劇場公開日 2025年10月10日

「大丈夫だから」秒速5センチメートル とぽとぽさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5 大丈夫だから

2025年10月29日
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昔出逢った大切なものは、今でも日常

大丈夫だから、この先もずっと大丈夫だから。
「I love you」=「月が綺麗ですね」人が生涯で出会う言葉は5万語以上。その中で、本当に必要なのに言葉にできなかった、たった一語。その一言を伝えられたなら未来は、今は変わっていたのだろうか?わからない。わからないけど、あの人が与えてくれたものはぜんぶ今の自分を形作っていて、自分と不可分なほど息づいているから。好きという言葉を、宇宙に伝えたい。ぼくらは世界とつながっている。
転勤族と一途な恋。夜明けのファーストキス、ファーストキスのすべて=『夜明けのすべて』『ファーストキス 1ST KISS』松村北斗と時を超える"初恋"、松村北斗とプラネタリウム。『夜明けのすべて』に続き、自分の殻に閉じこもって外界・他者と積極的には関わろうとしない松村北斗と、ヘラヘラ軟体動物モード(?)な物腰柔らかい高畑充希。どちらも他作品で演じているのを観たことがあるような役柄を安定に好演している。とりわけ東京という心を病むようにできた人混みの中で、社会の波にもまれてどうにかやっていくための術として、多くの人がそういうどちらかの振る舞いをしているのかもしれない、という共通性。
楽(らく)だけど楽しくない関係。29, 30…"あの頃"夢見た理想から現実へとシフトせざるを得なくなる中で悩んで腐って自分を押し殺していく年頃。そんな時にも支えるになる初恋(でなくても、若かりし日かつての人生を変えるような恋)の記憶と、応援歌。あるいは、通過儀礼か。観客は2人が出会うことを望むけど、物語的には会わないことにこそ意味とテーマがある踏切。
種子島パート「コスモナウト」の主人公、森七菜の演技がうまくて引き込まれた。体現する等身大の空気感あふれる高校生像と健気な一途のリアル・ピュアラブ感に、キュンと応援したくなった。あと気になったのが、貴樹があおいちゃん先生からタバコ叱られシーンと、現在パートの居酒屋日記語りシーンの計2回、突如入る真上からの"神の視点"俯瞰ショット。それも尺も短い。観ているときは「これなんだろう…」と謎で気になったけど、見進めていくと宇宙が本作の大きな要素だし、なんとなく腑に落ちた。
奥山由之の写真のような映像世界に、東宝では『8番出口』に続く今村圭佑の撮影。アニメ版みたいに章立てこそしていないものの、群像劇のように視点を変えながら時系列を入れ替え、時間軸が飛びながら語られるタイプの脚本・ストーリーテリングは、いわば観客とキャラクターを内面奥深くで結びつけようとするような語り口だ。つまり、人は自分の思い出や過去のことを振り返るときに必ず一から順序立てて思い出したり、他人に話したりするわけではないから。君の名は。

P.S. 新宿マン新海誠モニュメントも、One more time, One more chanceくらいマストで出てきます。あと、これだけは言いたい、幼少期の明里役が仕上がりすぎ!化ければ長澤まさみくらい大物になりそう。

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とぽとぽ
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