劇場公開日 2025年10月10日

「新海監督自身がいま実写リメイクしたみたいな爽やかさ」秒速5センチメートル コージィ日本犬さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0 新海監督自身がいま実写リメイクしたみたいな爽やかさ

2025年10月10日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

私の好み的には、良き出来だと感じました。
むしろ、アニメ原作よりも好きかも。

アニメ原作を観た時は、想いのすれ違いとか、遠い日の甘酸っぱい思い出による切なさなどよりも……
「プログラマー的なSEの心の壊れっぷり」に戦慄し、また「この頃流行りの独白セリフで心情全て説明しちゃうタイプの作り方は時代性感じちゃうし、まだ当時の新海誠監督がメジャーになりきれない理由がわかる青臭さ」みたいなものを感じたものでした。
若干、主人公の内向的かつ自分勝手で自滅する様に、気持ち悪さも感じて。
お話し上のご都合優先に設定を作って、その説明に終始した、というところで、登場人物たちが人形っぽく情感が薄いというか、人間味がないというか。
しかも山崎さんの主題歌ばかりが印象に残り、あまり本編が思い出せず、舞台は参宮橋や小田急沿線なのに、「One more time, One more chance」だと桜木町ってなぜ?みたいな瑣末なことに意識がいったなー
みたいなことばかり思い起こします。
(山崎さんの歌はもともと、別の映画『月とキャベツ』の主題歌。新海監督が「秒速〜」にぴったりだったので山崎さんにお願いして流用させてもらったというのは、あとで知りました)
貶(けな)しているばかりではなく、爆発する前、開花寸前の、感情がエネルギーとなった奔流が閉じ込められていて出口を探しているみたいな気配も感じました。
また、この試み(私にとっては半分失敗に近い)があったからこそ、その後普遍的で支持されたものが作れたこともよく理解できるという、記念碑的&マイルストーン的なイメージがある、と褒めているつもりです。

しかし、本作は、実写化による役者の存在感も乗っかっているし、またアニメーションではボカシて、小説版で明確にした手紙の内容も明らかにし、また独白を減らして叙情的なシーンや会話によって心情を表し、どちらかというと「『君の名は。』以降の新海監督が自身でリメイクした」みたいな爽やかな演出がされていて。

すとん、と腑に落ちて、「これは切ないや」という感慨が突出してました。

本作だと、アニメ原作ではあえて曖昧にすることで余韻を生んだところまで、しっかり表現して見せてしまい、ストレートすぎて外連味は少なくなったかもしれませんが。

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