劇場公開日 2025年2月28日

名もなき者 A COMPLETE UNKNOWNのレビュー・感想・評価

全184件中、1~20件目を表示

4.0キャストの生歌唱が圧巻、音楽映画として見応えあり

2025年3月1日
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ニコ

3.5似ているがゆえの不気味の谷現象

2025年2月28日
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映画.comのインタビュー記事で、監督が「天才がやってきて、事を成して世界を変えて旅立っていく寓話」と表現していて、なるほどと思った。この映画では、登場したときからディランは天才で、その天才っぷりを堂々と見せつけて、次のステージへと進んでいく。表現者の物語として、いささか盤石すぎやしませんかと感じてしまったが、天才が降ってきて去っていく寓話なのだと思えば、合点がいくといえば合点がいく。

とはいえ熱狂的なディランファンではないが、それなりに聴いたり読んだり聞いたりしてきた者としては、あまりにも有名なエピソードが連なっていて新鮮味には欠ける。ディランというひとは究極のカッコつけだと思っていて、実像と虚像の間にある矛盾にこそ興味があるのだけれど、矛盾に踏み込んでいるのはサーカス出身というホラ話くらいで、むしろディラン伝説の背景にいた人たちを通じて時代の空気みたいなものを感じられたことが良かった。

シャラメの演技や歌に関しては、最初に書いたように寓話であるなら納得はできるが、正直、とても似せていることで自分の中で「不気味の谷現象」が起きてしまっていた。街でシャラメが歌うボブ・ディランがかかっていても、劇中の歌に耳を澄ませてみても、どうしても近似値であるがゆえの差異が気になって、「これはディランではない」と思ってしまうのだ。

贅沢を言うと、伝記映画が完全にそっくりである必要はなく、核のようなものをつかんでくれていれば、あとはこちらが脳内補完しながら「この映画のディランはコレだ!」と思って楽しむことができる。例えばオースティン・バトラーの『エルヴィス』は成り切ってはいたがすごく似ているのとは違って、むしろエルヴィスのエネルギーを演じているようなところがあった。コロナ禍で練習する時間がわんさかできて、シャラメがよりディランに近づけて歌ったり演奏できるようになったと聞くが、むしろコロナ禍前の状態で聴いてみたかった気がする。

まあ、この辺の印象は、ディランにどんなイメージを持っているか、持っていないかによって大きく異なると思いますが。

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村山章

5.0シャラメの弾き語りが素晴らしい、最高の音楽映画

2025年2月28日
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悲しい

楽しい

萌える

本作については当サイトの新作評論とジェームズ・マンゴールド監督インタビュー記事の2本を寄稿したので、ここでは記事で書ききれなかったトリビアなどを紹介したい。

ティモシー・シャラメがボブ・ディランを演じる本作の企画が始動してから、コロナ禍と業界ストライキの影響で製作が5年停滞し、その期間にシャラメは歌とギターとハーモニカを猛特訓した。シャラメ自身が歌った音源が本編で使われ、それがディラン曲の魅力を見事に表現しており素晴らしいのは各所で紹介されている通り。

ただ、資料などを見てもギター演奏の音源が使われたかどうかは確認できなかったので、マンゴールド監督に直接尋ねてみた。すると、アコースティックギターの演奏も確かにシャラメが弾いた音源を使っているとのこと。ヴォーカルのわずかなピッチのずれやギターの細かなミスタッチなどは録音後にデジタル編集で修正しているものの、間違いなくシャラメ自身の演奏で、プロのミュージシャンによる音源を差し替えたりはしていない。さらに、序盤のウディ・ガスリーの病室で弾き語るシーンでは、修正を一切せずシャラメが弾き語った音源をそのまま採用したことも教えてくれた。

