「医療関係者のみならず人命を救おうとする人たちが感動させてくれる大傑作」劇場版TOKYO MER 走る緊急救命室 南海ミッション アラ古希さんの映画レビュー(感想・評価)
医療関係者のみならず人命を救おうとする人たちが感動させてくれる大傑作
テレビドラマ放映から4年、劇場版1作目から2年目の劇場版2作目である。前作では、横浜ランドマークタワーで発生した放火爆発事件を舞台として、コミュニティーとしての連携が希薄な被害者たちの中での救急救命業務が描かれ、自分の妻や子が巻き込まれるという切実な状況での、目の前の命を救うための手に汗握る活動が、見る者の胸を打つ大変な傑作だった。
今作では、鹿児島からトカラ列島および沖縄までを網羅する海洋救急救命チームの試験運用中に起きた火山の噴火が舞台である。島民は全部で 79 人という非常に小さなコミュニティーで、その分お互いが深い顔見知りという環境での話になっていて、前作とは大きく事情が違っていた。それを活かした脚本がとにかく見事で非常に引き込まれた。
映像で特筆すべきなのは何と言っても噴火のリアリティが物凄いことである。CG なのだろうが、噴火や溶岩の流出、更には火砕流の発生などが、熱まで伝わって来そうなほど迫力に満ちていた。あの噴火シーンが見られただけでも、チケット代の元が取れた気になった。噴石が飛んで来てすぐ近くにけたたましく落下したり、人に当たったりする時の察するに余りある痛みは、「プライベート ライアン」などの戦争映画で敵の銃弾が自分をかすめて飛んでいくような緊張感を彷彿とさせた。
中央司令部からの指示も非常に妥当なものであり、島からできるだけ距離をとって海自や海保の船の到着を待てというのは至極真っ当な指示だったが、島民を救いたいというチームドクターの意欲と、歩いてでも行くという決意の強さに痺れた。船に残ったメンバーの機転と実行力にも感心させられた。
今作で最も胸を打つのは、人命を救いたいという熱意であるが、それは医療関係者ばかりのものではない。乗せられる人数が極めて限られる船に、怪我人や子供を優先して、自分たちは残ると決意する人々の覚悟や、船の燃料を節約するために多くの島民のとった行動には涙が出るほど感動させられた。これこそが地域の繋がりの強さであり、日本人ならではの絆の強さなのだと胸が熱くなった。
鈴木亮平をはじめとする東京 MER のメンバーも総出演しているが、南海 MER の新たなメンバーも非常に魅力的な顔ぶれで、それぞれ個性的だった。特に江口洋介が演じた牧志医師は、最初の印象からがらりと変わった終盤の人柄が素晴らしかったし、島民麦生役を演じた玉山鉄二の存在感も非常に魅力的だった。
船に車両に飛行機と、使える手立ては惜しみなく使ってみせた中央の対応も見事だったし、その見せ方もそれぞれ待ってましたと言いたくなるほど魅力的だった。音楽も人物の内面から状況の切迫感まで物語に寄り添うように奏でられていて不可欠なものだった。映画館で観るべき映画である。
(映像5+脚本5+役者5+音楽5+演出5)×4= 100 点。
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