「ひとつの新バージョンとして順当なアプローチではないか」白雪姫 村山章さんの映画レビュー(感想・評価)
ひとつの新バージョンとして順当なアプローチではないか
いろいろな意見や批判が渦巻く中、ディズニーが作ってるのだから、ディズニーアニメの『白雪姫』を尊重してほしいというファンの気持ちはわからなくはない。とはいえディズニーアニメの『白雪姫』自体がグリム童話をアレンジしていて、グリム兄弟にも参照した元ネタがあり、その後も例えばリリー・コリンズが演じたターセム・シン監督作や、クリステン・スチュワート主演のアクション寄りのものまでいろんな『白雪姫』が作られていて、それぞれに時代を反映した別バージョンと言える。
その中でも今回の実写版は、大筋を違えているわけではなくて、いま作ったらそりゃある程度主人公に主体性は必要だし、長編映画として話を広げるならこんな感じではないか、と思える範疇内で、個人的には順当な新バージョンではないかと感じている。
とりわけ拾い物だったのがガル・ガドットの女王役。新解釈みたいなことをしているわけでも、実はこんな裏事情がみたいな設定を増やしているわけでもないのだが、女性がひとりで生きていくためにこんな生き方を選択したのだなという奥行きみたいなものが、ちょっとした表情に現れている(と、少なくとも自分は感じた)。ガル・ガドットは、佇まい勝ちでスターになったと思っていたが、いや、ちゃんと演技が上手いじゃないですか。持ち曲の歌いっぷりも見事なものでした。
あと政治的すぎる、みたいな言葉が独り歩きしているが、親を失い国を失ったお姫様が、国民の心をひとつにして、思いやりと礼節で独裁者に立ち向かうという筋立てが、そんなの手垢がついていると批判されるならまだしも、政治的だと受け取られていることが結構こわい。団結とか思いやりとかって政治的なんですっけ? むしろファミリー向け映画としては真っ当な精神性ではないですかね。堅苦しいことを言うと、女王を倒した後に結局女王になり、結局血筋優先の君主制に落ち着くんかい?とは思ったが、逆に言えば革命的なアレンジを施したわけでもない、わりと保守的な落とし所だったのではなかろうか。
こちらの期待値やこだわりがユルかったせいもあるでしょうが、存外このバージョンも楽しめましたよ、という感想です。