プロのミュージシャンが出演した映画や、元々俳優業と音楽活動の二足のわらじで活躍しているスターの出演作は別として、専業の俳優が自身の歌と演奏を披露した音楽映画としては歴代最高レベルの出来だと個人的に思う。近年ではラミ・マレック主演作「ボヘミアン・ラプソディ」が大ヒットし評価も高かったが、歌はフレディ・マーキュリーの音源に差し替えられており、つまりはフレディの超絶ヴォーカルとクイーンのバンドサウンドの魅力に負う部分が大きい。もちろん、「名もなき者 A COMPLETE UNKNOWN」の場合は扱う音楽ジャンルがフォークだったことも重要だろう。マンゴールド監督はフォークが歌い手のありのままの声を大切にする音楽であり、俳優の演技に別の歌手の音源をあてた映像では真実味から遠くなる、嘘っぽくなるという趣旨のことも話していた。だからこそ、シャラメの弾き語りが単なるディランの物真似でなく、シャラメの人間味を感じさせる表現になることが鍵だったし、彼の特別な献身がそれを可能にしたのだろう。

評論で書いたように、本作は音楽映画としてだけでなく、周囲の人々も描く人間劇、60年代前半の米社会の激動期を伝える実録としても楽しめる。音楽好きのみならず、幅広い映画ファンにおすすめしたい傑作だ。

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高森 郁哉

4.5贅沢で厚みと深みと高揚感に満ちている

2025年2月28日
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ディランについて代表的な数曲くらいしか素養のない自分だが、本作は直球で胸を貫いた。マンゴールドの演出が観客を裏切らない手堅さと人の情を持ち合わせていることは明らかだが、車でフラリと現れる若者がいざ病室でギターを奏でるや、キンと響く歌声がその場の空気を豹変させていく魔法のような瞬間をマンゴールドは不意に涙があふれるほど絶妙に捉えている。これは生まれてから老いるまでを網羅した伝記ではない。描かれるのはキャリアのほんの初期にあたる60年代だ。シャラメは天賦の才能に満ちそれでいて転石の如く変わり続けるカリスマを見事なパフォーマンスで体現。彼ならではのディラン像と独特の歌声が溢れゆく様はどこを取っても至福と呼べるほど素晴らしい。と同時にノートンを始め共演陣がどれも実にいいのだ。彼らがいるからこそシャラメ=ディランは輝く。ゆったりと贅沢で厚みと深みがあり、伝説が生まれる高揚に満ちた141分と言えよう。

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牛津厚信

4.5フォークのメロディがいっぱいの幸せな人物伝

2025年2月26日
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楽しい

興奮

ボブ・ディランが若い頃から耳に残るメロディで人を惹きつけ、女性たちにも愛され、時代の波を転がりながらサーフしていく。フォークソングの枠に収まることを嫌ったディランは、そうしてジャンルを超えたメロディメーカーとして選ばれた人生を流れるように突き進んでいく。

そんなディランの若き日を監督のジェームズ・マンゴールドはマニアック過ぎず、奇をてらわず、過剰なドラマ演出を排し、時代を彩ったフォークソングを全編に溢れさせながら再現している。そこがいい。これはギターとフォークに夢中になった'60年代世代はもちろん、ディランを知らない世代もギターの爪引きと歌声に取り込まれる贅沢で幸せな時間だ。

だから当然、ディランを演じるティモシー・シャラメをはじめ、実在の人物を演じる俳優たちは全員、吹き替えなしで撮影に臨んでいる。まるでフォークソングで時代を描いた映画のようでありながら、しかし、最後はボブ・ディランという天才の人とは違う生き方に着地させる。さりげなく、巧みな構成は今年のオスカー候補作の中でも抜き出た存在だ。

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清藤秀人

4.5The Artist's Burden

2025年1月30日
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楽しい

興奮

Chalamet is the weirdo with sex appeal that perfectly matches Bob Dylan's persona. Even if one is not a Dylan fan, Chalamet's guitar and vocal rendition makes it one of the most impressive and toe-tapping musical biopics in God knows how long. Complete Unkown catches the gist of 60's America, culturally revolutionizing itself in the Cold War, while this film is at ease having fun with itself.

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Dan Knighton

3.0名も無き私へ 気分はどう?

