「画作りにこだわりを感じた実写化」秒速5センチメートル もちおさんの映画レビュー(感想・評価)
画作りにこだわりを感じた実写化
原作の信者である自分は、この映画の公開日を待ちわびていました。作品の出来がどうであれ二回は観に行く事を決めていました。
原作を元にしつつも新しい作品を作ったなという印象。
観賞後に心に残るものは原作とは大分異なるものになります。
初恋に呪われ過去に縛り付けられた男と初恋を糧に今を生きる女の対比を解りやすく強調して作られています。
この作品を見終えた時は、原作の様な強烈な喪失感は無く、僅な清々しさを感じられた良い作品でした。
原作ではあまり描かれなかったヒロイン、明里の内面がよく描かれているのがポイント。
印象的なシーンの再現度はとても高く、特に踏み切りのラストシーンは貴樹の動きまでを完全に再現しており、これはこだわって作ったなあという印象。
原作とそのファンに対する愛とリスペクトを感じました。
以下↓原作狂信者の戯れ言と難癖
キャスティングは概ね満足ではありましたが、若い方が多いからか、少し演技に気になる点がありました。
・貴樹が心境を語る様な場面では、自然でカジュアルな口調を出そう出そうと頑張っている様な物が伝わって来てしまいました。
・プラネタリウムを見終えて明里がパンフレットの中にある「遠野貴樹」の文字を見つけてしまった時、あそこは明里の心、感情が絶対に動く場面だと思うのですがそういった描写がなかった、あそこはもう少し魅せて欲しかった。
・小学生時代の明里役の子は本当に可愛らしく演技も上手で素晴らしく、他の方と同様自分も絶賛していますが、あえて難癖をつけるのであればこの子は少し可愛すぎた様に思えます。「篠原明里」という内気で周囲にうまく馴染めず、作中にもあった「明るくない子」を演じるにはこの子の表情は生命力に溢れすぎていた様に感じてしまいました。
また原作でいう「コスモナウト」に当たる高校時代のエピソードが作品全体での立ち位置を上手く確保できていない様に感じました。また自分が原作で最も好きな貴樹と花苗が夜丘の上からライトアップされた風車を見下ろすシーンを実写でどう表現するのかと期待していたのですが、夕焼けの平原という場面に変更されていたので、ここは単純に少しガッカリした所。
ただ澄田花苗役の森七菜さんの演技力は本当に凄かった、120点の出来で澄田花苗を演じられていたと思いました。今作のMVPかも。
とまあ色々言った所ではありますが
今までアニメ漫画原作の実写化と比べてもかなり満足のいく出来であった事は間違いなく
制作に携わった方々に感謝申し上げたいと思います。
