劇場公開日 2025年10月10日

「名作アニメの実写化なんだけど、単体の作品として完成度が極めて高い上に独自性を放っている一作」秒速5センチメートル yuiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 名作アニメの実写化なんだけど、単体の作品として完成度が極めて高い上に独自性を放っている一作

2025年10月13日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

前作『アット・ザ・ベンチ』(2024)ですでに証明済みだったけど、奥山由之監督は本作でも、薄暮や雪、桜と言った、作り手がコントロールのしようのないものを作劇に取り入れる才能がずば抜けています。

おそらくは気が遠くなるほど緻密な構図と撮影計画を立てた上で、それでも思い描いた通りの状況が起きてくれないと絶対に撮れないような映像を捉えて見せる、その周到さと執念には圧倒させられます。

そこに実写だからこそ、の真正性が映像に加わわり、本作の一カット一カットが結晶のように輝いています。

冒頭のモノローグと映像のコラージュからしてすでに、奥山作品としての作風を強く印象付けているんだけど、じゃあ新海誠監督の原作アニメのファンが観たら別物と受け取るのかと言えば、ここまで独自色を打ち出しながらも、要所要所で新海作品との連続性を感じさせるなど、原作を観た人が違和感を抱かないような配慮も行き届いています。

原作はいくつかの独立したエピソードをつなげていたけど、本作は一つの大きな物語の中に各エピソードの要素をちりばめる、という構成になっています。そのつなぎ目を結び付ける登場人物たちがいるんだけど、主人公である遠野高樹(北村北斗)と篠原明里(高畑充希)と親しいようでそれほど近くない、という関係の距離感が絶妙。

吉岡秀隆の達観した長老感が特にすばらしいです!

yui
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