「奇跡の美しさと思い出を」秒速5センチメートル 猿田猿太郎さんの映画レビュー(感想・評価)
奇跡の美しさと思い出を
実写ならではの美しさ。初めから終わりまで見とれるばかり。高難度・季節限定のカット連発をよくぞ実現したということもあるけれど、実現したに留まらず、実写ならではのリアリズムの美しさを追い求めた結果でしょうか。
原作自体はかなり以前で、作中の年代も2009年だったから、はや16年前、かな。お話自体はネタバレも無いのかもしれないけれど、「再会するの? しないの? ああ、もどかしい」とハラハラしていたのは、原作を碌に見てない私だけだったのでしょうか。再会してゴールインしたら、それはそれで、ほっこり出来たような気がするけど、最後の最後までギリギリのすれ違いに胃腸をギリギリするほどのキレッキレの切なさ可憐さ美しさ。納得いかない、何とかならなかったのかと切なさに思わず言いたくなるけど、こうした物語の宿命なのでしょうか。
そうした辛さも湛えた美しさもあり、再び見るのが辛い気もするけど、自分のお気に入りシーンはやはりクライマックスの大きなリアル相合い傘でしょうか。こんなシーン、リアルで思い出に持ってる人なんて世界で何人いることだろうか。花びらの速度や出逢いの確立同様、統計を取って欲しいところ。こうした思い出の追体験がこの映画のキモでしょうか。
思い出と言えば、画面に映るアイテムも懐かしいですね。ぼんやりと並んだ漫画本は間違いなくドラゴンボール。もう知らない世代もいるんでしょうか。腕時計のG-SHOCKが歳を重ねてグレードアップしてましたね。型とか詳しくないけど1万程度から数万円ぐらいのグレードかな。劇中に聴いていたRADIO HEADのアルバム「パブロ・ハニー」も多くの人の青春の音楽なのでしょうか。名曲「CREEP」が有名ですが、それを流すかと思ったけど、歌詞が筋違いかな。
昨今、「鬼滅」とか「チェーンソー」とか壮絶バトルが活躍する中、絶対信頼できる美しいばかりの安心して見れる映画だったと思います。やっぱ切ないけど。
そういえば、又吉さんが本屋の店員をしてるってのがちょっと笑えました。
(追記)
切ない切ないと、見終わってから一晩ぐらい悶々と考えてしまったんですが、よくよく考えてみれば、二人がそれぞれに成長していく姿が描かれていたと思う。サーフボードから立ち上がる彼女、そして最後にやっと自分の思いを伝えた彼。切ない思い出を抱えながらも、二人の間を行き交う電車が分かち、それぞれに歩いて行く。とはいえ、振り返る彼氏の姿が、男女の違いを表現しているのでしょうか。元カノ・元カレに再会したがるのは男女どちらか、みたいなところか。
兎に角、切なく悲しい思い出を乗り越えて、実はポジティブな結末だったと云えるかも知れない。こうした物語の構成が改めて素晴らしいと思う。ハリウッド版とか作られそうなぐらい。でも、この邦画版をそのまま世界にぶつけて欲しい。もっともっと日本の映画界に頑張って欲しいから。
映画チケットがいつでも1,500円!
詳細は遷移先をご確認ください。
