「悪くはないが、期待には届かない」白雪姫 おじゃるさんの映画レビュー(感想・評価)
悪くはないが、期待には届かない
世界的に有名な「白雪姫」の実写化作品ということで期待していた本作。もちろん公開初日に字幕版で鑑賞してきました。
ストーリーは、豊かな国で両親の愛を受けて育った王女・白雪姫が、母の死後に国王の妃となり、その国王をも亡きものにした邪悪な女王によって、今や召使いとしてこき使われていたが、誰よりも美と権力を求める女王は、やがて白雪姫の命も狙うようになり、森に逃れた白雪姫は7人の小人や王国に反旗を翻すジョナサンらと出会い、かつての優しい国を取り戻そうとするというもの。
よくよく思い出してみると、「白雪姫」の話は、鏡に問いかける悪い女王、その美しさから命を狙われる白雪姫、彼女と森で暮らす7人の小人、毒リンゴで眠る白雪姫をキスで目覚めさせる王子、と断片的な記憶しかありません。それが、本作を通じて、ストーリーの全容がわかったことは収穫です。
また、ミュージカル作品らしく、素敵な歌声とダンスに魅了されます。特に、最初と最後に王城前で魅せる大人数でのダンスパフォーマンスは圧巻です。他にも、小人たちの登場時の採掘シーンは、コミカルな動きと精細な映像で表現され、なかなか見応えがあります。
しかし、それ以外は特筆すべき点があまり見当たりません。悪い作品だとは思いませんが、正直言って期待したほどではなかったです。前述の小人のシーン以外には映像的にそれほどの魅力がなく、ストーリーも盛り上がりに欠ける印象です。現代版にアップデートされているのかもしれませんが、白雪姫が”戦うプリンセス”って感じで描かれているのも、昨今のディズニー作品に共通していて、いささか食傷気味です。
また、邪悪な女王の追い込みがぬるすぎます。国王まで手にかけるような冷酷な女王なのですから、白雪姫など王城内で暗殺すればすむ話です。それを、わざわざ森で殺すように配下に命じたのに、その確認もしません。そうかと思えば、自身で小人の家に出向くし、そこでさっさと殺さずに毒リンゴを食べさせるのもまどろっこしいです。他にも、ジョナサンの思考もイマイチ理解できず、ちょっと共感しにくかったです。
ミュージカルは得意ではないので、全体的に歌が多すぎて眠気に誘われたのもつらかったです。気持ちの高ぶりに合わせて歌うならまだしも、どうでもいいようなところでも突然歌い始めて話が進まないのは参ります。その分を登場人物の掘り下げにまわせば、もっと奥行きや深みを感じられる作品になったのではないかと思うと残念です。一昨年の「リトル・マーメイド」といい「ウィッシュ」といい、最近のディズニープリンセスはなんだかパッとしないように感じます。
主演はレイチェル・ゼグラーで、その歌声はさすがの一言ですが、白雪姫のイメージを塗り替えることができなかったのは残念です。脇を固めるのは、ガル・ガドット、アンドリュー・バーナップ、パトリック・ペイジら。ガル様の美しさは堪能できましたが、女王の人物像が薄っぺらく、これなら彼女を起用するまでもなかったのではないかと思います。でも、そうなるとさらに作品の魅力が…。