はお姉さんに薬を飲ます事です。統合失調症は脳内科学物質の異常分泌です。薬を飲めば割と直ぐ収まります。その為にはお父さん お母さんのカウンセリングを受けさせ、お姉さんの診察を受けさせる。もしくは、弟さんがお姉さんの映像を医師に見せ診察を受けさせられない事情を理解して貰い診察出来なくても薬を処方してくれる医者を探す事です。北海道という地理的にもかなり難しいとは思いますが やるべきです。またお姉さんに、あれこれ質問してはいけません。私の担当医は行くと薬飲んでますか?強迫観念はありませんか?だけです。診察は1分もかからず終わります。私の場合 父に追い出され、1人になり薬を飲み続けたのは良い事だったかと思います。薬は25年間飲みつづけ最近やっと普段は飲まず、今日はテンションが、高いなと思った時だけ飲んでいます。まだ通院は続いています。また気をつけなければならないのは食事です。本人任せにすると不健康極まりない事になります。誰かがちゃんと野菜中心で、栄養のバランスが取れているか気にかけてくれる人が必要です。でないと免疫力が落ちて病気になりがちです。私も乳がんになりました。今は 統合失調症のコントロール 乳がんも克服し、起業して幸せに暮らしています。それには長い時間が掛かる事を覚悟して下さい。もう一度いいます。誰しもがストレスにより掛かりうる病気です。

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ゆき

4.0お姉さんが笑ってて良かった

2025年1月18日
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映画館を出た時は、誰も救われない話だ、と思って胸が痛くなった。

でも、最後にお姉さんが穏やかに笑ってて、良かった。
お姉さんは弟が好きなんだと思う。

帰る弟に笑顔で手を振って見送る姉。
カメラを向けるとおどけてみせる姉。
具合が悪い時でも弟には怒鳴ってないように見えたし
答えられる時には答えてた。
母に対する特別な感情も弟の前では口にした(みたい)。

どうすればよかったのか、は第三者への問いではなく
当事者が問い続けてもどうにもできなかった日々そのもの、なのかな。
当事者は監督だけでなく、父も母も、当の姉も。

怒鳴り続けてて喋りっぱなしだった姉に心の平静が訪れて、
花火の爆音も笑って楽しめて、
父と一緒に海を撮って、
その時間が訪れて、良かったと思った。

あとは、家族が話をかぶせて喋ってるもんだから、一方の話しか聞き取れなくって。機会があればもう一度観ようかなと思います。

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sarad

2.5こういう家族もあるんだな

2025年1月17日
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悲しい

寝られる

優秀だった8歳上の姉は、両親の影響により医師を目指し大学の医学部に進学した。その姉が、ある日突然、訳のわからないことを叫びだした。統合失調症が疑われたが、医師の父と母は病気だと認めず、精神科の受診を拒んだ。そのことに疑問を持った弟は両親を説得したが、両親は変わらず、わだかまりを抱えたまま実家を離れた。
姉の発症から18年後、映像制作を学んだ弟は帰省するたびに家族の様子を撮影し記録した。家族にカメラを向けながら両親と対話し、姉に声をかけ続けたが、母が認知症になり83歳で亡くなり、姉も肺ガンで・・・そんな弟(藤野監督)の家族を記録したドキュメンタリー作品。

これを観て何を感じれば良いのだろうか。
弟として、早く姉を病院に入院させたかったんだろう、というのはわかるし、両親が共に医者であり、論文に固執するような研究者だったようだから、何かのプライドで、精神科の受診を拒んだのだろう。最後まで観てもそこはよくわからなかった。
統合失調症の患者を見た事がなかったので、こんな感じなんだ、というのは勉強になった。
で、どうすればよかったか?、は両親が子供に良かれと思ってした事なら、周りがとやかく言う事じゃないんだろう。経済的な援助は両親がしていたようだし。
こんな家族も有るんだろう、くらいの感想。

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りあの

3.5正解などない現実

2025年1月17日
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ラストの、作者が老体の父に
「あの時なぜ?どうして?」のように
次々質問を浴びせる場面は、複雑な気持ちで胸が痛みました

世の中には、過ぎ去ったことに
どれほど答え合わせをしたくとも
黙って葬らざるを得ないことなど幾らでもあると理解しつつも、
作者さんが心を砕き続けた長大な時間と心労は、聞かずには終われなかったことを説明してなお余りある代償と思料しました

「どうすればよかったか?」
とは長男としての責任感からの問いであって、
大好きな姉や父母に突如理不尽に吹き荒れた嵐を見守り続けた一人の弟としては、やはり純粋に
「どうしてだったのか?」
が全ての根底にあった感情だったのではないかと感じました

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タケミカンパニー

4.0老いによる光

2025年1月16日
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怖い

知的

難しい

正月明けの平日にもかかわらず、7割も埋まった劇場から本作の注目度の高さが伺える。小規模公開でも素晴らしい作品にはちゃんと劇場に人が入る。「侍タイムスリッパー」に引き続き、映画館好きとしては嬉しい気持ちでいっぱいになる。