2025年3月4日
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 かつてフォークの神様こと、岡林信康が、エレキギターを使うバンドを引き連れて、ステージに上がったことがあるそうです。全くウケなかったそうです。そのバンドとは、はっぴぃえんど。後の邦楽業界に、少なからず影響を残すメンバーが、そこにいたわけです。

 時代は、変わるものですね。

 ボブ兄さんに、ほとんど興味のない私です。強いて言えば、清志郎が、無理やり日本語カバーした曲、聴いていたな。そんなわけで、逆に抵抗なく映画を観ていました。
 カッコ良すぎて、真似のしようもありません。赤狩り、公民権運動、ベトナム戦争、そして大統領暗殺。そんな激動の時代から逃げることなく、唄い続ける、問い続ける。決して留まらない。他者におもねることもない。

 まるで、転がり続ける石のように。

 そう云えば最近のアメリカの音楽業界、フォークとか、カントリーとかジャンルを超えた、ボーダーレスなスタイルの曲が増えているそうです。そもそも、ジャンル分けして、レッテル貼り付けて、区分けしているほうが、オールドタイプだよね。とはいえ、やはりエンタメには、自分の見たいもの、聴きたいものを期待しちゃうわけです。そんな名も無き私に、ボブ兄さんの新曲が問いかけます。

 気分はどうだい?。

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機動戦士・チャングム

4.0Like a Rolling Stone

2025年3月4日
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ブレミン

4.5まるでライブ会場にいるような

2025年3月3日
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吹き替えなしの演奏に驚きました。5年くらい準備期間があったから、だそうですが、ギターも上手く、歌もディランでストーリーに没入できました。
派手なアクションやSFでもなくIMAXで見るのを迷いましたが、IMAXで見て良かったです。
あの、伝説のライブを体験しているかのような感じ。
ボブ・ディランは何度かライブに行ったけど時に無愛想で全然エンターテイメントではない。1番好きなミュージシャンでもない。
だけど間違いなく、今まで生きてきて1番好きな曲は『ライク・ア・ローリング・ストーン』です。
その誕生の瞬間とも言えるライブを見られて(ホントのライブではないけれど)感動しました。

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さくさく

5.0ボブ・ディランの歌声も完コピ!

2025年3月3日
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ティモシー・シャラメがボブ・ディランにしか見えない。
フォークソングの定義に縛られるのが大嫌いで自分の音楽を突き詰めるから、
周りの仲間や観客の反感を買うこともある。
それでも曲げずに突き進む。

シーンごとに歌う曲が、
主人公の心情や本音を表してるのが良い。

ナレーションや心の声だと分かりやすいが、
面白さが減っていく。

アーティストを題材にしたからこそできる演出であり、
マンゴールド監督の作風の癖である"人間臭さ"が
表現されている。

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kuta

4.5ボブ・ディランを知っていますか…⭐︎

2025年3月3日
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今やある意味「伝説の人」になってしまったようなボブ・ディランの若き日を描く物語。
とにかく、皆さんのレビュー通りティモシー・シャラメのディランが素晴らしい。
そして、彼がデビューした時代感満載にして物語は進む。
60年代のアメリカ。
本当にキューバ危機、ケネディ大統領の暗殺等、作り話ではないかと思えるような事件が
次から次へと起こる。
その時にon timeで彼の歌を聴いていた人にはたまらない作品だと思う。

ジョーン・バエズ、ウディ・ガスリー、ピート・シーガーなど歴史上の人のようなミュージシャンが
登場して、あの頃の音楽を少しでも知っている人はそれだけで充分楽しめるのでは。
バエズを演じるモニカ・バルバロの歌声もすごく良い。

「ボヘミアン・ラプソディ」と同じミュージシャンの物語だけれどジャンルが違うような気がする。

自分自身の状況に疑問を抱くように、フォークフェスでフォークからロックに変貌していくディラン。
年上の知人もエレキギターを使い出した時の不評のことを話していたことがあった。

でも、やはりディランはディラン。
天才なんだと思った。

ただ、「風に吹かれて」、「時代は変る」、「ライク・ア・ローリング・ストーン」などディランの曲を
少しは聴いたことがある人でないと興味が持てない映画かも。
そういった意味では、見る人を選ぶ作品。

