市民捜査官ドッキのレビュー・感想・評価
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さすが韓国映画!
出だしがうまいの。
「怪しげな電話をうけてんなあ」と思ったら、次のシーンでは赤信号を無視して銀行へ突き進む主人公なんだよね。省略がすごい。
赤信号無視で『目的達成のために困難を厭わない』っていう主人公の性格も分かるの。
銀行のシーンで『あの人、詐欺にあったんだ』っていう周囲の冷たい視線が描写されるのもいい。
それで警察へ行って『そんなに金が必要ですか』に『火事にあったことがありますか』とようやく事情説明。さりげない。
保育園に迎えに行くと『他の方たちの手前、育児費が払えないとお預かりできません』に『今まで待ってくれてありがとう』と返す主人公。立派だ。
ここから突き進んでいくのが良いよね。
警察は全然協力してくれないの。これはでも、しょうがないところがある。特殊詐欺を逮捕すんの難しいんだよ。だから予防を必死にやってんだけど。
韓国警察がダメダメなの。
住むところないから工場に住んでると『子どもを虐待してる』って連れてっちゃうのね。
だから、そんなところだけキッチリしないで、特殊詐欺犯の捜査しろよって。
権力を全く信じない韓国映画らしさが全開だね。
並行してかけ子の事情も描いてくのね。日本のブラックバイトよりえぐいよ。
それでついに、かけ子が情報提供を始める。
事件が解決に向かうのは、このかけ子の情報提供が大きいんだよね。
そこからはシスターフッドな感じになって、ついにかけ子が監禁されている場所近くに乗り込む。
そしてハラハラドキドキでつないで、ついに逮捕かってところで逃げられるんだよ。
追いかけるのか、刑事を待つのか……この葛藤状況の描き方もうまい。主人公特性でもちろん追いかける決断なんだけど、さすがにそれは危険すぎるので、うまくストーリー展開にげるの。
遅れてやってきた刑事も男気を見せるね。中国警察との心の交流で、元請け逮捕に向かう。
主人公、最後は、空港で元請けと主人公で直接のやり取り。
被害額の3倍強の金をやるからつきまとうなという元請けを追いかける主人公。
ボコボコにされながらも『わたしたちは悪くない!』という主張がいい。
そう、騙されたほうが悪いなんてことは絶対にない。何があろうと騙したほうが悪い。そこ間違えんなよ!
遅れてきた刑事も乗り込み、ここでボコボコにされた主人公の顔を見た刑事が、元請けを殴るんだよね。ここで声が出ちゃった。
刑事は仕事しないし、情けない奴ではあったんだけど、いい奴なんだよ。主人公のことを心配してたっていうのが、ここで一気に出た感じだったの。
示談をもちかける元請けの誘いをキッパリ断ってエンディング。
この作品はキャラ起ちがいいね。全キャラクターがきっちり起ってる。
それで実話の映画化でもエンタメとして成立してんの。
加えてコメディータッチで描くのがいいね。
社会派ドラマやるならね、喜劇要素は必須だよと、日本の脚本家にも伝えたい。
まあ、そんな声は届かないけどね。
単館なのはもったいない(途中からネタバレ)
年納めは韓国映画(年の初めも「宝くじ」だった)。たまたま予告編で見て主題がおもしろそうと思い鑑賞。
何よりも普通のおばさんたちのやりとりがいい。自宅を焼け出され、再建資金の融資で巨額詐欺にあった上、虐待疑いで子から引き離された主人公のシングルマザー、面倒見のいい同僚(チンタオに妹がいる)、若いドルオタ(カメ子)。それぞれキャラが立っていて、言葉はぶっきらぼうでわちゃわちゃしつつもお互いへの温かさが感じられる。
一方、詐欺グループの方は若者を国外に連れ出して監禁、容赦ない暴力で服従させて掛け子とし、逃げようとすれば簡単に殺すのが恐ろしい。(韓国映画で最近よく見るモチーフだが、日本でも「殺された」という話が聞こえないだけでフィリピンやカンボジアで起きているか)
