「ただの映画としては凡作、ディズニー映画としては駄作。」白雪姫 えなもんさんの映画レビュー(感想・評価)
ただの映画としては凡作、ディズニー映画としては駄作。
【前情報ゼロで見た吹き替え版の感想】
■良かった点
・3Dグラフィックは拘られており、魔法や鉱山の描写の美しさ、小人達の表情などは非常に良かった。
・楽曲の9割が好みに合っていて、サントラが少し欲しくなった。民謡風楽曲が好きな人には合いそう。
・白雪姫への新しい試みや解釈をしようと頑張っている痕跡は見受けられた。
・ジョナサン(王子枠)の顔が非常に良い。
・女王役の吹き替え声優さんが大変上手で、彼女の威厳や冷酷さが直に伝わってくるような良い演技でした。
■悪かった点
・テーマ性のあるストーリー(オリジナル改変)とアクションを同時にやろうとした結果、渋滞を起こしどちらも中途半端になってしまっていた。
アクションでは2012年のスノーホワイトの方が面白かったし、テーマや視点のアレンジ性という面ではマレフィセントに軍配が上がる。
・キャラやシナリオの改変があまりハマっていなかった。
おとぼけを単純ないじられ役にして落ち込ませる事で、彼をいじった他の小人に少しヘイトが傾く作りにしたのはあまり気持ち良くはなれない。
その後の掃除パートも、小人達に掃除をやらせるところまではいいのだが、肝心の姫は歌って踊るだけで何もしておらず、どうして?????という気持ちでいっぱいだった。
ボウガンの名手の人も最後までいる意味が分からず、ラストシーンもジョナサンがやるんじゃダメだったのか????と疑問が尽きなかった。
・王子枠の存在意義が無い。
今回王子枠が王子ではないというラプンツェル、アナ雪のような試みをしている。それは良いのだが、どう見ても実写版フラン・ライダーがやりたかったんだろう…というのが透けて見えてしまうようなキャラ造形。
その上元役者のアウトローという設定がお仲間も含め1mmも生かされておらず、ただただ不敬で迂闊で思慮も覚悟も無い短絡的な男として描かれてしまっており、キスで姫を救うシーン以外での登場にあまり必要性を感じず……本当に……本当に勿体なかった……。
・原作再現シーン以外を外しがち
原作再現シーンはどれもクオリティが高く良かったのだが、ジョナサンと姫が出会ってからの茶番シーンや、戦闘シーン、ボウガン、女王の退場の仕方、ラストのダンスなど、改変を加えたシーンが悉く盛り上がりに欠けていた。山賊一味周りの演出は基本的に寒かったし、戦闘シーンは中途半端、女王の退場方法は意味不明で、ラストシーンのダンスはミッドサマーだった。
ラストはせめて明るく色とりどりな服を着る国民達の中で、婚姻を結んだ姫と王子の2人だけが真っ白な服で踊る……とかなら特段狂気を感じなかったと思うのだが……。
・白雪姫で一番有名な楽曲が入っていない。
確かに今回の"この白雪姫のテーマ"にはそぐわない歌詞だったかもしれないが、そもそも王子枠をちゃんと王子にするだけで成立した話なので、制作側でのすり合わせや話し合いが足りていなかったことで起きた悲劇だろう。
・吹き替え版のメインキャラ声優2人の不慣れ感が全面に出ていた。特にジョナサン役。
後半のがなりには一瞬光るものも感じた分、せめて他作品や舞台で台詞読みに慣らしてから抜擢すべきだったろうと強く感じる。
姫役とジョナサン役の歌声、どちらも悪く無かったのだが、デュエットになった瞬間絶妙に声の相性が合わず、吹き替えの選考班に疑問を抱く出来だった。
【総評】
何も知らずただの映画として見るなら良くも悪くも楽曲と3Dクオリティが高い普通の作品。
ディズニー版白雪姫を知らないor全く覚えておらず、ストーリー面に着目しないなら問題なく楽しめる。
ディズニー作品として見るなら、「ディズニー初、そして世界初の長編アニメーション映画の実写化を本家が担当した結果がコレだと到底信じたくない」といった出来だった。悪夢と言っても差し支えない。