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☆ムーミン

4.0シャラメが素晴らしい

2025年3月3日
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笑える

興奮

知的

1961年の冬、ギターとわずかなお金を持ってニューヨークへとやって来た19歳の無名のミュージシャン・ボブ・ディランが、恋人となるシルヴィや音楽上のパートナーで歌手のジョーン・バエズ、そして、ウディ・ガスリーやピート・シーガーら先輩ミュージシャンたちと出会い、彼の天才的メロディの創造力と画期的な歌詞、そして魅力的な歌声で注目を集めていった。そして、フォーク界のプリンスと言われるようになったが、次第に違和感を抱くようになったディランは1965年のニューポートフォークフェスティバルで・・・という若い頃のボブディランの話。

タバコを吸い、酒を飲み、クスリもやり、女を抱き、作詞作曲をし、・・・ボブ・ディランの天才ぶりがよくわかる作品。
そしてディラン役のティモシー・シャラメが素晴らしい。ギターも弾けるし歌も上手かった。あの顔であの音楽センスを持ってたらそりゃあモテるわ。
ジョーン・バエズ役のモニカ・バルバロの歌声も素敵だった。
シャラメにアカデミー賞主演男優賞を取って欲しかったが、残念だった。

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りあの

4.0薄っすらでもボブ・ディランに関する見識を持って臨んだほうが良い作品...

2025年3月3日
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薄っすらでもボブ・ディランに関する見識を持って臨んだほうが良い作品だなとも思ったが、それを補って余りある圧巻のシャラメ力!他の演者陣の表現力・歌唱力も素晴らしかった(そこにつきる感もあるが)。良作。

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こち

3.5音楽映画として楽しもう!

2025年3月3日
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こじ

5.0ティモシー・シャラメの本気と役者魂

2025年3月3日
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興奮

幸せ

萌える

若き日のボブ・ディランを描いた秀作。演奏シーンの完成度が半端ない。驚愕の出来映えでした。
それもそのはずティモシーは5年かけてディランの楽曲に取り組んで50曲を演奏できるように仕上げたうえでライブ演奏で収録してしているとの事です。ファンタスティックと叫びたくなります。素晴らしい。
エル・ファニング、モニカ・バルバロなど共演者の皆さんの演技も素晴らしくあっという間に終わってしまったという感じです。絶対映画館観るべき秀作です。
是非映画館で🎦

24

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タイガー力石

4.5青春の孤独と疾走する葛藤

2025年3月3日
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知的

幸せ

ボブディランの初期の自伝的映画。
60年代の世相とカルチャーを再現して、ティモシー・シャラメがボブディラン役を見事に演じている。
恋人との出会いと別れ、バイクでの疾走に青春の孤独と新しい希望のざわめきに感じたのは、アーティストの自伝映画だからか。
作品の終盤、ボブディランが観客が望むフォークソング(タンブリングマン、風に吹かれて)を唄わずに、ロック調のバンド編成のスタイルに観客が暴動を起こすシーンに、大ヒットの定番を聴きたい観客と、新しく進化したサウンドを聴かせたいアーティストの認識のずれが描かせて、アーティストのジレンマを上手く表現していた。
そして恋人が皿回しの皿になりたくないと、ボブディランから去るシーンに、メジャーに行ってしまう寂しさの心理なのかと感じたのは、考え過ぎか。
春は別れと出会いの季節。
いま観る事で何かを感じる傑作です

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マコト

4.5ティモシー・シャラメの覚醒

2025年3月3日
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DUNE砂の惑星で既に大作の主役を張っているものの、線の細さから大物感が出ていなかったティモシー・シャラメが、ボブ・ディランを演じて表現者として一気に覚醒した一作になった。
ストーリーは盛りすぎもせず、引きすぎもせずテンポがとても良かったつまらない演出(騙しや嫉妬)を省き、ひたすらにディランをヒーロー化していった。
すっきりと終えていて、とてもいい具合のストーリーテリングだったと思う。
作中の照明には、上手さを感じました、昼も夜もとにかく光の使い方が良かった。
60年代の暗さと出しながら、ヒッピーを無理に出さないのも更に良さをブーストさせていると思う。