以下ネタバレ
警察は、被害者が他にも多くいることは認知するが、犯人グループまでたどれないとして捜査を進めない。
そこに最初に主人公を騙した掛け子が、グループから逃げたいために彼女に連絡してくる。彼女は断片的な情報からチンタオで彼が監禁されている可能性のある建物をピックアップし、現地で拠点を見つけようと計画する。
こんな犯罪集団相手に乗り込もうとまでするのは、カネを得て住む場所と育児環境を取り戻さない限り子を返してもらえないという絶望と切迫感から。犯人側からカネを取り戻せなくても、振り込め詐欺犯の情報提供で国から報奨金1億ウォンが出るという公報も背中を押す。
そして実際に現地に入るが、ここで「おばさんチーム無双」とならないところがよい。彼女たちのやることはあくまで一般市民として(営業を装って)一軒一軒探して回ることであり、住所が特定できれば韓国警察が中国側に捜査共助を要請して逮捕できるという見積もりである。そこから先の展開は偶然の産物ではあるが、おばさんたちについては蛮勇とは感じても「いやそれはないだろ」とまでは思わせない匙加減が絶妙。(その分、掛け子氏や韓国の捜査官の行動にやり過ぎ感・ご都合主義感は若干あるが)
2016年の実際の事件を元にしているという。(組織犯罪とは描かれていなかったが)報復されないか心配に感じた。あと、報奨金は今も支払われていないというのが切ない。
都内で1館のみなのが信じられないほど、とてもおもしろいのでハコが増えてほしい。
スカッと爽快、拾い物的良作
宣伝もなく、上映館も少ない。何かというと美男美女が出てくるのが韓国映画なのに、主役はおばちゃんたちで、スター俳優も出ていない。(こちらが知らないだけかもですが)
・・・てな感じで、さほど期待してませんでしたが、これが思わぬ拾い物。最初から最後まで、食い入るように画面に集中してました。
詐欺集団とその被害者というのが、昨今日本でもあるあるなので、すごく身近なテーマとして、まずぐいっと引き込まれる。次に詐欺集団に軟禁されている若者からのSOSで被害者のおばちゃんが捜査まがいの行動に出る。そんなことあるわけないやん、じゃなくて、そうせざるを得ない状況が描かれていて説得力がある。まあ、事実に基づいているとのことなので、そこは当然ですけど。舞台が青島に移ってからのスリリングな展開も、無駄なく、やり過ぎ感もなく、実に上手く描かれていると感じました。しかも適度にユーモアを盛り込んでいるのが、おばちゃんたちを主役にしているせいか、ワザとらしく感じない。自然に笑ってしまう感じ。かつ、どうなるのか結末までハラドキ感が止まらなかった。
あえて難点を指摘すると、空港のトイレなんて人の目につく場所で、元締めがあんな風に自分で直接殴る蹴る、というのはあり得ないと思いました。もっと目立たないようにやらないと。あれじゃあ、捕まえてくれと言ってるようなもの。でも映画的には、それによって被害者の怒りとワルの非道さ加減がよく伝わるシーンにもなっているので、シラケたわけではないです。後で思い起こして気がついたのであって、観ている間はこちらも熱くなっていました。
とにかく、今年の締めくくりにふさわしい、スカッとする映画でしたが、単に爽快なだけでなく、今般の闇バイトのように、被害者も加害者を酷い目にあっている現実を考えさせられる。この映画のように本当のワルが捕まることを祈るばかりです。
注意喚起映画となるか、対岸の火事となるかは、観る人のマインド次第かもしれません
2024.12.19 字幕 アップリンク京都
2024年の韓国映画(114分、G)
2016年に実際に起きた出来事をベースにした特殊詐欺グループとの奮闘を描いたクライム映画
監督&脚本はパク・ヨンジュ
原題は『시민덕희』、英題は『Citizen of a Kind』で、ともに「稀有な存在の市民」という意味