「どうすればよかったか?」
始まりと終わりでこのタイトルの感じ方が大きく変わる。悔いが残っている言葉。藤野監督はまだ傷が癒えておらず、なんなら現在進行形で傷を負っているようにも思える。見る前はどうすれば家族は幸せになれるのか?を考える作品かと思っていた。だけど違った。始まってすぐその考えは打ち消される。
答えを見つけることを目的としていない。当たり前だが、家族には多種多様、それぞれの幸せがあり、やり方がある。それを他人がとやかく口出しすべきではない。明言しているわけではないが、火のないところから煙を立てようとする現代人に対する提言のように思えた。

ドキュメンタリーは基本、客観的に撮影したものばかり。観客は監督と同じ目線に立ち、真相をおったり、問題に目を向けたりしていく。ただ本作は、監督自身が経験したことであり、考えは客観的でありながらも主観的に撮影しているため、監督までもがドキュメンタリーの中の人物となっている。
家族だから当たり前だと思われるかもしれないが、カメラの反対側の様子がこんなにも伝わってくる作品は、未だかつて見たことがない。監督は20年もの間家族を記録し続けたが、観客はその家族の記録と監督の葛藤や苦しみを見ることになる。冒頭のナレーションから様々な思いが一同に伝わってくる。

姉が放った言葉ですごく印象的なものがある。
「だめだっつうの だめだっつうの」
彼女は自分が言った言葉に対して過度に否定を続ける。頭と心が一気に表面化されたシーン。何かと戦っている、何かに苦しめられている。姉が誰かと話しているかのようだが、その正体はわからない。ただただ追い詰められ続け、ひたすらに否定を続ける。
何か気に障るようなことがあれば、姉は突然早口で話し始める。だが、そんな彼女の言葉の言い回しはとても母親に似ていた。偶然か必然か。

愛するとは、寄り添うとは。
彼女は幸せだったのか。その答えを知る者はいないのだから、観客である自分たちは何も言うべきでは無い。非難する対象はたくさんいる。だけど、それでは意味が無い。言わない、言えない、どうしようもないということが、この映画の伝えたかったことでは無いだろうか。
老い、そして光。どうにもならないやるせなさで胸がいっぱいになる。そして、監督はいまも考え続ける。
「どうすればよかったか?」

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サプライズ

4.0テレビじゃ無理

2025年1月16日
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悲しい

怖い

難しい

見逃したらもう観れないかもしれない。
観ておいてよかった。

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mas

4.0タイトルは、困難が起きた時の問いそのものかもしれない。

2025年1月16日
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悲しい

怖い

難しい

家業のあるうちの大変さをまず感じた。
天皇家や歌舞伎などの伝統芸能、老舗の旅館や店舗など。
医者は家業ではないけれど、子どもにとって最も身近な親の生き方(性格、価値観、職業観など)は影響力が大きい。
しかし、医者になるのは、ハードル高し。
開業医の子どもが裏口や替え玉受験など騒がれるのは、たいてい医学部、医師国家試験だったりする。
小中成績優秀でした…では太刀打ちできないところがあるんだろうなあ。

障がいに対するとらえ方は、時代により、人により、幅がある。
周囲にどのくらい開示できるかも、それぞれ。
このおうちは、とても閉塞的で、本質的な話し合いをしない。
私の育った家庭も、戦中生まれの両親、私(長女)、弟2人だった。
父権の強さ、弟の発言力のなさが、似てる。
ただ、我が家は、親族や近所にうちの内情が駄々洩れの開放的な家だったので、同じ状況に陥っていたら、違う展開になっていただろう。
父の上を行く祖父も近くに住んでいたし。
家族問題の肝は、周りと繋がることだと思う。

順番として、親は、子どもより、早く死ぬ。
親が子育てで最も重要視することは、子が自立できるようにサポートすることだ。
成人した娘がひとりで外出もできない状況ならば、やはり信頼できる医師に出会うまで受診し、様々な試みをすることが、やるべきことだったのではないだろうか。
自分にとって受け入れがたいことでも(その葛藤は理解できる)、娘のために、事実と対峙する必要があったろう。
超高齢のご両親が、自分たちだけで娘の世話をする姿に、胸が痛んだ。

この映画の価値は、まさしくそこにある。
我が事なら、こんなに冷静に考えられない。
パニックになるし、自分の不運、娘の不幸を受け入れるまで時間もかかる。
こうして、映画として、事前に疑似体験すれば、同じような境遇になった時に、葛藤する時間が少なくなるかもしれない。
観てよかったと心底思った。

世界が今、すごいスピードで変化している。
メンタルを病む人も、これから増えていくだろう。
だからこそ、風邪みたいに、受診して休んですんなり復帰するような、そんな社会になったらいいなと思う。

しかし、人の怒鳴り声って、聞くのしんどいな…。

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のりたまちび

3.0統合失調症×認知症×脳梗塞×カメラマン

2025年1月15日
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この4人の家族の物語。
統合失調症を発症して25年も病気と認めない医療系研究者の両親の放置。
その両親の生活も危うくなった時にやっと統合失調症として入院できた。

カメラを向け続け、家族としてカメラマンとして、両方の立ち位置としてはつらい場面ばかりではなかったのではないだろうか。

どうすればよかったのか、という答えは1つではないし、家族によっても答えは違うだろう。自分ならどうするか、を最後に考えるきっかけをもらった。

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キッスィ