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おっちょ

4.0孤高の天才ミュージシャンが駆け抜けた、一つの時代

2025年3月3日
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楽しい

興奮

伝説のミュージシャン、ボブ・ディランの若き日の姿を描く伝記映画。2015年のイライジャ・ウォルド著『Dylan Goes Electric!』原作。ボブ・ディラン役にティモシー・シャラメ、劇中では実に40曲もの生歌を披露している。彼を世話するフォークソング歌手ピート・シーガー役に演技派俳優エドワード・ノートン。女性フォークソング歌手ジョーン・バエズ役に『トップガン/マーヴェリック』(2022)のモニカ・バルバロ。ボブの恋人シルヴィ役に『メアリーの総て』(2017)のエル・ファニング。監督・脚本に『フォードvsフェラーリ』(2019)のジェームズ・マンゴールド。その他脚本にジェイ・コックス。

1961年、ヒッチハイクでニューヨークにやって来た20歳の若き青年ボブ・ディラン(出生名:ロバート・アレン・ジマーマン)は、ニュージャージー州の精神病院で療養中の尊敬するフォークソング歌手ウディ・ガスリーを見舞いに訪れる。ウディに曲を披露するよう求められたボブは、ウディと彼の友人であるピート・シーガーの前で自作の曲を披露。
ボブの天性の才能に目を付けたピートは、彼を家に招き、クラブや教会で演奏させる。ボブは教会で知り合ったシルヴィ・ルッソと恋仲となり、同棲を始める。
やがて、ボブの実力はタイムズ紙の評論もあって次第に拡散されていく。しかし、レコードデビュー作『ボブ・ディラン』の売り上げは、既に人気アーティストとなっていたジョーン・バエズには遠く及ばなかった。そんなある日、米ソ間によるキューバ危機の緊張感が極限まで高まり、街中がパニックに陥る最中、ボブはクラブで反戦ソングを披露し、その光景を目撃したジョーンの心を掴む。ボブはジョーンと組み、コンサートホールやチャートの寵児となった。
しかし、大衆に愛されるフォークソング歌手としてのカテゴライズ化やレッテル貼りに反発するかの如く、ボブは当時台頭してきていたロックンロールを自らの楽曲に取り入れる事を望むようになる。

先ず何よりも、作中の全歌唱パートを担当した、ティモシー・シャラメ、エドワード・ノートン、モニカ・バルバロに惜しみない拍手を。その中でも特筆すべきなのは、やはり主演のティモシー・シャラメの歌唱力と披露する楽曲の圧倒的な多さだろう。その歌声は、エンドロールで掛かる本物のボブ・ディランの曲と比較しても遜色ない完成度の高さ!エンドロールで確認すると、使用楽曲の多さに改めて驚く。

その圧倒的な歌唱パートの多さから、作品としては、伝記映画というより、どちらかと言うとミュージカル映画に近いレベル。

【真の天才は、凡人も時代も置き去りにして一人孤独に走り出す】

ウディの病室を訪ねた際、彼にどんな音楽をやるのか訪ねられたボブは「なんでもやる」と答える。彼は貪欲に吸収し、それらを曲にして表現する事に全てを捧げているのだ。だからこそ、マスコミやメディアが安易にミュージシャンにレッテル貼りする様子をテレビで目の当たりにした際に、「レッテルを貼るな。クソが」と、明確に「NO」を突き付ける。
当時台頭してきていたロックンロールにいち早く目を付け、アコースティックからエレキギターに持ち替えて曲作りに励む先見の明に惚れ惚れする。

時代性か、作詞・作曲中、舞台袖で出番を待つ瞬間さえ、常にタバコに火を灯し続けているボブの姿が印象的。絶えず新曲を作り続け、録音してレコード盤になった作品は、彼にとっては既に過去のもの。彼は、常に未来だけを見据え、新曲を作り続けてはステージで披露する事を繰り返す。また、観客が彼に「風に吹かれて」をはじめとしたヒットソングを求める姿勢にも、反発する意思を示す。彼のセットリストに“定番の一曲”など存在しないのだ。

