劇場公開日 2025年10月10日

「駄作」秒速5センチメートル kkrさんの映画レビュー(感想・評価)

1.0 駄作

2025年11月30日
PCから投稿

原作アニメ版のファンなので,実写化のニュースを見たときは興奮したが,トレーラー映像を見て,原作特有の奇妙さなどが感じられず,期待値がゼロになった.
観ない予定だったが,予定のない日に不運?にもこの映画の存在を思い出してしまったので,食わず嫌いせず見てみることにした.

終幕30分まではただただ苦痛.終幕付近のプラネタリウムのシーンや山崎まさよし流れるあたりは,これまで観てきて存在が謎だった原作との差分にようやく存在意義が出てくるのかと私の評価メータの針がほんの一瞬触れたが,結局最終的にはつまらない作品として終幕した.
館長に話を聞いてもらうシーンなんか,お涙頂戴が透けて見えてこちらの気分は最悪だった.あくびで涙が出る作品.

原作は,初恋相手に心がとりつかれて前に進めない貴樹と,対称的に前に進んだ明里のコントラストが,あらゆるシーンの中に暗示として散りばめられている.つまり直接的ではなく,セリフやシーンの中にある程度の抽象度や謎を含んだ状態で溶け込んでおり,その一つ一つの謎を含む表現を紐解いていくことで物語の真髄にたどりつくことができるという点で非常に示唆に富む作品であった.また,普通の作品と違って起承転結の要素が薄く,つまり物語としての結末はないため,ストーリーとしては奇妙である.この常識破りで奇妙さな作品が,ストーリーの順番や流れ,セリフ,描写,あらゆる表現で緻密に組み立てられているが故に,良さや感慨深さ,趣を生み出して評価された作品だ.
それを,ただ単にストーリーを上辺だけなぞって実写化し,原作にあったあらゆる示唆や良さを削り落とし,直接的な表現を増やし,謎の設定やシーン(タバコの発覚,カラオケ,その他諸々)を追加し,アオハル要素を見苦しく濃くしただけの駄作が本作である.これではただ珍妙なだけで,全く示唆に富まない.アオハルがやりたいなら他所でやってください.
実写化に伴うモチベーションは一体何だったのか,何がしたかったのか,深海氏は本当にこんな作品で満足しているのか.全く分からない.

kkr
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