「息をするように音楽が生まれていく」名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN 猫柴さんの映画レビュー(感想・評価)
息をするように音楽が生まれていく
俳優の役として、実在の人物でさらにミュージシャンを演ずると言うことがどれほど難しいことか素人が想像できる範疇を超えてきたシャラメの演技にまずは大喝采。
5年半の年月をギター、ハープ、歌に費やしたといえど
誰もが聞いたことのあるあの声で歌うというのは感服。
ジョーン役のモニカもそれまで歌も楽器も未経験だったとは実際のジョーンの歌声は知識不足で知らないのですが
映画のジョーンの声はとても美しいです。
ボブがウッディガスリーに会いにヒッチハイクで上京するところから物語は始まるが、それ以降5年ほどの自伝的映画の中で彼の生い立ちや家族についてほぼ語られることはなく、ただただ、出会った人や時代から影響を受けて
息をする様に音楽と詩を生み出していく。
朝起きてすぐにギターを掴むところや、女性の部屋を訪れてコトの後にすぐに作詞を始める姿
そして、ライブの曲目も事前に考えたくないと言う姿
『今』を生きてるボブには
フォークもロックも伝統も関係なくなんの型も必要ない。
ただ進み続ける彼が時に立ち止まって
ウッディやシルビーに会いに行く姿は
過去を語らないボブの家族の様にも見えた。
欲を言えば、ボヘミアンラプソディのように
名曲が生まれる瞬間をもっとじっくりと観たかった。
ライクアローリングストーンのオルガンの音はあんな風に唐突にいれられたのか!
と言うところは見ものだった。
ボブの爪が汚いところが映画を観て気になったが
パンフレットによると、事前にボブの事を綿密に調べたメイクさんのあえての演出だったそうで感服。
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