そして、そんな彼の姿に、恋人のシルヴィは勿論、ピートやジョーンさえも次第について行けなくなってゆく。端的に、そして淡々とした語り口で描かれてはいるが、ボブが周囲との関係性に並々ならぬ問題を抱えていた事は、想像に難くない。しかし、それで良いのだ。時代も人も後からついて来るもの。
事実、エンドロール直前に提示されるテロップでは、彼が波乱を巻き起こした1965年のニューポート・フォーク・フェスティバルの直後に発表したアルバム『追憶のハイウェイ61』が、最も影響力のあるアルバムとして評価されていると述べている。

ニューポート・フォーク・フェスティバルにフォークソングを求めてやって来た観客の多くは、エレキギターを手にロックンロールをするボブに野次を飛ばし、物を投げつけて罵倒する。確かに、フォークソングを披露する為のステージで、ロックンロールを演奏するのは御門違いである。しかし、若い観客の中には、新しい面を披露したボブを賞賛する者も少なからず居た。
何より、『Like A Rolling Stone』の素晴らしさは、ロックが市民権を獲得した今日を生きる我々にこそ深く突き刺さる不朽の名曲なのは間違いない。ステージの上で果敢にもこの曲を披露するボブの姿には、胸が熱くなった。

だが、最後にボブはフォークソングで観客に「さよなら」を告げ、舞台を後にする。フォークソングでスターダムにのし上がった彼だからこその、彼にしか出来ないケジメの付け方だろう。

ラスト、ウディの病室を訪れたボブは、ウディから受け取ったハーモニカを彼に返そうとする。しかし、ウディはハーモニカが握られたボブの手を彼の方に押し返し、「持っていろ」と意思表示する。病室で掛かっているレコードは、ウディの『Dusty Old Dust』。歌詞の一節「ありがとう、出会えてよかった(So long, it's been good to know ya)」をバックに、1人バイクで走り去るボブ。
それは、ウディ・ガスリーという尊敬する偉大なアーティストとの別れであると共に、彼の意志さえも引き連れて新時代に向かって走り出したかのようにも映る。

エンドロール前に流されるテロップ
「ボブ・ディランは55枚のアルバムを発表し、ノーベル文学賞を受賞。」
「受賞式には現れなかった」
この最後の一文の何とカッコイイことか。本当に曲作りに人生を捧げたのだなと。

『ボヘミアン・ラプソディ』(2018)の世界的な大ヒットを受けてか、近年は『エルヴィス』(2022)や『ホイットニー・ヒューストン/I WANNA DANCE WITH SOMEBODY』(2022)と言った、世界的なミュージシャンの伝記映画が熱い印象がある。だからこそ、本作もアカデミー賞戦線の注目作になるほどに至ったのではないだろうか。しかし、やはり『ボヘミアン〜』のクライマックスでのライブエイド出演シーンの完コピ具合と、それによる抜群の没入感と比較してしまうと、どれも見劣りしてしまう。本作においても、それは間違いない。ステージの規模が違うから仕方のない事だが、クライマックスのフェスティバルシーンにはもう少しカタルシスが欲しかった。

また、喫煙描写こそ臆せず描かれているが、大麻などの薬物描写がオミットされ、スマートな語り口も相まって、まるで爽やかな青春映画のように描写されている印象はあった。掴みどころの無い人であるのは間違いないのだろうが、シルヴィといつの間にか別れていたり、ジョーンとの関係性が悪化している様子も、少々淡々と描き過ぎてはいないかと思う。
そう、全体的にスマートに語り過ぎていて、引っ掛かりとなる部分が少ないように感じたのである。

ところで、ロックンロールをするボブに対する観客のブーイングの中に、「この雑音を止めろ!」といったものがあったが、私は普段、メタルコアやポストハードコアを好んで聴く性質なので、そういったジャンルの曲をあの会場に居た客が聞いたら、きっと卒倒するだろうなと思った。

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緋里阿 純

4.0ボブ・ディランはボブ・ディラン

2025年3月3日
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もっと、砕けた感じのディランが見れると期待しましたがダメでした。
しかし、主演男優賞を逃したシャラメ君が素晴らしい演技をしています。
時代の風に乗っかって、有名人になるディランを上手く料理しています。
音響の良い劇場で鑑賞しましょう。
IMAX鑑賞‼️

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おさむ