「パレスチナの吟(うた)という題名」ガザ=ストロフ パレスチナの吟(うた) lumièreさんの映画レビュー(感想・評価)

4.5 パレスチナの吟(うた)という題名

2025年7月7日
PCから投稿
鑑賞方法:その他

パレスチナの人々の知性に圧倒された。
この映画を観ると、彼らが教育をだいじにする民だということがよくわかる。

だが、それ以上に、本で得た知識、学校で教わった知識とはちがう、"哲学"を語る彼らに驚かされた。特にエンディング近くに出てくる男性がすごい。韻を踏んだ詩的な言いまわしで、パレスチナ人の怒りや決意、世界とパレスチナといった内容を滔々と語るその姿は、叙事詩を吟ずる詩人のように見えた。
この人はいったい何者なのか。そう思ったのは私だけではなかったようで、上映後の質疑応答でその話題が出ると、驚きの答えが。
昨年、パレスチナ映画特集の一環として上映したアップリンクの上映後トークの記録に、この男性についての説明があるので、ぜひ読んでみていただきたい(注1)。
質疑応答で補足説明をされた中東ジャーナリストの川上泰徳さんによると、この地域ではふつうの市民の中に時々、こういう詩人や哲学者のような人がいるのだそうだ。

あの言葉を聞くためだけでも、もう一度この映画を観たい。2008年のイスラエルによるガザ侵攻についての映画なので、けっして楽しいばかりの内容ではないのだが、その重苦しい空気を一瞬吹きとばしてくれるような圧倒的な語りだった。
映画にはほかに、パレスチナを代表する詩人、マフムード・ダルウィーシュの詩が随所に挟みこまれていて、惹きつけられた。副題の「パレスチナの吟(うた)」も「吟(うた)」を「詩」と考えると納得がいく。

配給は、東京外語大を卒業した三人の女性が立ち上げた団体(注2)がボランティアで行なっているという。
自主上映にも積極的に対応しているようだが、なんとかしてもっと大々的に全国で公開できないものか。

注1 アップリンクのアフタートークの記録は、「Dice+」というページで「ガザ=ストロフ-パレスチナの吟(うた)-」を検索すると出てくる)。
注2 配給団体のWebページは「Gaza Strophe」、Xのアカウントは「ガザ=ストロフ-パレスチナの吟(うた)-」。

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lumière