「闘う白雪姫」白雪姫 蛇足軒妖瀬布さんの映画レビュー(感想・評価)
闘う白雪姫
問題の根幹はレイチェル・ゼグラーの演技や、
監督マーク・ウェブの責任にあるわけではなく、
むしろこの映画の根本にあるコンセプトにあると言わざるを得ない。
もちろん、
コンプライアンスに対する懸念や、
キャスティングの選択が影響を与えている部分もあるだろうが、
主因は映画そのものの構造的な問題、
つまり「何を描こうとしているのか」の曖昧さにある。
具体的に言うと、
この『白雪姫』が、
どこか『レ・ミゼラブル』や『ジャンヌ・ダルク』のような、
重厚で歴史的なドラマを目指しているように見える点だ。
もし本作がそのような壮大なテーマに挑戦しようとしているのであれば、
そのアプローチは非常に難解であり、
白雪姫というキャラクターの純粋でシンプルな魅力を引き出すには難易度が高すぎる。
解釈の違いかもしれないが、
白雪姫本来のファンタジーや夢幻的な要素が薄れてしまっており、
その魅力が埋もれてしまったように感じる。
【ディズニークオリティで言うと】
1937年のアニメ版『白雪姫』を基準に期待する観客にとって、
そのクオリティを超えることは難しいとしても、『ダンボ』や『美女と野獣』、さらには『アリス』レベルの感動を期待するのは自然なことだ。
しかし、その期待に応えられなかった最大の理由は、
ビジュアルや美術の造り込み不足の要因にもなっている、
「闘う白雪姫」というコンセプトの不整合さにある。
この新しいアプローチが物語の本来の魅力を損ねているように感じられる。
【監督で言うと】
マーク・ウェブの『(500)日のサマー』をオールタイムベストとして挙げるファン層も一定数存在するだろう、
果たしてその層にも本作は届いただろうか。
少なくとも、その期待に応えられたとは言い難いのではないか。
【キャストで言うと】
レイチェル・ゼグラーの演技には確かに素晴らしい部分もあり、
彼女の歌声や表現力は素晴らしい。
しかし、
今回の彼女の演技には、
どこか浪花節的な「根性」を前面に押し出す雰囲気があり、
これが彼女の引き出しの多さを示していることは理解できるが、
この『白雪姫』には少々場違いに感じられる瞬間が多い。
彼女の芝居は違うアプローチでも可能なだけに、
闘うキャラ故の根性感は、
今回のアプローチではどうにも馴染まない印象を受けた。
さらに、ワンダーウーマン・・・存在感あり過ぎ。
結論として、
『白雪姫』は全体的にバラバラな印象を与える作品となっている。
キャスティングや演出など、
個々の要素は魅力的であるものの、
それらが一つのまとまりとして昇華されていない。
映画全体のコンセプトが抽象的すぎるため、
そのクオリティを十分に発揮する、
着地させることができなかったように感じる。
コンプライアンスや政治的な配慮が遠因となっている可能性もあるが、
根本的に「どんな物語を描きたいのか」という具体的なビジョンが見えず、
結果的に着地点が不明確なまま進んでしまった。
映画が頼りにしたのは、
白雪姫マーケティングの成功や豪華なキャスティング、
スタッフ陣であったが、
これらに頼った結果として映画が提供すべき感動が薄れてしまった。
この作品がターゲットにしている層や伝えようとするメッセージは、
最後まで不明確であり、観客に届いたのかどうかは疑問が残る。
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