物語は、韓国の京畿道に住むシングルマザーのドッキ(ラ・ミラン)が、一向に振り込まれないお金に苛立ちを見せるところから描かれる
ドッキは経営していたクリーニング店が火事になって、幼い息子フン(クォン・ウンソン)と娘ミンジ(イン・ハビ)を託児所に預けて、クリーニング工場で働いていた
同僚には中国から移住してきたボンリム(ヨム・ヘラン)と、アイドルの追っかけをしているスクジャ(チャン・ユンジュ)がいて、彼女たちはドッキの行く末を心配していた
ドッキは華城銀行のソン代理(コンミョン)から多額の融資を受ける約束を取り付けたが、手数料を先に支払うという条件を鵜呑みにして、合計8回、総額3200万ウォンもの大金を支払っていた
だが、ソン代理との連絡は途絶え、やむを得ずに銀行へと殴り込みに向かった
ソン代理を見つけるものの、そこに居たのは別人の銀行員・ソン・ジョヨン(キム・ヨンギュ)で、ようやく騙されたことに気づく
ドッキは警察に被害届を出すものの、「詐欺だと気づかなかったのですか?」とバカにされ、担当のパク刑事(パク・ピョンウン)はまともに捜査を始めようとしない
彼は「相手の居場所がわからないと動けない」と言い、「拠点を海外に移していたりすると、さらに捜査は難航する」と告げた
そして、「高い授業料だと思って」と嗜められてしまうのである
そんな折、再びソン代理から電話が入った
それは「情報提供をするから警察に通報して」というもので、作業場の向かいにあるレストランの名前と、倉庫内の物品の特徴を伝えた
ドッキはその情報を持ってパク刑事に掛け合うものの、それだけでは足りないという
そこでドッキは、単身で中国・青島に乗り込んで、居場所を突き止めようと考える
通訳のためにボンリムに協力をお願いすると、彼女の妹エリム(アン・ウンジン)もその話に乗ることになった
そして、来なくても良いのに、スクジャまで付いてきてしまうのである
映画は、実話ベースのフィクションになっていて、モデルのキム・ソンジャは「情報提供を行なっただけ」となっている
彼女は青島に行ったこともなく、無論元締めと対決したということはない
さらに映画公開時点では、情報提供に対する報奨金は支払われていなかった
最近のニュースでは、ようやく半額の5000万ウォンが支払われたというものがあったが、それ以上にこの事件に関する情報はなかなか出てこない
結局のところ、闇バイトのように集められたソン代理ことクォン・ジェミンは、脱走しようとした仲間が殺されたことで何とかしたいと考えていた
そこで、現場管理の人間を抱き込んで、多くの情報を提供することになった
そして、それがきっかけで韓国警察が動くことになったのだが、実際には中国の公安は動いていないという
なので、かなり脚色の入った内容になっていて、エンタメに全振りしているのである
いずれにせよ、クライムミステリーとしても面白く、闇バイトの囲いこみ、特殊詐欺の手口などが詳細に描かれていく
実際に提供された情報や、それ以外で入手できた情報を元に構成されているので、かなりリアリティのある作品になっていた
映画は、かなりエンタメに振っていて、勧善懲悪的なものになっているので、それを含めて楽しむ作品になっていたと思う
コメディシーンもあって、そこまでダークに統一されていないので、構えて観る必要はない
残念なのは、パンフレットが作られていないことで、補完する情報がほとんどない
なので、気になる人は韓国語版映画のWikiから色々とリンクを辿ってみるしか方法はないと思います
一般人をなめるなよ! 虐げられた一般人が大爆発!大活躍! こういうのがもっと観たい!
韓国の二人の子持ちシングルマザー、
元クリーニング店主が
中国の闇組織のボスをやっつける。
その行動力、バイタリティーが凄い。
惹きつけられる職場の同僚達もいい。
一般人をなめるなよ!
虐げられた一般人が大爆発!大活躍!
こういうのがもっと観たい!
