「音楽映画として楽しもう!」名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN こじさんの映画レビュー(感想・評価)
音楽映画として楽しもう!
まず最初に、ボブ・ディランをよく知らない、もしくは代表曲(「風に吹かれて」「ライク・ア・ローリング・ストーン」)を知っている程度の人間による拙い感想ですので、大目に見ていただけると幸いです。
この映画の良かった点は、何よりもボブ・ディランの音楽そのものでしょう。
ボブ・ディラン(厳密に言えばティモシー・シャラメ)が実際に唄っている姿を目撃し、劇中の全ての人物が当時受けたであろう衝撃を追体験できます。
「やべえ、この若者只者じゃないぞ!まさしく才能の塊やん!」と。
純粋にボブ・ディランの名曲群を楽しめる良質な音楽映画だと思います。合わせてボブ・ディランが台頭した当時の音楽の流行も興味深く見ることができました(ビートルズ以前のロック夜明け前的な感じとか。)。
一方、あんまりだった点としては、ボブ・ディランが浮世離れした人間なので、凡人の自分には彼の行動原理に全く共感できませんでした。
特に、名も無き者である彼を温かく迎え入れ、彼の才能を信じ、惜しげもなくサポートしてきた人たち(しかも皆とても素敵な人たち)を傷付けてでも自分の哲学を貫こうとする姿勢には、嫌悪感さえ感じてしまいした。
そのほかにも、やれ「俺は孤独だ」、「周りの期待(重荷)にはうんざりだ」、といった苦悩や、スターが必ず通る「酒、ドラッグ、女」など、スター伝記映画あるあるとも言える既視感のある描写が続き、カタルシスや感動といったものは自分の中には芽生えませんでした。
まあ、「あれがボブ・ディランだから」と言われてしまえばそれまでなんですけど・・・。
ボブ・ディランのことを熟知して、彼のことが大好きな人はきっとニヤニヤしながら楽しく鑑賞できる内容だと思います。