「この白雪姫に憧れを抱く少女は、世界にどれだけいるのだろうか」白雪姫 Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
この白雪姫に憧れを抱く少女は、世界にどれだけいるのだろうか
2025.3.27 字幕 T・JOY京都
2025年のアメリカ映画(109分、G)
原作はグリム童話&ディズニーのアニメーション映画
監督はマーク・ウェブ
脚本はエリン・クレシダ・ウィルソン
原題は『Disney‘s Snow White』
物語は、とある平和な王国にて、善き国王(Hadley Fraser)と善き女王(Lorena Andrea)との間に、白雪姫(Olivia Verrall、幼児期:Emilia Faucher、成人期:レイチェル・セグラー)が誕生するところから始まる
白雪姫はスクスクと育ち、王国も安定して栄えてきたものの、7歳になった頃に女王が亡くなってしまう
その後、他の国から美しい女(ガル・ガドット)が現れ、国王は心を奪われてしまった
女は王妃となり、国王を欺いて、女王の座に君臨することとなった
女王は白雪姫を召使に仕立て上げて城内に幽閉し、やがて人々は白雪姫の存在を忘れてしまう
さらに、女王は国民の中から私設警備団を作り、それによって働き手が減ったことによって、国力も衰退していく
それでも女王は、お構いなしに国民から搾取を続け、圧政は終わりが見えなかったのである
物語は、国民の疲弊を見かねた白雪姫が女王に物申すところから動き出す
女王は反旗を翻したと見做して、白雪姫を亡き者にしようと目論む
森にリンゴを摘みに行かせ、そこに狩人(アンス・カビア)を派遣する
狩人は白雪姫殺害を言い渡されていたが、命令に背いて、白雪姫を森の奥深くへと逃すことになった
映画は、原作の設定ちょこちょこと変えていて、それをどこまで許容できるかというチキンレースになっていた
森に取り残されるぐらいまではほぼ同じで、白雪姫にキスをするのは誰か、というところが変わっている
通りがかりの王子様だったものが、元国民の盗賊になっているし、雪のように白い肌が大雪の日に生まれたということになっていた
個人的には別物だと思っているのでそこまで気にしないものの、「白雪姫が少女の憧れを維持できているか」というところは疑問に思えてならない
王子様に限らず、真実の愛によって息を吹き返すために、最愛の人との馴れ初め、愛を育む過程を描くのは良いと思う
唐突に通りすがりの王子が引き取るという童話の流れは不自然で、王子でなければならないという縛りを取り除くのも良いと思う
本作では、あくまでも「白雪姫が王国を取り戻す」という物語になっていて、女王側に従事することになった国民の目を覚ますという内容になっていた
それが「覚えている」で終わっているところは子ども騙しのようなもので、国民が女王に逆らえない理由というものが明確ではなかったりする
魔法の鏡の力のように思えなくもないが、鏡は白雪姫が生きているかどうかを知るための道具のようなもので、王女自身が他人を屈服させるような魔法を使うわけでもない
女王に逆らったものは即座に殺されるわけでもないので、何が怖くて女王に屈しているのかはわからない
護衛が魔法で洗脳されているようにも見えないし、家族を人質に取られているから服従しているわけでもないので、王国から何を排除すればカタルシスとなるのかは不明瞭のように思えた
場外乱闘が激しい作品だが、ポリコレ配慮とか、主演がSNSで作品のイメージを破壊しているなど色々とあると思うが、この映画のプロットや予告編を観て面白そうだと思う人はほぼいないように思う
作品の吸引力は主人公の魅力だと思うが、それがこの作品では弱かったということなので、それがルッキズムで判断されてしまっているとしても仕方のないことなのではないだろうか
いずれにせよ、評価するためには観るしかないと思って鑑賞したけれど、鑑賞した上で口コミで良さが広がる作品とは言えないと思う
予告編以上に白雪姫の魅力というものが感じられず、育ちが良いはずなのに所作がガサツというのも統一感がない
心がキレイな人が人の上に立つという価値観があるものの、女王は魔法の鏡を自分で割って、その報いを受けているだけなので、自業自得でしかない
明確な悪は主人公によって征伐されるというのがデフォだと思うので、終わりよければ全て良しというように、王国再建に向けたプロセスは白雪姫の手によって、きちんと示された方が良かっただろう
また、多様性を取り入れてポリコレ一色なのにラストはみんなで同じ色の服で踊るみたいな演出があったのだが、これは経営陣に対する抵抗のように思える
クリエイターが作りたいものを作っているとはとても思えないので、そう言った細やかなものが様々なところに影を落としているのかな、と感じた