「注意喚起映画となるか、対岸の火事となるかは、観る人のマインド次第かもしれません」市民捜査官ドッキ Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
注意喚起映画となるか、対岸の火事となるかは、観る人のマインド次第かもしれません
2024.12.19 字幕 アップリンク京都
2024年の韓国映画(114分、G)
2016年に実際に起きた出来事をベースにした特殊詐欺グループとの奮闘を描いたクライム映画
監督&脚本はパク・ヨンジュ
原題は『시민덕희』、英題は『Citizen of a Kind』で、ともに「稀有な存在の市民」という意味
物語は、韓国の京畿道に住むシングルマザーのドッキ(ラ・ミラン)が、一向に振り込まれないお金に苛立ちを見せるところから描かれる
ドッキは経営していたクリーニング店が火事になって、幼い息子フン(クォン・ウンソン)と娘ミンジ(イン・ハビ)を託児所に預けて、クリーニング工場で働いていた
同僚には中国から移住してきたボンリム(ヨム・ヘラン)と、アイドルの追っかけをしているスクジャ(チャン・ユンジュ)がいて、彼女たちはドッキの行く末を心配していた
ドッキは華城銀行のソン代理(コンミョン)から多額の融資を受ける約束を取り付けたが、手数料を先に支払うという条件を鵜呑みにして、合計8回、総額3200万ウォンもの大金を支払っていた
だが、ソン代理との連絡は途絶え、やむを得ずに銀行へと殴り込みに向かった
ソン代理を見つけるものの、そこに居たのは別人の銀行員・ソン・ジョヨン(キム・ヨンギュ)で、ようやく騙されたことに気づく
ドッキは警察に被害届を出すものの、「詐欺だと気づかなかったのですか?」とバカにされ、担当のパク刑事(パク・ピョンウン)はまともに捜査を始めようとしない
彼は「相手の居場所がわからないと動けない」と言い、「拠点を海外に移していたりすると、さらに捜査は難航する」と告げた
そして、「高い授業料だと思って」と嗜められてしまうのである
そんな折、再びソン代理から電話が入った
それは「情報提供をするから警察に通報して」というもので、作業場の向かいにあるレストランの名前と、倉庫内の物品の特徴を伝えた
ドッキはその情報を持ってパク刑事に掛け合うものの、それだけでは足りないという
そこでドッキは、単身で中国・青島に乗り込んで、居場所を突き止めようと考える
通訳のためにボンリムに協力をお願いすると、彼女の妹エリム(アン・ウンジン)もその話に乗ることになった
そして、来なくても良いのに、スクジャまで付いてきてしまうのである
映画は、実話ベースのフィクションになっていて、モデルのキム・ソンジャは「情報提供を行なっただけ」となっている
彼女は青島に行ったこともなく、無論元締めと対決したということはない
さらに映画公開時点では、情報提供に対する報奨金は支払われていなかった
最近のニュースでは、ようやく半額の5000万ウォンが支払われたというものがあったが、それ以上にこの事件に関する情報はなかなか出てこない
結局のところ、闇バイトのように集められたソン代理ことクォン・ジェミンは、脱走しようとした仲間が殺されたことで何とかしたいと考えていた
そこで、現場管理の人間を抱き込んで、多くの情報を提供することになった
そして、それがきっかけで韓国警察が動くことになったのだが、実際には中国の公安は動いていないという
なので、かなり脚色の入った内容になっていて、エンタメに全振りしているのである
いずれにせよ、クライムミステリーとしても面白く、闇バイトの囲いこみ、特殊詐欺の手口などが詳細に描かれていく
実際に提供された情報や、それ以外で入手できた情報を元に構成されているので、かなりリアリティのある作品になっていた
映画は、かなりエンタメに振っていて、勧善懲悪的なものになっているので、それを含めて楽しむ作品になっていたと思う
コメディシーンもあって、そこまでダークに統一されていないので、構えて観る必要はない
残念なのは、パンフレットが作られていないことで、補完する情報がほとんどない
なので、気になる人は韓国語版映画のWikiから色々とリンクを辿ってみるしか方法はないと思います