「カンヌには出せないが、伝わる“熱さ”に拍手」劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室 南海ミッション 泣き虫オヤジさんの映画レビュー(感想・評価)
カンヌには出せないが、伝わる“熱さ”に拍手
TVドラマも観ていたし、劇場版の前作も楽しめたので、公開を楽しみにしていた。
【物語】
「TOKYO MER」の活躍が評価され、全国の主要都市に厚労省が統括するMERが続々と誕生する中、沖縄・鹿児島の離島地域にも小型フェリーに緊急救命車両を乗せて機動的に緊急事案に対応する南海MERの試験運用が開始されていた。
人員体制・設備とも各主要都市MERに劣る南海MERにはTOKYO MERの医師・喜多見幸太(鈴木亮平)と看護師・蔵前夏梅(菜々緒)が指導スタッフとして派遣される。 しかし、平穏な日々が続き活躍の機会も無いまま試験期間6か月が終わろうとしていた。 救命実績の無いままでは南海MERの本運用移行は無いと南海MERメンバーが焦り始めていたが、初めての出動要請が掛かり、駆け付ける。しかしチーフ牧志(江口洋介)の判断で現地対応を諦め患者を救急ヘリにて本土に搬送する。
やっと巡って来た活躍の場を逃したことにチームメンバーは落胆し、牧志への不満を募らせる。そんな中、小島での火山大噴火により、島民に多数のけが人が発生する大規模緊急事案が発生する。
南海MERは島に向かうが、激しい噴火により島に近づくことさえ厚労省本部に止められる。そうしている間にもけが人だけでなく、島民全員の命に危険が迫る。牧志と喜多見は島への上陸強行を決断するが、・・・
【感想】
大いに楽しむことができた。
ハッキリ言って、展開はベタだし、芸術性のかけらも無い作品だが、制作の熱量は存分に伝わって来た。
まず感心したのは噴火、噴石、溶岩流の映像。言うまでもなくCGに決まっている(一部どこかの火山の実映像を使っていそうだが)が、その出来が良い。予算規模で言えば、邦画の中では金をかけていそうな本作でもハリウッド大作の1/10にも満たないであろう中で、邦画でもここまで作れるようになったのかと思える迫真の映像。特に溶岩流には感心した。
展開的にも、危機、また危機、手に汗握るシーンがこれでもかこれでもかと連続。これもミッション・インポッシブルシリーズ等ハリウッド大作では時々経験するが、邦画では初めてかも。 そこにはCG・特撮に金を掛けているだけでなく、脚本制作の段階で相当時間を掛けているであろうことが感じられた。
キャスト的にも南海MERメンバーとして加わった、江口洋介、宮澤エマ、高杉真宙、生見愛瑠が上手く機能していた。特に「ボンクラに見えていざとなると熱く有能なリーダー」を演じた江口がハマっていた。
鈴木亮平、菜々緒以外のオリジナルメンバーの出番は少ないが、クライマックスでしっかり登場させるシリーズファンへの心遣いも抜かりない。
最初に書いたように“芸術性”は全くと言って良いほど無く、“高尚”の対極にあるような作品だが、そういうことは潔く捨て去って、娯楽性を熱く追い求めた作品。そういう作品も有って良いと思うし、それを突き詰めたことを称賛したい。
