「不器用だけど優しい、家族の物語。」小林さんちのメイドラゴン さみしがりやの竜 しゅわとろんさんの映画レビュー(感想・評価)
不器用だけど優しい、家族の物語。
ドラゴン達が登場するファンタジーな世界観と、それとは裏腹にほのぼのした物語が魅力的な京都アニメーションの名作アニメ「小林さんちのメイドラゴン」。これまでに2シリーズが放送されてきたTVアニメの続きを描いた映画である。
何を隠そう、私はこのアニメの大ファンである。大いに期待して劇場へ赴いたが…そのハードルなど軽々と越えてくる大傑作であった。
ごく普通のOL、小林さんは、人の姿をとったドラゴン達と一緒に暮らしている。小林さんのメイドとして働くトール。暴れ者のドラゴン・イルル。そして、イタズラで群れを追放された子どもドラゴン・カンナ。友人たちや他のドラゴンたちと暖かな日々を過ごす中で、小林さんの家に謎の巨漢が訪ねてきた。その男の名はキムンカムイ。カンナの父である。彼はドラゴンたちが本来住む「向こうの世界」での戦いにカンナが必要になったと言い、彼女を連れ戻そうとするのだが……。
この映画は、アニメでも屈指の人気キャラクター、カンナを主役とした作品である。彼女が追放される原因となった「イタズラ」の詳細や、彼女が求めていた「家族のつながり」を深く描くストーリーとなっている。
ストーリーの出来は非常に素晴らしいもので、カンナを「仲間」としか見ていないキムンカムイと、血の繋がりはなくともカンナを家族として大切に想う小林さんたちの対比、キムンカムイの不器用な父親像、同じく本作初登場のキャラクター・アーザードのバックボーン…など、これまでの続編としてだけでなく、1本の映画作品としてかなり見応えがあった。丁寧に描かれた「家族」の物語が胸を打つ。
また他にも見どころとして、これまでとは比較にならないレベルの、迫力ある戦闘シーンが大量に盛り込まれていることが挙げられる。
以前からチラホラと戦闘シーン自体はあったものの、この映画における状況はシリーズ最大級の危機。よって必然的に、本気の戦闘シーンも増えるというわけだ。普段は見られないドラゴン達の本気には度肝を抜かれるだろう。終盤におけるトールの空中戦シーンは、「違うアニメを見に来たのではないか?」と疑うほどに演出が凝っており、トールファンは戦闘機のごときドッグファイトを繰り広げる彼女に惚れ直してしまう事間違いなしだ。
キャラクターの演出やお芝居もTVシリーズと変わらず可愛らしく、劇場の大音響・大画面で彼女たちの魅力に癒される。特にカンナファンは、才川のように「ぼへえぇぇぇぇぇぇ!!」と劇場で叫んでしまわぬよう注意されたい。
主題歌もとても良い。オープニングはお馴染みのfhánaが明るく楽しく彩り、エンディングは小林幸子女史によるしっとりとしたバラード。特にエンディングに関しては、「小林さん」繋がりによるネタ采配と侮るなかれ。歌詞やメロディーラインが映画の結末や余韻とベストマッチし、涙腺を緩ませてくる。
全体的なシリアスさはこれまでと比べても屈指のものだが、優しく暖かい作風は全く損なわれていない。これまで小林さんが積み重ねてきた絆が実を結ぶお祭り映画的側面もあり、追ってきたファンであれば間違い無く楽しめるだろう。
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