劇場公開日 2025年10月10日

「繊細で純粋な恋物語、新海監督の原点ここにあり」秒速5センチメートル みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 繊細で純粋な恋物語、新海監督の原点ここにあり

2025年10月25日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

泣ける

癒される

典型的なすれ違いラブストーリーでありながら、美意識の高い映像と繊細で純粋な作風が深く心に刻まれる。原作者である新海誠監督の原点が静かに、しかし鮮明に蘇った感がある。

本作の主人公・遠野貴樹(松村北斗)は小学校時代に転校してきた篠原明里(高畑光希)と互いの孤独を癒すことで心を通わせるが明里の転校で離れ離れになる。中学1年の冬に栃木の岩舟で再会した二人は、2009年3月26日に同じ場所での再会を誓う。時は流れ2008年、貴樹はシステムエンジニアとして働きながら過去の想いに揺れ動く日々を過ごしていた。明里もまた過去の想いを抱きながら穏やかな日々を送っていた。やがて二人はそれぞれの過去の想いに静かに向き合い始めていく。

二人の会話は、幼い頃の純粋さから、思春期の揺らぎ、そして、大人としての覚悟に変化していく。そのプロセスが丁寧に描かれており、相互信頼、相互理解が愛に昇華していく様に心打たれる。特に子役の演技が秀逸で、表情や台詞に込めた想いが自然体であり、二人の関係性にリアリティを持たせている。

当初、二人は、心の中に封印していた想いを、人生経験、人間関係を通して少しずつ解放していく。その姿は青春の彷徨そのものであり、誰もが一度は経験する“言えなかった想い”と“踏み出せなかった一歩”を象徴している。私自身も、かつて言えなかった想いを抱えて彷徨していた時期があった。だからこそ、二人のカミングアウトには深く感情が重なった。同時にカミングアウトの大切さも実感できた。

ラストの踏切でのシーンが作品を静かに集約していて心に深く刻まれる。迷いを振り切って二人がそれぞれの人生を踏み出すことを示唆している。

人生には、想いを言葉にできないこともある。誰にも言えず、ひとりで抱え込むこともある。それでもなお、過去を断ち切ることで人生は前に進んでいく。本作は、迷いの中にいる全ての人たちに過去を抱えながら前に進む勇気を与えてくれる熱いメッセージである。

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みかずき
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