「単館なのはもったいない(途中からネタバレ)」市民捜査官ドッキ LSさんの映画レビュー(感想・評価)
単館なのはもったいない(途中からネタバレ)
年納めは韓国映画(年の初めも「宝くじ」だった)。たまたま予告編で見て主題がおもしろそうと思い鑑賞。
何よりも普通のおばさんたちのやりとりがいい。自宅を焼け出され、再建資金の融資で巨額詐欺にあった上、虐待疑いで子から引き離された主人公のシングルマザー、面倒見のいい同僚(チンタオに妹がいる)、若いドルオタ(カメ子)。それぞれキャラが立っていて、言葉はぶっきらぼうでわちゃわちゃしつつもお互いへの温かさが感じられる。
一方、詐欺グループの方は若者を国外に連れ出して監禁、容赦ない暴力で服従させて掛け子とし、逃げようとすれば簡単に殺すのが恐ろしい。(韓国映画で最近よく見るモチーフだが、日本でも「殺された」という話が聞こえないだけでフィリピンやカンボジアで起きているか)
以下ネタバレ
警察は、被害者が他にも多くいることは認知するが、犯人グループまでたどれないとして捜査を進めない。
そこに最初に主人公を騙した掛け子が、グループから逃げたいために彼女に連絡してくる。彼女は断片的な情報からチンタオで彼が監禁されている可能性のある建物をピックアップし、現地で拠点を見つけようと計画する。
こんな犯罪集団相手に乗り込もうとまでするのは、カネを得て住む場所と育児環境を取り戻さない限り子を返してもらえないという絶望と切迫感から。犯人側からカネを取り戻せなくても、振り込め詐欺犯の情報提供で国から報奨金1億ウォンが出るという公報も背中を押す。
そして実際に現地に入るが、ここで「おばさんチーム無双」とならないところがよい。彼女たちのやることはあくまで一般市民として(営業を装って)一軒一軒探して回ることであり、住所が特定できれば韓国警察が中国側に捜査共助を要請して逮捕できるという見積もりである。そこから先の展開は偶然の産物ではあるが、おばさんたちについては蛮勇とは感じても「いやそれはないだろ」とまでは思わせない匙加減が絶妙。(その分、掛け子氏や韓国の捜査官の行動にやり過ぎ感・ご都合主義感は若干あるが)
2016年の実際の事件を元にしているという。(組織犯罪とは描かれていなかったが)報復されないか心配に感じた。あと、報奨金は今も支払われていないというのが切ない。
都内で1館のみなのが信じられないほど、とてもおもしろいのでハコが増えてほしい。