「ディズニーランドを追体験」白雪姫 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)
ディズニーランドを追体験
公開から若干間が有ってからの観賞になったが、コロナ以降ハリウッド大作供給が寂しい中でのディズニー作品なので、必ず観ようと思っていた。 ただ、先に公開された同ジャンルの“ウィキッド”(実は観るまで題材的にてっきりディズニー作品だと思い込んでいた)は日本でも世界でもヒットしているのに対し、こちらは日本でも世界的でも興行的には期待外れのスタートとなった記事を観賞前に読んだので、若干期待のハードルを下げて観賞。
【物語】
人々が幸せに暮らす王国で、真っ白な雪降る日に生まれた女の子は白雪(Snow White)と名付けられた。白雪姫は両親の愛情を受けて幸せな幼少期を過ごしたが、あるとき女王が病死してしまう。 その後王が再婚した新たな母(ガル・ガドット)は自分の美しさと権力に執着する邪悪な女王となり、ついには国王にウソの侵略情報を吹き込んで国外に遠征させ、帰って来られぬように仕組む。独裁者となった女王は国の富を独り占めし、国民の幸せを奪ってしまう。
女王に心の純粋さを疎まれ城内に幽閉されていた白雪姫(レイチェル・ゼグラー)は女王に抑圧された民を憂い、以前のような希望に満ちた王国を取り戻したいと願う。あるとき女王は家来に白雪姫を城外で暗殺するように命じるが、家来は白雪姫の心優しさに胸打たれ、命令に背いて白雪姫を森の中へ逃がしてしまう。
白雪姫は森の中で7人のこびとたちや女王の食糧を盗んで追われている窃盗団と出会うが、彼らは皆白雪姫に心惹かれる。
【感想】
ハードルを下げて観たせいか、悪くないと思った。絶賛するほどではないけれど。
歌・ダンスが散りばめられた作風は文句なく楽しい。7人の小人の登場シーンなどは思わず一緒に歌いたくなる衝動に駆られた。小人たちの宝石採掘シーン、トロッコ搭乗シーンなどは映像を含めてディズニーランドに居るかのように心躍った。制作側がそれを狙ったかどうかは知らないが、本作の特徴はそこにあると思う。ディズニーランドの再現。
その昔ディズニーランドは映画の世界をリアルの世界に実現した夢の国だと言えると思うのだが、本作はその逆を行っていると思う。日本人を含めて老若男女非常に多くの人がディズニーランドの楽しさを知った現代において、ディズニーランドに行くより手軽にそれを再体験できるという感じ。
一方、“絶賛”するまでは行かないのは何が足りないのか?
俺の中でのは、興奮するほどの大絶賛だった10年の前公開の“シンデレラ”と2017年の公開“美女と野獣”と比較してしまう。その差の1つは俺的には美的インパクト。シンデレラは映像が絵的に、しかもおとぎ話的に圧倒的に美しかった。特にシンデレラの舞踏会での青のドレスには目を奪われた。 美女と野獣はヒロイン、エマ・ワトソンの可憐さが圧倒的だったし、それに加えて歌の迫力に魅了された。 なんかそういう「凄い!!」というインパクトには欠けたかな。
また、本作に関するある記事を読んで頭から離れなくなったことが1つ。最近のディズニー作品は世の中の「多様性の尊重」「性差別の厭忌」等々の意識を過剰に配慮し過ぎではないかと。ヒロインに白人を選ぶことや、外見で選ぶこと、ヒーローの生い立ちなども含めて批判されることを恐れて遠慮してオリジナルの設定を捻じ曲げている的な指摘だ。 現実社会での多様性の尊重や真の男女平等の実現等々は良いことだと思うけれど、人間は完全じゃないからフィクションくらい“憧れの世界”を見せてくれても良いような気がする。仮にそれが人種・性別・職業等々によって観たくない人が存在してもいいと思う。商業映画は観ることを強要しているわけではないので。その人たちが観たい作品も製作されれば(別にディズニーである必要はない)いいと思う。両方観て「視点・立場でこんなに違って来る」を感じられたら完璧だと思う。それが真の多様性尊重につながるのでは? いずにしても、万人受けならまだしも「万人に批判されない」ことばっかり考えて制作するようになったら食い足りない作品しか生まれて来ないと思う。
そんなところにインパクトが今ひとつの原因があるのかもと思ってしまう。それでも子供が観て楽しいのは“ウイキッド”よりこちらだと思う。