劇場公開日 2025年2月28日

「さまようしかなかった」名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN Eijiさんの映画レビュー(感想・評価)

4.0さまようしかなかった

2025年3月11日
iPhoneアプリから投稿
鑑賞方法:映画館

一人の偉大なシンガーの半生をみせられたというより、当時のアメリカ、社会環境を振り返らせてもらえた、そんな印象をもたせてくれる作品でした。
ただ呼吸するようにイキイキと歌がつむがれる前半と周囲の見る目や接し方が変わってしまったことが原因で息をしづらくなっていく後半の対比が面白かったです。そしてそれが生きづらくなっていく社会を映していたようにも思えました。
孤独な存在という印象が強いシンガーも当然ながら、彼を認めて世に出してくれた人、黙って寄り添ってくれた人、才能を認め合う人等、様々な人たちとのご縁のもと存在していました。そんな様子も感慨深くみせてもらえました。そうした人たちへの想いがあったからこそ、自身を貫いていくことができた、そんな風にもみえました。

シルエットまでボブ・ディランになっていたティモシー・シャラメは言葉にならないほど見事でしたが、彼の側に立ち続けたジョーンを演じたモニカ・バルバロも光っていました。

かの名曲に対して「何なのこれ?」という問いに対して「さあな」って答える、このやり取りが印象的でした。
何を目的に、どんな想いで、歌をつくり歌っていたのか、その答えは彼自身も分かっていなかったのかなー、なんて思わせてくれるストーリーでした。

Eiji