劇場公開日 2024年12月27日

「家族それぞれの事情で人の運命は変わっていく。それでも人は家族をもとめる。」夏が来て、冬が往く あんちゃんさんの映画レビュー(感想・評価)

3.5家族それぞれの事情で人の運命は変わっていく。それでも人は家族をもとめる。

2024年12月30日
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鑑賞方法:映画館

一人っ子政策のスローガンと、それが緩和され夫婦の持てる子供が二人までになってからのスローガンが、ともに壁に残っているところが映し出される。中国の家族のあり方は国家による計画生育政策によりこの50年間で大きく変動してきた。農村部では根強い男児世襲の習慣が残る中、この政策も影響して、女児を養子に出したり、さらには嬰児、乳児殺しまで散見されることになった。(この映画でも三姉妹の下に双子の妹が居たとのことだが殺された可能性もある)
一方で作品の舞台である深圳のような都会では住宅難もあって結婚しない男女が増えてきている。
ただこの作品では傾向値として世相を反映させるだけでなく、三姉妹それぞれの事情、その父母の事情、三女のチアニーが養女に入った先のリン家の事情を具体的に示すことによって、家族それぞれの歴史があり、そして未来があることを示す。そして、この作品では、どうしようもないジェンダーギャップや風習を目にした上で主人公チアニーは敢えて家族を持つという結論に達する姿を描いている。それはおそらく、実母や姉たち、弟、そして養父などの人間としての葛藤を目にしたことに依るものだと思う。人によってはもう結構です、お腹いっぱいなので私は一人で過ごします、という結論に至る場合もあるのだろうけど。

あんちゃん