それに対して何もできない男どもの情けなさよ。
それにつけても、こういうスカッとする映画がなぜ日本で作れないか。
なんとも嘆かわしい限り。
ZOK
実話を元にした作品で、何かと話題の闇バイト詐欺に騙された主婦が闇バイトの青年と協力して元締めを探しに行くというスリル満点の作品でした。
火事で家が焼けてしまい、今すぐにでもお金が必要なドッキがあれよあれよと言わんばかりに騙されてお金を取られる様子はそんなバカなと思いつつも、忙しなくしている時にはなりふり構っていられないというのも分かるなとなってしまい観ていて辛いところがありました。
闇バイト先でこちらも辛い目に遭っているソン代理もなんとか逃げ出さねばというところで過去に騙したドッキに電話をかけていくという現実でも相当リスキーなことに挑んでいく2人は応援したくなります。
数少ないワードでなんとか辿り着こうとするドッキと、命の危機がありつつも写真を撮ったりメールを送ったりするソン代理の行動にはハラハラさせられつつも、ドッキの行動力の高さと同僚たちのファインプレーも合わさってソン代理のいる場所へ近づいていく様子は嬉しくもありつつ、ヒヤヒヤもしつつで見せ場たっぷりでした。
ソン代理含め闇バイトのチームが元締めに一斉に襲撃された時は後がない…とヒヤヒヤしましたが、刑事とドッキが手を組み追いかけていく様子は胸熱でした。
必死の訴えが感情を揺らしまくるってのも相まって何とか間に合ってくれ〜!と食い入るように観ていました。
終盤の空港のシーンは手に汗握るものがありました。
何事も諦めずに前を向き続けたドッキの姿勢が逞しかったですし、スカッとする展開を最後に持ってきてくれて報われた〜って気分になりました。
刑事そこでそれはやりすぎだ!と思いつつもモヤを晴らしてくれて良かったです。
映画的な脚色もエンタメへの昇華を見事にこなしていて良かったですし、実話をなぞったらそりゃ重い話なんでドシっとくるものが多かったと思いますが、刑事とのやりとりだったり、仲間たちとの掛け合いだったりで面白くしてあったのがとても良かったです。
エンドロール後のその後のお話はまだまだ未解決な問題が多いんだなと肩を落としましたし、それでも前を向くドッキのモデルの方のいき方には関心しかありません。
改めて韓国映画のクオリティの高さに舌を巻いた一本でした。
どうにかこういう詐欺は減ってほしいもんなんですが、企てる奴らがいる限り終わらないジレンマは尽きそうにないです。
鑑賞日 12/16
鑑賞時間 18:30〜20:30
座席 G-4
行動力
空港で接触してから先の行動は凄いですね。警察もまだ駆けつけるかわからないところで、声を掛けに行く勇気が自分にあるか疑問です。これが実話なんですもんね。早く賞金を払ってあげて欲しいですね。
肝っ玉母さん、奮闘記!
Here's Johnny!
ホラー映画を観ていて、とてもウザイと思ったキャラはいないだろうか?いなければ、その人は幸いと言えるのか?言えないのか?
それはともかく、ワンシーンを撮るだけで127回も撮り直す完璧主義者の監督に精神的に追い込まれた女優さんのラストの恐怖の叫びは、演技ではなかった。そのシーンは完璧主義者の監督ではありえない、俳優のアドリブからなり、彼女は斧が実際に彼女に降りかかってくると錯覚するほどの恐怖を自然と演じていた。そんな彼女が長く沈黙していたけれど映画を一本出演後に亡くなっている。彼女は、当時の事をこのように語っていた。
Hollywood Reporter interview, saying that “after a while, your
body rebels. It says: ‘Stop doing this to me. I don’t want to cry
every day.’ And sometimes just that thought alone would make
me cry. To wake up on a Monday morning, so early, and realize
that you had to cry all day because it was scheduled
— I would just start crying.”
話が長くなりそうなので本編に戻ると...
最初、何故、ボイスフィッシングでドッキを騙したソン代理が彼女に助けを求めたのかが、分からなかったけれど映画を見て、"百聞は一見に如かず" なんて言葉も飛び出しちゃいました。
とにかく、ストリー展開が早く主人公ドッキに降りかかる難題が彼女を奮い立たせ、彼女のために立ち上がる友達がこれまた個性ぞろいで、中国語を流ちょうに話したり、中国の警察とのやり取りでいい塩梅に役に立ち、その反面、いつもの韓国側の警察のおざなり感が、ヤキモキさせる反面教師となっているので、ついつい映画を見入ってしまう。
今日は、たまたま映画サイトを見ているとある女優さんの訃報が載っていたので、真逆な役柄として想い出を振り返りました。
ドッキ母ちゃんが闇のボスに言う決めセリフです。
Myung-hwan, if you make someone cry,
you'll cry a river.
ラストは、少しまとまりすぎているというか? シングルマザーなら決してできないようなことなので...?
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