劇場公開日 2025年2月28日

「変人で女好き、でも芯は強い」名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN regencyさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0変人で女好き、でも芯は強い

2025年2月21日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会

興奮

萌える

ボブ・ディランの事は、存在は知っていても楽曲はほとんど知らず、どっかで耳にした事あるなという認識の曲がいくつかある程度。それでもティモシー・シャラメのなりきりぶりには感服する。というかティモシーもそうだが、ジョーン・バエズ役のモニカ・バルバロやピート・シーガー役のエドワード・ノートンといった、実在人物を演じたキャスト全員が自分の肉声で歌っているというのも凄い。特筆したいのはディランの楽曲に歌詞字幕を付けている点。そんな事で?と思うかもしれないが、著作権事情で歌詞が出ない作品も少なくない中、これはホントに有難い。
デビュー直前の1961年から始まり、シンガーソングライターとして名を成すも、フォークだけの歌手として括られるのに辟易し、65年のニューポート・フォーク・フェスティバルでエレキギターをかき鳴らすまでを描く本作。実際のディランは知らないものの、なんとなく変わり者というイメージを抱いていたが、本作での彼もやっぱりそう。とっつきにくくて女にだらしない。でも早世したミュージシャンのようにドラッグや酒で身を滅ぼすことなく、寝る間も惜しんでひたすら作曲活動に励む。ジャンルに囚われたくないと、ナイーブそうに見えて芯が通っているディランを描くのに、『3時10分、決断のとき』、『フォードvsフェラーリ』などタフで骨太な作品を撮らせたら天下一品のジェームズ・マンゴールド監督はハマっていた。前監督作『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』の酷さは何だったのか…
ディランをよく知らない自分でさえも楽しめたのだから、ディランを愛するファンなら満足するのでは…いや、してほしい。

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