劇場公開日 2025年9月19日

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「破壊された街で芽生える種族を超えた友情の永遠」ブラックドッグ 清藤秀人さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0 破壊された街で芽生える種族を超えた友情の永遠

2025年9月21日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

興奮

驚く

去年の東京国際映画祭で観て以来、あの衝撃が今も治らない。

物語はシンプルで強烈だ。北京オリンピック前の中国、ゴビ砂漠の端にある街は荒廃し、至る所で飼い主を無くした野良犬たちが徘徊している。みんな、街を捨てて出て行ったのだ。オリンピックのためのインフラ整備はもとあった人々の営みを完全に破壊し、希望のかけらもない、廃墟を作り出している。文明とは、発展とは、なんと酷いことをするものか!?

そんな故郷の街に刑期を終えて戻ってきた主人公の青年、ランが、決して野良犬退治の網に引っかからず、群れから外れて生きる一匹の犬と出会い、不思議な友情で結ばれていく。取り残された者同士が、種族を超えた関係性をじわじわと作り上げていくプロセスは、無音で力強く、時に笑いを含み、吹き荒ぶ砂嵐に立ち向かう勇気と希望を観客にも与えてくれる。

中国とは言わず、世界のあちこちで起きている破壊の実態を人間と犬の関係性に集約させた映画は、ランを演じるエディ・ポンと犬を演じる天才犬、シンの名コンビが奏でるハーモニーに大きく助けられている。調べてみたら、撮影終了後、ポンとシンは一緒に暮らしているとか。廃墟で生まれた友情は長く尊いのだ。

清藤秀人