「エピローグの字幕がなかったが、結構重要なことが書いてありましたねえ」夏が来て、冬が往く Dr.Hawkさんの映画レビュー(感想・評価)
エピローグの字幕がなかったが、結構重要なことが書いてありましたねえ
2025.1.7 字幕 アップリンク京都
2023年の中国映画(98分、G)
一人っ子政策の余波を受けて里子に出された娘たちを描いたヒューマンドラマ
監督はポン・ウェイ
脚本はシャン・ヤリ
原題は『夏來冬往』で劇中の次女のセリフ、英題は『Hope For A New Life』で「新しい人生への希望」という意味
物語の舞台は、中国・広東省・深圳
恋人のジーユエン(スン・シューボー)と将来について衝突しているチアニー(シュエ・ウェン、少女期:リウ・グアンニー、幼児期:シュエル)は、どうしても「結婚の前に家が欲しい」と考えていた
その考えは変わらないまま5年が過ぎ、ある日、尋ね人協会から一本の電話が入った
それは、チアニーの実の父が見つかったというものだったが、同時に彼はすでに亡くなっていたと聞かされる
明日にも父の通夜が営まれるとのことで、チアニーは実母パン・サンシー(ワン・ヤージュン)のいる青島へと向かった
姉のシャオリー(チェン・ハオミン)と合流して向かうことになったチアニーだったが、家に着くなり、弟のウェンロン(ワン・チー)から水をぶっかけられてしまう
ウェンロンは姉たちが帰ってきたら家を取られると考えていたが、実はもう一つの隠された理由があった
サンシーには三人の娘と一人の息子がいて、長女のウェンフォン(ゼン・ユンジェン)は近くに住んでいた
彼女には夫シュウハイ(ジア・シーシン)との間に娘のシャオユー(ムー・ウェンシュエン)がいたが、彼は懲りずに愛人との間に子どもを作っていた
映画は、三女チアニーを中心に描き、次女との関わりや、回想録としての養父シャオバオ(ヤン・ハンビン)との暮らしを描いていく
シャオバオには娘のチアシュエ(シー・リウ)がいて、チアニーは養子ゆえに愛されていないと感じていた
だが、母からシャオバオの熱意を聞き、チアシュエの秘密を思い出したチアニーは、かつて自分が養父を突き放して取り返しのつかないことをしていたことを思い出した
チアニーは自分が思う以上に愛されていて、また実母の近くにいる長女はこの村を出たいと考えていた
そうして、チアニーの中で少しずつ過去の捉え方が変わってくるのである
映画にはエンドロール前に「エピローグ」が字幕表記させているのだが、私が鑑賞した映画館ではそれが翻訳されていなかった
そこには「チアニーとシャオリーは弟のために骨髄の検査を受けると姉に手紙を出した」と書かれており、「その後、シャオリーの骨髄によって移植が成功した」と書かれていた
その下にはプロパガンダのスローガンで「男女平等!」みたいなことが書かれていたが、それはどうでも良くても、このエピローグを翻訳しないのはあり得ないと思う
チアニーの心の変化も恋人との再会だけではないので、そこはきちんと仕事をしてほしいなあと思った
いずれにせよ、わかりやすいヒューマンドラマだったが、色々と気になる点は多かった
まずは「娘たちは一人っ子政策について何も知らない」という感じで、街角の垂れ幕には登場するが一切言及が為されない
母親も「政府の主導で」みたいな言い訳もしないし、娘側がそれを知って受容しているということもない
また、チアシュエが大人になってから全く登場せず、叔母と一緒に育てたということ以外がわからない
ちゃんと成人したのかとか、どこで何をしているかなどが全く不明で、どの時点で関係が切れたのかもわからない
父の事故死直後に姉妹で何らかの諍いがあって絶縁状態になっていたとしたら、ちょっと後味が悪いかなあと思った
なので、そのあたりの人間関係の顛末をもう少し広げたなりに回収した方が良いのではないかと感じた