「アニメ版は好きじゃないのに」秒速5センチメートル kenshuchuさんの映画レビュー(感想・評価)
アニメ版は好きじゃないのに
恋愛においてよく言われる、「女は上書き」「男は別フォルダ」という説。個人差はあるが総じて共感できる人が多いんじゃないかと思う。アニメ版はまさにそんな感じで、男のセンチメンタル全開で好きだった女の子のことを引きずりまくっている貴樹の姿に共感できなかった。でもどこかで貴樹のことを理解していて、切なさは感じている自分もいたりする。個人的に評価している映画ではなかったが、それでも今回実写版を観ようと思ったのは、「アット・ザ・ベンチ」の奥山由之が監督していたから。
3つのパートに分かれているのはアニメ版と同じだが、クロスオーバーさせて一つの物語として再構成した感じ。さらに大人になった2人を描くのにオリジナル要素も追加したりして。アニメ版とは違いモノローグがほとんどなくなっていることも大きい。あぁ、自分はあのモノローグがダメだったのかもと思うくらいに。こうした演出でこれだけ見え方が異なるのかと驚いた。昔好きになった女の子を忘れられずに、目の前にいる女性に向き合えない男を描いているのは同じなのに。
あれ、別の結末が待っているのか?と思ったが、そこまでの改変はしなかったということか。もしかして?なんてちょっと思ってしまった。ここらへんが男の考え方なのかもしれないな。ボイジャーとか、2人を示唆するものが提示されているのにね。でも、2人ともあの思い出を大切にしていることが伝わる感じはとてもよかった。あれで貴樹も前に進んでいける。他の人ともちゃんと向き合えるようになってほしいと願う。
本作では、2人の役を演じている俳優たちがよかったのもある。森七菜もよかった。でもそんなこともすべてひっくるめて、一番の功労者は奥山由之監督なんじゃないか。アニメ版の映像の美しさをキチンと実写化したのは奥山由之監督の手腕な気がしてならない。実写化の大成功例と言えるだろう。
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